ある日突然嫁にされました。

四季

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11.物々交換と帰宅

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「ははは! そうだな! では一番美味しい果実を貰おうか!」

 茜色の三つ編みの少女は、ジルカスの大声にも怯まず、落ち着き払っている。容姿こそ年若い娘のようだが、その落ち着きぶりは、とても少女とは思えないものだった。まるで、一人前の大人が少女の皮を被っているかのよう。

「じゃあ……これはどう?」

 ジルカスの言葉への返しとして少女が差し出したのは、昆布色で楕円球の果物。
 表面はざらついていて、皮はかなり厚そう。見た感じ可愛らしい雰囲気ではないし、美味しそうということもない。

「おお! ダエヌか!」
「詳しいんだね、お兄さんは」
「ははは! 分からぬことなど何もない!」

 少女に褒められたジルカスは、なぜか自信満々発言を繰り出す。
 正直、隣にいるだけでも恥ずかしい。ジルカス自身は平気だからそんなことが言えるのだろうが、たまには、その横に立っていなければならない私の身になって考えてみてほしいというものだ。

「我らが持っているのはアベコベソウとアカクサソウだけだが、それでいいのか!?」

 ジルカスの発言を耳にして、ハッとした。

 よく考えてみれば、物と物を交換するシステムである以上、相手がこちらの持ち物に魅力を感じてくれなければならないのだ。

 お金がある世の中なら、欲しいものを見つけた時、お金を出せば大抵買うことができる。しかしそれは、お金に絶対的な価値があるからであって。誰にとっても絶対的な価値を持つお金の代わりを物でするとなると、物のやり取りはさらに複雑化するだろう。

「いいよ! アベコベソウ三十本とダエヌ一個でどう?」
「よし、そうしよう」

 ジルカスは背負っていた大きなカゴを一旦地面に下ろす。そして、その中から、アベコベソウを探し出す。アカクサソウと一緒に入っているから、即座に三十本を取り出すことはできない。が、アベコベソウとアカクサソウは見た目に大きな差があるため、分からなくなってしまうということはない。

「アベコベソウ三十本! これでどうだ!?」
「うん、じゃあダエヌね」

 こうして、茜色の三つ編みの少女とジルカスの間で物々交換が行われたのだった。

 少女との取り引きを終えた後も、私とジルカスは交換所内を練り歩く。そして、ところどころで物々交換を行なった。物々交換の相手は、私にとっては知らない人ばかり。でも、ジルカスには知り合いもいるようで、交換のついでにしばらく喋る相手もいた。


 ◆


 そして、帰宅。
 交換所では色々なものを貰うことができた。それは嬉しかったが、歩き過ぎて疲労困憊だ。

「ふわぁぁぁー……」

 帰宅した安堵感もあって、ついだらけてしまう。
 体を横にするのがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。

「ははは! 我が妻は疲れているようだな!」
「……はい」
「まさか、足腰が弱いのか?」
「こんなに歩いたのは久々です」

 疲れ果てて足が痛い。私はそんな状態なのに、ジルカスはまだ元気。普段と何も変わらないくらい生き生きしている。彼はかなり体力があるみたいだ。あるいは、慣れれば平気になるのだろうか。

「足が痛いなら、ダエヌ足湯をするというのはどうだ!?」

 柑橘を浮かべて入る風呂のようなものだろうか。

「え。足湯に使うなんて、ダエヌが勿体なくないですか」
「ははは! 我が妻はケチ臭いな!」

 ……どさくさに紛れて批判されてしまった。

 でも、ジルカスの批判が間違っているとは思わない。

 事実、私はケチ臭い女だ。

 しかも、ケチ臭いのが常にではないから余計に厄介。常にケチなら「そういう人」という風に理解されて終わりだろうが、たまにケチ臭くなってしまうとそれによって幻滅されがちだ。
 もっとも、それは性格的な部分なので、変えようとしても変えづらいところではあるのだが。

「だが案ずるな! 使うのは皮だけだ!」
「……では、中は?」
「そこは食べる! ジャムにして! 結構美味だぞ」
「そうだったのですね。それなら良いかもしれません」

 どうやら、食べられる部分は食べ、食べられない部分を足湯に使うということらしい。それなら勿体ないなくはない。むしろ有効活用と言えるだろう。

「するか? 足湯」
「はい。せっかくなので試してみたいです」

 ダエヌの皮を使った足湯は、日本では体験できないこと。
 ぜひ経験してみたい、と、今は思う。
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