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5話「徐々に変わりゆく評価」
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渋みのあるお茶は、柳色をしていて、口に含むとほんの少し粉っぽさもあるけれど深い味わいがある。こうもりを連想させるような形をした桃色の乾燥した砂糖菓子と交互に食べると、それらが互いの味わいをより魅力的に変えて、より魅力的な時間を演出してくれる。
「お茶とお菓子、組み合わせが良いですね」
何となくそんなことを言うと。
「えっ! 本当ですか!」
ロヴェンは目を煌めかせる。
「実はこの組み合わせ、僕のおすすめなんです!」
「そうなんですか」
「はい! 理解していただけたならとっても嬉しいです! ありがとうございます!」
想定外の食い付きぶり。
これにはさすがに戸惑わずにはいられない。
いや、べつに良いのだけれど。
悪い意味ではないのだけれど。
しかし……婚約破棄から流れるようにこんなことに発展するなんて驚きでしかない。
こんな展開、あの時はちっとも想像していなかった。
きっと薄暗い日々が来るのだろうと思っていた、が、今はそんなに薄暗くはない。
「レルフィア様は何色が好きですか? このお菓子、いろんな色で作れるんですよ。ですから今度はレルフィア様がお好きな色で作らせます!」
「申し訳ないですよ、そんなの」
「いえ! いいんです! 族長権げ――って、ああっ」
……族長、権限?
「あわわわ……」
「大丈夫ですか? ロヴェンさん」
「あばばば」
ロヴェンは冷静さを欠いていた。
「ええ……あの、取り敢えず、落ち着いてください」
「はぁっ、は、はぁっ、はぁっ……」
運動したわけでもないのに息まで乱れている。
「ばれてしまいましたか……」
「ばれ?」
「こ、この際、言ってしまいます!! 族長なんです!! 僕は!!」
初耳だ。
周りが丁寧に接していたから高貴な人なのだろうとは思っていたけれど。
まさか族長だったとは。
「偉い方、ということですか?」
「そうです……黙っていてすみません!!」
「いえ、大丈夫ですよ」
「や、やはり僕には……隠し事の才能は……なかったようです……な、何だか悔しい……そして悲しい……」
ロヴェンは独り言をだらだらと長くこぼしていた。
――が、その時、またあの白くもこもこした髪の女性がやって来た。
「報告です」
「あ、はい、どうぞ」
「国境付近のオロレット軍が精霊による攻撃で壊滅したようです」
口を丸く大きく空けるロヴェン。
「し、仕事が早い……」
彼は族長とは思えぬ子どものような言い方をしていた。
女性の前であってもそんな風になってしまってということは、恐らく、かなり驚いているのだろう。
それから少しして、彼はすぐにこちらへ目をやってくる。
「レルフィア様! 素晴らしい成果です!」
「恐ろしいくらい順調ですね」
「これはいけますよ! きっと! 精霊の力さえあれば、この国を護れます!」
「だと良いですよね」
ロヴェンがあまり良い人でなかったなら、この辺で協力をやめていたかもしれない。
あまり大事にしたくない思いも少しはあったから。
けれども私は今ロヴェンのことを大切に思い始めている、だから、邪な理由などなくこれからも協力したいとそう思う。
「ありがとうございます! そして、これからもよろしくお願いします!」
「ええ、もちろん。できる限り力を貸します」
その翌日、国境付近のオロレット軍が数ヶ月ぶりにゼロになったと聞いた。
魔族の国、その民たちは、束の間かもしれないとしてもそこから敵がいなくなったことを心から喜んでいた。
「あの女性の力は本物みたいね!」
「敵軍が壊滅したそうね」
「すっごいわねぇ、嘘みたい」
その件で私はぐっと信頼されるようになった。
私を疑う者も減り。
受け入れることを選んでくれる人も一人また一人と増えてゆく。
「まさか本当にこの国を救ってくれるんじゃ!? あたし応援する気になってきた!!」
「こんな奇跡ってあるの……?」
行いが評価されたみたいだ。
「ぱぱ、明後日帰ってこれることになったんだ!」
「良かったじゃない! 国家防衛の仕事、忙しかったものね」
私は私でいられる。
ここでなら。
理不尽な嘘によって悪女にされることもない。
「お茶とお菓子、組み合わせが良いですね」
何となくそんなことを言うと。
「えっ! 本当ですか!」
ロヴェンは目を煌めかせる。
「実はこの組み合わせ、僕のおすすめなんです!」
「そうなんですか」
「はい! 理解していただけたならとっても嬉しいです! ありがとうございます!」
想定外の食い付きぶり。
これにはさすがに戸惑わずにはいられない。
いや、べつに良いのだけれど。
悪い意味ではないのだけれど。
しかし……婚約破棄から流れるようにこんなことに発展するなんて驚きでしかない。
こんな展開、あの時はちっとも想像していなかった。
きっと薄暗い日々が来るのだろうと思っていた、が、今はそんなに薄暗くはない。
「レルフィア様は何色が好きですか? このお菓子、いろんな色で作れるんですよ。ですから今度はレルフィア様がお好きな色で作らせます!」
「申し訳ないですよ、そんなの」
「いえ! いいんです! 族長権げ――って、ああっ」
……族長、権限?
「あわわわ……」
「大丈夫ですか? ロヴェンさん」
「あばばば」
ロヴェンは冷静さを欠いていた。
「ええ……あの、取り敢えず、落ち着いてください」
「はぁっ、は、はぁっ、はぁっ……」
運動したわけでもないのに息まで乱れている。
「ばれてしまいましたか……」
「ばれ?」
「こ、この際、言ってしまいます!! 族長なんです!! 僕は!!」
初耳だ。
周りが丁寧に接していたから高貴な人なのだろうとは思っていたけれど。
まさか族長だったとは。
「偉い方、ということですか?」
「そうです……黙っていてすみません!!」
「いえ、大丈夫ですよ」
「や、やはり僕には……隠し事の才能は……なかったようです……な、何だか悔しい……そして悲しい……」
ロヴェンは独り言をだらだらと長くこぼしていた。
――が、その時、またあの白くもこもこした髪の女性がやって来た。
「報告です」
「あ、はい、どうぞ」
「国境付近のオロレット軍が精霊による攻撃で壊滅したようです」
口を丸く大きく空けるロヴェン。
「し、仕事が早い……」
彼は族長とは思えぬ子どものような言い方をしていた。
女性の前であってもそんな風になってしまってということは、恐らく、かなり驚いているのだろう。
それから少しして、彼はすぐにこちらへ目をやってくる。
「レルフィア様! 素晴らしい成果です!」
「恐ろしいくらい順調ですね」
「これはいけますよ! きっと! 精霊の力さえあれば、この国を護れます!」
「だと良いですよね」
ロヴェンがあまり良い人でなかったなら、この辺で協力をやめていたかもしれない。
あまり大事にしたくない思いも少しはあったから。
けれども私は今ロヴェンのことを大切に思い始めている、だから、邪な理由などなくこれからも協力したいとそう思う。
「ありがとうございます! そして、これからもよろしくお願いします!」
「ええ、もちろん。できる限り力を貸します」
その翌日、国境付近のオロレット軍が数ヶ月ぶりにゼロになったと聞いた。
魔族の国、その民たちは、束の間かもしれないとしてもそこから敵がいなくなったことを心から喜んでいた。
「あの女性の力は本物みたいね!」
「敵軍が壊滅したそうね」
「すっごいわねぇ、嘘みたい」
その件で私はぐっと信頼されるようになった。
私を疑う者も減り。
受け入れることを選んでくれる人も一人また一人と増えてゆく。
「まさか本当にこの国を救ってくれるんじゃ!? あたし応援する気になってきた!!」
「こんな奇跡ってあるの……?」
行いが評価されたみたいだ。
「ぱぱ、明後日帰ってこれることになったんだ!」
「良かったじゃない! 国家防衛の仕事、忙しかったものね」
私は私でいられる。
ここでなら。
理不尽な嘘によって悪女にされることもない。
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