婚約を解消したいですって? そうですか、ご自由に

四季

文字の大きさ
1 / 2

前編

「実は、君との婚約を解消したいと考えている」

 婚約者から直接告げられたのは、ある夕食の最中だった。

 初めは何を言われているのか理解できず。私は聞き間違いでもしたのかと思った。が、彼は妙に真剣な面持ちをしていて。どうやら冗談のような類の発言ではないようだ、と察した。

 けれどもなぜいきなり婚約解消の話になるのか。
 私は何も過ちを犯してはいないはず。特に喧嘩があったというわけでもない。

 だからこそ、どうしてこんな話が出てくるのか掴めない。

「何を仰って……?」
「僕は本当の愛というものを知ったんだ。だからもう、偽りの心に屈して生きてゆくことはできない」

 私は彼に事情を尋ねることにした。
 何がどうなっているのかを知りたかったから。

 すると彼は隠そうともせず事情を話し始めた——が、その事情は凄まじく恐ろしいものだった。

 彼は貴族の子が通う学校に通っている。そこで出会った二つ年下の女子生徒と親しくなったらしい。きっかけは、彼女が入学した直後の新入生歓迎会で言葉を交わしたことだったそうだ。

「そんなこと……ちっとも聞いていませんでしたけど」
「話すのが遅くなってしまってすまない。本当はもっと早く言うつもりだったんだ。ただ、君がなかなかタイミングを作ってくれないから、気を窺っているうちに今になってしまって」

 何それ、私が悪いの!?

 そんな風に噛みつきたくなる衝動を何とか抑え、彼の話を聞き続ける。

 新入生歓迎会で知り合った二人はちょくちょく顔を合わせるようになったそうだ。そのうちに二人の関係は深いものになり、段々濃厚な関わりになっていったらしい。最初はあくまで勉強を教える程度の関わりだったとか。

「それで、実は、彼女が身ごもったんだ。だから彼女を責任をもって大事にしていこうと決めた」
「えっ……順序……」
「僕と彼女の出会いは運命的なものだった。これはきっと本当の愛だと思う。だからどうか、君には、僕たちから離れてほしい」

 なんて勝手な男だろう。

 婚約者がいるにもかかわらず他の女性と親しくなり濃厚な関係になって、最後は婚約者を切り捨てる——悪魔の所業だ。

あなたにおすすめの小説

学園は悪役令嬢に乗っ取られた!

こもろう
恋愛
王立魔法学園。その学園祭の初日の開会式で、事件は起こった。 第一王子アレクシスとその側近たち、そして彼らにエスコートされた男爵令嬢が壇上に立ち、高々とアレクシス王子と侯爵令嬢ユーフェミアの婚約を破棄すると告げたのだ。ユーフェミアを断罪しはじめる彼ら。しかしユーフェミアの方が上手だった? 悪役にされた令嬢が、王子たちにひたすらざまあ返しをするイベントが、今始まる。 登場人物に真っ当な人間はなし。ご都合主義展開。

婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~

みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。 全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。 それをあざ笑う人々。 そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。

お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた

リオール
恋愛
だから? それは最強の言葉 ~~~~~~~~~ ※全6話。短いです ※ダークです!ダークな終わりしてます! 筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。 スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。 ※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;

婚約破棄?ああ、どうぞご自由に。

柚木ゆきこ
恋愛
 公爵家子息により急に始まる婚約破棄宣言。その宣言を突きつけた令嬢は婚約者ではなく、なんと別人だった。そんなちぐはぐな婚約破棄宣言を経て、最終的に全てを手に入れたのは誰なのか‥‥ *ざまぁは少なめ。それでもよければどうぞ!

嘘からこうして婚約破棄は成された

桜梅花 空木
恋愛
自分だったらこうするなぁと。

悪役令嬢ですが、今日も元婚約者とヒロインにざまぁされました(なお、全員私を溺愛しています)

ほーみ
恋愛
「レティシア・エルフォード! お前との婚約は破棄する!」  王太子アレクシス・ヴォルフェンがそう宣言した瞬間、広間はざわめいた。私は静かに紅茶を口にしながら、その言葉を聞き流す。どうやら、今日もまた「ざまぁ」される日らしい。  ここは王宮の舞踏会場。華やかな装飾と甘い香りが漂う中、私はまたしても断罪劇の主役に据えられていた。目の前では、王太子が優雅に微笑みながら、私に婚約破棄を突きつけている。その隣には、栗色の髪をふわりと揺らした少女――リリア・エヴァンスが涙ぐんでいた。

婚約破棄する王太子になる前にどうにかしろよ

みやび
恋愛
ヤバいことをするのはそれなりの理由があるよねっていう話。 婚約破棄ってしちゃダメって習わなかったんですか? https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/123874683 ドアマットヒロインって貴族令嬢としては無能だよね https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/988874791 と何となく世界観が一緒です。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。