2 / 3
2話「小さな願いさえ叶わない」
しおりを挟む
彼の隣で生きていたかった。
多くは望まない。
ただ、彼と二人隣り合っていたかった。
でも無理そうだ。
彼の心はガーベラただ一人だけに向いている。私のことなど、今の彼には一切見えていない。いや、見えていないどころか、私という存在を鬱陶しく思っているのだろう。
最初は仲良くなれそうな雰囲気だっただけに悲しい。
「そういうことなのでな! さらば!」
「はい、さようなら」
細やかな望みさえ叶わず。
私は城から去ることになった。
◆
城を出たその日、私は、道端で倒れている一人の男性を見かける。
彼は家のない人にしては良い服を着ていた。
いつも外にいる類の者とは思えない。
宿がとれなかった旅人か何かだろうか。
私は彼を近くの治安維持組織の基地にまで連れていった。
「倒れていた方です」
「あぁはい。おっけー。じゃ、預かりますー」
小規模な基地の受付にて倒れていた男性を渡し、その日は付近の宿に宿泊した。
――翌日。
「昨日はありがとうございました!」
あの基地の受付をしていた男性が宿にやって来た。
わざわざ来るなんて何事かと思ったのだが。
「あの方、隣国の王子だったそうでー、届けていただけて助かりました! 今日はそのお礼をと思ってー」
倒れていたあの男性は偉い人だったようだ。
放置しなくて良かった、今さらながら強くそう思った。
「あ、そうだ、今日の晩ちょっといいですか?」
「なぜですか」
「実はですねー、ちょっと、話したいことがありましてー」
急にこんなことを言い出すなんて怪しい。
治安維持組織の人間なら不審者ではないだろうとは思うのだが。
「……分かりました」
「じゃ、夜にまた、ここに来まっす!」
「ありがとうございます」
彼は別れしなにオッズと名乗った。
◆
オッズは私がルイカスに捨てられたことを知っていた。
で、それを踏まえて、『その力を国を変えるために使わせてほしい』という話を振ってきた。
「あの……急過ぎて意味が分からないのですが……」
「王家には闇が多過ぎます。特に金に関しては酷い。ということで、我々は、あの王家を倒して国を良くしたいと考えています」
日頃ならそんな怪しげな話には乗らなかっただろう。
だがその時の私はルイカスに対して複雑な感情を抱いていて。
「分かりました。では、協力します」
だからだろうか、そんな風に答えてしまった。
そしてそこから私の第二の人生が始まる。
根っこからひっくり返す。
王族の時代は終わり。
国を変える。
多くは望まない。
ただ、彼と二人隣り合っていたかった。
でも無理そうだ。
彼の心はガーベラただ一人だけに向いている。私のことなど、今の彼には一切見えていない。いや、見えていないどころか、私という存在を鬱陶しく思っているのだろう。
最初は仲良くなれそうな雰囲気だっただけに悲しい。
「そういうことなのでな! さらば!」
「はい、さようなら」
細やかな望みさえ叶わず。
私は城から去ることになった。
◆
城を出たその日、私は、道端で倒れている一人の男性を見かける。
彼は家のない人にしては良い服を着ていた。
いつも外にいる類の者とは思えない。
宿がとれなかった旅人か何かだろうか。
私は彼を近くの治安維持組織の基地にまで連れていった。
「倒れていた方です」
「あぁはい。おっけー。じゃ、預かりますー」
小規模な基地の受付にて倒れていた男性を渡し、その日は付近の宿に宿泊した。
――翌日。
「昨日はありがとうございました!」
あの基地の受付をしていた男性が宿にやって来た。
わざわざ来るなんて何事かと思ったのだが。
「あの方、隣国の王子だったそうでー、届けていただけて助かりました! 今日はそのお礼をと思ってー」
倒れていたあの男性は偉い人だったようだ。
放置しなくて良かった、今さらながら強くそう思った。
「あ、そうだ、今日の晩ちょっといいですか?」
「なぜですか」
「実はですねー、ちょっと、話したいことがありましてー」
急にこんなことを言い出すなんて怪しい。
治安維持組織の人間なら不審者ではないだろうとは思うのだが。
「……分かりました」
「じゃ、夜にまた、ここに来まっす!」
「ありがとうございます」
彼は別れしなにオッズと名乗った。
◆
オッズは私がルイカスに捨てられたことを知っていた。
で、それを踏まえて、『その力を国を変えるために使わせてほしい』という話を振ってきた。
「あの……急過ぎて意味が分からないのですが……」
「王家には闇が多過ぎます。特に金に関しては酷い。ということで、我々は、あの王家を倒して国を良くしたいと考えています」
日頃ならそんな怪しげな話には乗らなかっただろう。
だがその時の私はルイカスに対して複雑な感情を抱いていて。
「分かりました。では、協力します」
だからだろうか、そんな風に答えてしまった。
そしてそこから私の第二の人生が始まる。
根っこからひっくり返す。
王族の時代は終わり。
国を変える。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
14
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる