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1話
しおりを挟む私には『国護りの力』というものがあった。
非常に曖昧なこれ。
普通に過ごしている時には忘れられがちなくらい目立たない力、能力である。
けれどもその威力は凄まじいもので。
この力を宿す者を国の頂に置いておけば、その国はいつまでも平穏に運営されてゆくのだという。
それが、この国アルペジオに伝わる伝承である。
しかし時が流れ、その伝承も徐々に信じられないようになり――そして今日、まさに、その終焉にたどり着く。
「君は国護りの力を持っていると言うが、だからといって女性としての価値が高いわけではない」
我が婚約者である王子パトラオはいきなりそんなことを言ってきて。
「よって、婚約は破棄とする」
自分の意思だけで、そこまで言いきった。
――そう、彼には、少し前から好きな人がいるのである。
私もそのことには薄々気づいていた。
だからそれほど驚きはしない。
ただ、もっとずるずると二人を持ち続けるものと思っていたので、そういう意味では少々意外なところもあったが。
「……本気で仰っているのですか?」
「ああもちろん」
「まぁそうですね、貴方が他の方に惚れているということは薄々気づいていました」
「負け惜しみか?」
「いえ。私は消えましょう、貴方の前から」
「分かってもらえたか、なら助かる」
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