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2話
しおりを挟む追い込まれた私はやがて「明日死のう」と心を決める――が、その日を朝起きると状況は大きく変化する地点を迎えることとなって。
「マーナ、お前との婚約は破棄することにしたから」
「え」
「何だその顔情けなさまる出しだな。だが馬鹿のためにもう一回言ってやろう。婚約は破棄、そう言っているんだ」
「婚約、破棄……」
意味もなく言葉を繰り返す。
けれども徐々に脳が追いついてきて、それと同時に、解放の喜びが胸の奥から湧き上がってくる。
……気をつけよう、嬉しそうな顔はしないようにしないと。
「そうだ、ようやく聞こえたか?」
「はい」
「ま、そういうことだ。お前は無能すぎた、だから不合格だ。俺と共に生きてゆくに相応しい女ではない」
労働力を散々搾取しておいて今さら何を言うのか、なんて思ったけれど、それは口からは出さないでおいた。
もうすぐ解放される。
もうじき自由になれる。
そう思えば、不快感くらいどうということはない。
――こうして私は自由を取り戻したのだった。
◆
「花を、見ていらっしゃるのですか?」
「あ、はい。そうです。ここの庭園のお花、とっても綺麗なので、前から好きだったんです」
ロドリゲとの婚約が破棄になったことで実家暮らしに戻った私は自由と好きに生きることを取り戻した。
それで、最近は、前々から好きだった家からそう離れていないところにある庭園に定期的に通っている――そこで出会ったのが、そして声をかけてくれたのが、青年アルフリッドであった。
「――ええと、それで、アルフリッドさんもここがお好きなのですか?」
「ええ、花が好きで」
「同じですね……!」
「はい。ですが僕の場合は花以外の草も好きですね」
「草?」
「ええ、植物全般に興味があります。学生時代は植物の研究をしていましたし」
共通の趣味のある私たちが心を通わせるのにはそれほど時間はかからなかった。
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