妹の嘘を信じた王子は私との婚約を破棄してきましたが、その後私には良き出会いがありました。~悪しき者には罰がくだるでしょう~

四季

文字の大きさ
9 / 11

9話「私に嫌な思いをさせた彼らの末路は」

しおりを挟む

 情報が入った。

 オロレット王国は隣国によって支配され、王家であったオロレット家は潰されたらしい。

 国王と王妃は拘束され後に処刑。

 王女らは敵国の者たちから玩具として扱われ、王子たちはそれぞれ違った恥ずかしい目に遭わされた後に首を落とされたそうだ。

 ちなみにレブスはというと、服を剥がれた状態でオロレット王国だった場所を這うようにしてじっくり一周させられその無様な姿を国民に見られた後に処刑されたそうだ。

 憐れなレブス、その最期の言葉は「死にたくないよぉ」だったそうだ。

 鼻水、涙、涎――すべてを垂れ流しにしながらそんな言葉を発して死んでいったようだ。

 きっとあまりに情けない最期だったのだろう。
 国民から笑い声も起きていたらしい。
 この目で確認したわけではないけれど、そういう情報がいろんな媒体で流れていた。

 で、ミルキーはというと、嘘をついて処刑から逃れようとするも侍女だった人たちから「その女は嘘つきよ!」と言われたうえそれまでついてきた嘘をすべて暴露され、敵国の者に『存在価値がない嘘つき』と判断されその場で生命を絶たれたそうだ。

 こうして、レブスもミルキーも、どちらも命を落とすこととなったのである。

 その話を聞いた時、私はちっとも悲しくなかった。それどころか嬉しささえあったくらいだ。ミルキーは一応実の妹だけれど、彼女のことでさえ悲しくはなかった。

 私を陥れた奴らが死んだのだ。

 もう何も言われなくて済む。

 こんな嬉しいことがこの世にあるだろうか。

 オロレット王国は、これから、隣国に入り再び動き始める。
 どんな道が待っているか定かではない。
 けれども、きっと、国民たちはその場所でそれなりにやっていくのだろう。


 ◆


「オロレット王国、滅んだようですね」

 お昼時、自室となっている部屋で寛いでいると、そこへやって来たロヴェンが声をかけてくる。

 いつもとは少し違った、明るくない雰囲気。真面目な話をしています、と言っているかのような調子で言葉を発している。やはり、話題が話題だからだろうか。生まれた国を失った私に気を遣ってくれているのかもしれない。

「そうですか」

 どのみちあそこへ戻る気はなかった。
 だから滅ぼうがどうなろうが正直どうでもいい。

 心ないと言われるだろうか?

 だとしても、あの国への良い想いはとうに潰えている。

「……悲しいですか?」

 椅子に座っていた私の顔を覗き込むようにして訪ねてくるロヴェン。

「いいえ、まったく」
「はっきり仰いますね」
「ええ、だってそれが本心なんです」
「そうですか……」

 彼へ目をやり。

「幻滅しました?」

 問えば。

「いえ、それだけのことがあったのですよね」

 彼は首を左右に振った。

「そういうことなのだろうと思います」
「心ない女ですよね、すみません」
「いえ! 心ないなんてことありません。だって! レルフィア様は僕たちの国のために力を貸してくださったではないですか! 凄く心優しかったです。なのに! 心ない、なんて! そんなこと、思うはずがありませんよ!」

 ロヴェンは熱のこもった調子で勢いよく言葉を大量に並べた。

「それで、レルフィア様、これからどうなさるのですか?」
「これからですか?」

 いきなり話題が変わる。

「はい。だって、オロレットへはもう戻れませんよね? 王子たちがいなくなったとしても、国そのものがあの状態では」

 少し考えて。

「そうですね」

 短く返した。

 そうだ。
 あの国へは帰れない。

 他国に支配されることになった土地へ今さら帰っても良いことなんてない。

 もっとも、最初から戻る気なんてないけれど。

「どうなさいます?」
「ロヴェンさん」
「え? 何でしょう?」

 きょとんとするロヴェン。
 彼はきっともうすぐ私が言う言葉を読んでいないはず。

「結婚、しませんか」

 唐突過ぎるとは思うけれど。
 でも今しかない。
 言う機会なんて無限にはないのだから。

 言える時に言ってしまわなくてはならないこともあるのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

偽りの断罪で追放された悪役令嬢ですが、実は「豊穣の聖女」でした。辺境を開拓していたら、氷の辺境伯様からの溺愛が止まりません!

黒崎隼人
ファンタジー
「お前のような女が聖女であるはずがない!」 婚約者の王子に、身に覚えのない罪で断罪され、婚約破棄を言い渡された公爵令嬢セレスティナ。 罰として与えられたのは、冷酷非情と噂される「氷の辺境伯」への降嫁だった。 それは事実上の追放。実家にも見放され、全てを失った――はずだった。 しかし、窮屈な王宮から解放された彼女は、前世で培った知識を武器に、雪と氷に閉ざされた大地で新たな一歩を踏み出す。 「どんな場所でも、私は生きていける」 打ち捨てられた温室で土に触れた時、彼女の中に眠る「豊穣の聖女」の力が目覚め始める。 これは、不遇の令嬢が自らの力で運命を切り開き、不器用な辺境伯の凍てついた心を溶かし、やがて世界一の愛を手に入れるまでの、奇跡と感動の逆転ラブストーリー。 国を捨てた王子と偽りの聖女への、最高のざまぁをあなたに。

【完結】何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので魔法で言えないようにしてみた

堀 和三盆
恋愛
「ずるいですわ、ずるいですわ、お義姉様ばかり! 私も伯爵家の人間になったのだから、そんな素敵な髪留めが欲しいです!」  ドレス、靴、カバン等の値の張る物から、婚約者からの贈り物まで。義妹は気に入ったものがあれば、何でも『ずるい、ずるい』と言って私から奪っていく。  どうしてこうなったかと言えば……まあ、貴族の中では珍しくもない。後妻の連れ子とのアレコレだ。お父様に相談しても「いいから『ずるい』と言われたら義妹に譲ってあげなさい」と、話にならない。仕方なく義妹の欲しがるものは渡しているが、いい加減それも面倒になってきた。  ――何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので。  ここは手っ取り早く魔法使いに頼んで。  義妹が『ずるい』と言えないように魔法をかけてもらうことにした。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

役立たずと追放された令嬢ですが、極寒の森で【伝説の聖獣】になつかれました〜モフモフの獣人姿になった聖獣に、毎日甘く愛されています〜

腐ったバナナ
恋愛
「魔力なしの役立たず」と家族と婚約者に見捨てられ、極寒の魔獣の森に追放された公爵令嬢アリア。 絶望の淵で彼女が出会ったのは、致命傷を負った伝説の聖獣だった。アリアは、微弱な生命力操作の能力と薬学知識で彼を救い、その巨大な銀色のモフモフに癒やしを見いだす。 しかし、銀狼は夜になると冷酷無比な辺境領主シルヴァンへと変身! 「俺の命を救ったのだから、君は俺の永遠の所有物だ」 シルヴァンとの契約結婚を受け入れたアリアは、彼の強大な力を後ろ盾に、冷徹な知性で王都の裏切り者たちを周到に追い詰めていく。

家も婚約者も、もう要りません。今の私には、すべてがありますから

有賀冬馬
恋愛
「嫉妬深い女」と濡れ衣を着せられ、家も婚約者も妹に奪われた侯爵令嬢エレナ。 雨の中、たった一人で放り出された私を拾ってくれたのは、身分を隠した第二王子でした。 彼に求婚され、王宮で輝きを取り戻した私が舞踏会に現れると、そこには没落した元家族の姿が……。 ねぇ、今さら私にすり寄ってきたって遅いのです。だって、私にはもう、すべてがあるのですから。

処理中です...