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前編
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「実は、君との婚約を解消したいと考えている」
婚約者から直接告げられたのは、ある夕食の最中だった。
初めは何を言われているのか理解できず。私は聞き間違いでもしたのかと思った。が、彼は妙に真剣な面持ちをしていて。どうやら冗談のような類の発言ではないようだ、と察した。
けれどもなぜいきなり婚約解消の話になるのか。
私は何も過ちを犯してはいないはず。特に喧嘩があったというわけでもない。
だからこそ、どうしてこんな話が出てくるのか掴めない。
「何を仰って……?」
「僕は本当の愛というものを知ったんだ。だからもう、偽りの心に屈して生きてゆくことはできない」
私は彼に事情を尋ねることにした。
何がどうなっているのかを知りたかったから。
すると彼は隠そうともせず事情を話し始めた——が、その事情は凄まじく恐ろしいものだった。
彼は貴族の子が通う学校に通っている。そこで出会った二つ年下の女子生徒と親しくなったらしい。きっかけは、彼女が入学した直後の新入生歓迎会で言葉を交わしたことだったそうだ。
「そんなこと……ちっとも聞いていませんでしたけど」
「話すのが遅くなってしまってすまない。本当はもっと早く言うつもりだったんだ。ただ、君がなかなかタイミングを作ってくれないから、気を窺っているうちに今になってしまって」
何それ、私が悪いの!?
そんな風に噛みつきたくなる衝動を何とか抑え、彼の話を聞き続ける。
新入生歓迎会で知り合った二人はちょくちょく顔を合わせるようになったそうだ。そのうちに二人の関係は深いものになり、段々濃厚な関わりになっていったらしい。最初はあくまで勉強を教える程度の関わりだったとか。
「それで、実は、彼女が身ごもったんだ。だから彼女を責任をもって大事にしていこうと決めた」
「えっ……順序……」
「僕と彼女の出会いは運命的なものだった。これはきっと本当の愛だと思う。だからどうか、君には、僕たちから離れてほしい」
なんて勝手な男だろう。
婚約者がいるにもかかわらず他の女性と親しくなり濃厚な関係になって、最後は婚約者を切り捨てる——悪魔の所業だ。
婚約者から直接告げられたのは、ある夕食の最中だった。
初めは何を言われているのか理解できず。私は聞き間違いでもしたのかと思った。が、彼は妙に真剣な面持ちをしていて。どうやら冗談のような類の発言ではないようだ、と察した。
けれどもなぜいきなり婚約解消の話になるのか。
私は何も過ちを犯してはいないはず。特に喧嘩があったというわけでもない。
だからこそ、どうしてこんな話が出てくるのか掴めない。
「何を仰って……?」
「僕は本当の愛というものを知ったんだ。だからもう、偽りの心に屈して生きてゆくことはできない」
私は彼に事情を尋ねることにした。
何がどうなっているのかを知りたかったから。
すると彼は隠そうともせず事情を話し始めた——が、その事情は凄まじく恐ろしいものだった。
彼は貴族の子が通う学校に通っている。そこで出会った二つ年下の女子生徒と親しくなったらしい。きっかけは、彼女が入学した直後の新入生歓迎会で言葉を交わしたことだったそうだ。
「そんなこと……ちっとも聞いていませんでしたけど」
「話すのが遅くなってしまってすまない。本当はもっと早く言うつもりだったんだ。ただ、君がなかなかタイミングを作ってくれないから、気を窺っているうちに今になってしまって」
何それ、私が悪いの!?
そんな風に噛みつきたくなる衝動を何とか抑え、彼の話を聞き続ける。
新入生歓迎会で知り合った二人はちょくちょく顔を合わせるようになったそうだ。そのうちに二人の関係は深いものになり、段々濃厚な関わりになっていったらしい。最初はあくまで勉強を教える程度の関わりだったとか。
「それで、実は、彼女が身ごもったんだ。だから彼女を責任をもって大事にしていこうと決めた」
「えっ……順序……」
「僕と彼女の出会いは運命的なものだった。これはきっと本当の愛だと思う。だからどうか、君には、僕たちから離れてほしい」
なんて勝手な男だろう。
婚約者がいるにもかかわらず他の女性と親しくなり濃厚な関係になって、最後は婚約者を切り捨てる——悪魔の所業だ。
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