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2話
しおりを挟む徐々に思い出してきた。
レーゼットから解放されて、実家へ戻ろうとしていたら急に空腹に襲われて、それで途中で気を失ったのだ。
「食事をとっていなかったのですか?」
「あ……少し、複雑な事情で」
「そうでしたか。もしかしてもう数日食べていないとか?」
「それはないです」
「そうですか。では何かお出ししますね」
その後彼は自身の名をエルベリウスと名乗った。
そして、パンで作った粥を出してくれた。
久々に食べるそれは美味しかった。
それこそ泣いてしまうそうなほど。
まさに、美味の極み。
そんな感じで、身にしみわたるようだった。
「では、お気を付けて」
「はい。ありがとうございました。本当に」
「いえいえ」
こうしてエルベリウスとは別れた。
いつかまた会えたらいいな、そんな風に思いながら、彼の家を後にしたのだった。
◆
あれから数年。
もういくつの月が過ぎただろうか。
結果から言うなら――私はエルベリウスと結ばれた。
あの一件の後、私は、彼のもとへ両親と共にお礼を言いに行った。彼は「気にしないでください」と優しく言ってくれたのだけれど、意外とそれで終わりとはならず。そう、関係はそこで終わらなかったのだ。
それから私と彼は時折二人で会って話をするようになっていって。
で、やがて、彼から結婚の話が出るようになった。
最初は、あんな出会いから知り合った人と結婚なんて、という思いも少しはあった――何だか恥ずかしいような気がして。けれども、彼の熱い想いに触れているうちに、段々受け入れても良いかもしれないなと思うようになっていった。で、やがて、彼からも申し出を受け入れた――その時私たちは婚約者同士となったのだ。
エルベリウスは意外と男女関係にきっちりした人だった。
近寄ってくる女性にもはっきりと線引きをして接している。
その姿が素晴らしいと思って。
そんな男性もいるのだなぁ、と思い、尊敬できるなぁ、と私は彼への情を深めてゆくようになっていった。
また、きっちりしていながらもこちらにやたらと縛りをかけてこない辺りも好印象だ。
やらかしていない人にまで色々言ってくるレーゼットとは大違い。
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