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前編
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私、ルーナは、近々結婚します。
お相手は領主の家の息子さん。
王国で農業を営む農家の家の長女に生まれた私は、これまで、ろくな人生を送ってきませんでした。お人形も、可愛らしいお洋服も、手には入らなかったし、アクセサリーなんてもっての外。
ですが、そんなぱっとしない人生も、今日でおしまい。
これからは、きっと、華やかな人生を謳歌できるに違いありません。
ただ、実は、彼がどのようなお方なのかということは、知らないのです。というのも、彼の家からの結婚のお願いを、親が勝手に了承してしまっていたからです。
でも……大丈夫。きっとすべてが上手くいく。
これといった理由などなくても、今の私には、その自信があります。
謎の自信、というやつです。
「あーどうも。こんにちは」
「こんにちは……」
結婚式の前、初めて顔を合わせた彼は、意外とぱっとしないお方でした。
名はアスレチックさん。元気に楽しく遊べそうなお名前ながら、外遊びはあまりお好きでなさそうな方です。
ちゃんと手入れすればかっこよくなりそうな金髪なのに、伸びっぱなしでぼさぼさ。幸い異臭は漂っていませんが、手入れはほとんどしていないと思われる状態です。
これでは、女性からの人気はあまり出ないでしょうね。
とにかく清潔感が欠けています。
「これからよろしくお願いします」
「あ、どーも。こちらこそよろしくー」
アスレチックさんは、発する言葉からも、そのぱっとしない雰囲気が滲み出ています。
ただ、顔立ち自体はわりと整っているほうだと思いました。
彼はこんなでも、これから私の夫になるお方。少しでも良いところを見つけていかねばならないと思い、比較的整っている顔を見つめていました。
すると彼は声をかけてきます。
「ルーナちゃん、何見てるの?」
いきなりちゃん付けはやや厳しいですが、私は気にしないように心がけることにしました。小さいことは言ってられませんから。
「あ、いえ……」
「もしかして、このブラウスが気に入った?」
それまではずっとお顔を見ていたのですが、彼の言葉を聞き、初めて上半身へと視線を移します。
すると、彼が着ている薄い桃色のブラウスに、「白熱試合」と文字が書いてあることに気がつきました。しかも、私の腕の横幅くらいはあると思われる太い文字。その迫力といったら、なぜ今まで気づかなかったのだろう、と疑問に思うほどでした。
「これ、俺が三歳の頃に、遠い親戚のおっさんが東の国へ旅行に行って買ってきてくれたんだよねー。でもその時はさー、俺まだ小さかったから、着れなかったんだ」
正直、どうでもいい話です。
そもそも、私は何も聞いてなどいません。にもかかわらず自ら話し出すということは、よほど聞いてほしかったのでしょう。
聞くのはただなので、特に何も言うことはしませんでしたが、興味はちっともありません。
お相手は領主の家の息子さん。
王国で農業を営む農家の家の長女に生まれた私は、これまで、ろくな人生を送ってきませんでした。お人形も、可愛らしいお洋服も、手には入らなかったし、アクセサリーなんてもっての外。
ですが、そんなぱっとしない人生も、今日でおしまい。
これからは、きっと、華やかな人生を謳歌できるに違いありません。
ただ、実は、彼がどのようなお方なのかということは、知らないのです。というのも、彼の家からの結婚のお願いを、親が勝手に了承してしまっていたからです。
でも……大丈夫。きっとすべてが上手くいく。
これといった理由などなくても、今の私には、その自信があります。
謎の自信、というやつです。
「あーどうも。こんにちは」
「こんにちは……」
結婚式の前、初めて顔を合わせた彼は、意外とぱっとしないお方でした。
名はアスレチックさん。元気に楽しく遊べそうなお名前ながら、外遊びはあまりお好きでなさそうな方です。
ちゃんと手入れすればかっこよくなりそうな金髪なのに、伸びっぱなしでぼさぼさ。幸い異臭は漂っていませんが、手入れはほとんどしていないと思われる状態です。
これでは、女性からの人気はあまり出ないでしょうね。
とにかく清潔感が欠けています。
「これからよろしくお願いします」
「あ、どーも。こちらこそよろしくー」
アスレチックさんは、発する言葉からも、そのぱっとしない雰囲気が滲み出ています。
ただ、顔立ち自体はわりと整っているほうだと思いました。
彼はこんなでも、これから私の夫になるお方。少しでも良いところを見つけていかねばならないと思い、比較的整っている顔を見つめていました。
すると彼は声をかけてきます。
「ルーナちゃん、何見てるの?」
いきなりちゃん付けはやや厳しいですが、私は気にしないように心がけることにしました。小さいことは言ってられませんから。
「あ、いえ……」
「もしかして、このブラウスが気に入った?」
それまではずっとお顔を見ていたのですが、彼の言葉を聞き、初めて上半身へと視線を移します。
すると、彼が着ている薄い桃色のブラウスに、「白熱試合」と文字が書いてあることに気がつきました。しかも、私の腕の横幅くらいはあると思われる太い文字。その迫力といったら、なぜ今まで気づかなかったのだろう、と疑問に思うほどでした。
「これ、俺が三歳の頃に、遠い親戚のおっさんが東の国へ旅行に行って買ってきてくれたんだよねー。でもその時はさー、俺まだ小さかったから、着れなかったんだ」
正直、どうでもいい話です。
そもそも、私は何も聞いてなどいません。にもかかわらず自ら話し出すということは、よほど聞いてほしかったのでしょう。
聞くのはただなので、特に何も言うことはしませんでしたが、興味はちっともありません。
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