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1話「水晶玉のようなそれに触れて」
しおりを挟む傷を癒やす特殊な力を持って生まれた私オフェリア・リーンは、十八歳になった日に女の国民が召集される場所へ行った。
それは、特殊な能力があるかどうかを調べる会なのである。
そこで特別な能力があるとなった者の中から最も優れた者を選び抜いて将来の国王である王子と結婚させる――それがこのルルドラ王国で長く続いている決まりなのだ。
ちなみにその会には国王や王族複数人も立ち会う。
今日は、国王とその息子である王子アイル・ルルドラが参加している。
「次! オフェリア・リーンさん!」
「はい」
能力を計測する機械の方へと歩み出す。
それは水晶玉のような形をしているのだけれど、触れた者の特殊能力の種類と強さを計測することができるとのことだ。
そんなすごい物には見えないのだが。
しかし、国がそう言っているのだから、一応事実ではあるのだろう。
皆はわりと張り切っておめかししてきている。
化粧もしっかり、服も最高級のドレスで。
なんせこれは王子の妻となれるかもしれない機会だから、やはり、それを望む者からすれば期待が大きいのだろう。
「こちらに右手で触れてください」
「……はい」
恐る恐る玉に触れると――ざわめきが起こった。
「な、なんと!」
「これは……数十年出ていない最高レベルです!!」
いや、なぜそんなことに?
「種は治癒ですが、レベルマックスです!」
「国王陛下! どうなさいますか!」
「ううむ……」
「これはかなり稀ですよ! 治癒ですけど」
「治癒……いや、しかし、なかなか良いではないか」
「で、では……!?」
「ううむ……そうよな、もうそろそろ決めても良いかもしれぬ」
会話を聞いているだけで嫌な予感が……。
しかも、周りの女性たちから睨まれている。
き、気まずい……。
「よし! 決定した!」
やがて胸を張って大きな声を発し始める国王。
「我が息子アイルの婚約者はオフェリア・リーンとする!」
えええー……!!
ということで、まさかの、アイル王子と婚約することとなってしまった。
――それが、今から数か月前のことだ。
その時でも既にあまり嬉しい気持ちではなかったのだけれど、でも、本当の地獄はそこからだった……。
嫌な予感は見事に的中してしまったのである。
◆
「何よあの女!」
「だっさいくせに!」
「地味よね~」
「能力以外なーんの魅力もないじゃない」
私が王子の婚約者となったことを良く思わない女性は多くいた。
で、そういう人たちはいつも私を悪く言っていた。
婚約が決まってから私は城へ入ることとなったのだけれど、そこでも、かなり悪口を言われているのを聞いた。
そのたびに、はぁ、と溜め息をつきそうになって。
でも聞かないふりをして、なるべく普通に過ごしているように見せておいた。
ああいう人たちはこちらが落ち込んでいたらより一層強い攻撃に出てくるだろう、だから弱っていないように見せるよう努力していたのだ。
国民からはそこそこ祝ってもらえたのだが、周囲には厳しい意見も多くあった――でも、決まってしまった以上は進むしかない。
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