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前編

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「淑やかでない君とはもうやっていけん! 婚約は破棄とする!」

 婚約者アダンは豪快に胸を張りながら宣言。

 その時には既に私たちの関係は破綻していて。
 私と彼の縁はそこで途切れた。

 その後、私は、叔母の知人の紹介によって、王子と知り合う。一度顔を合わせた際非常に気が合ったため、楽しくて、会うことを何度か繰り返した。そのうちに深まる絆。そして私はついに彼と結婚した。

 今は王子がもともと住んでいた城に同居している。王子の周りにいる人たちは皆温かい人だった。身の回りの世話してくれる女性も、王子の両親と妹も、皆私を受け入れてくれている。特に彼の妹は世話焼きで、城での暮らしに慣れない私をよく気にかけてくれている。

 今はとても幸せ。
 心から思える。

 しかしアダンは幸せにはなれなかったようだ。

 彼には兄三人と弟八人がいるのだが、そのほぼ全員が、幸せとはとても言い難いような人生を歩んでいるらしい。
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