善行を積んでいる人間を自称している婚約者ですが、彼は実際には欲望にまみれた人間ですよ。~あの後皆に本当の彼を知られてしまったようです~

四季

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前編

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 善行を積んでいる人間を自称している婚約者エーベルだが、彼は実際には欲望にまみれた人間だ。

 良いのは外面だけ。
 婚約者である私から見れば彼は完全に問題多すぎ人間である。

 まず、機嫌の波が凄まじい。

 外ではいつも笑顔を作っている、が、それはあくまで仮面でしかなくて。近しい人の前ではとんでもなく強情で不機嫌な時間も多い。また、婚約者である私にはたびたび当たり散らしてくる。まるで私を奴隷と思っているかのような言葉のかけ方をしてくることもかなり多い。

 彼にとって私はサンドバッグでしかないのだ。

 また、少しでも思い通りにならないと暴れ出すことがある。

 その時の彼には何を言ってもとまらない。希望が通らなかった、ただそれだけで、急激に機嫌が悪くなりさらには激しく怒り出して、しまいには椅子やら何やらを人に向かって投げ飛ばしたりしてくる。その激しさと言ったらとんでもないものだ。

 そんな彼を見ているとどうしても、どうかしている、そう思ってしまう。

 無礼かもしれない。
 でも実際そんな感じなのだ。

 加えて、機嫌が良い時でも私のことを馬鹿にするような言葉をやたらとかけてくる。
 お前は俺以外の男には愛されないって絶対、とか、お前ほんと雑魚女だよなかっこわりぃし、とか――自信を奪い取るような言葉をわざわざ投げつけてくるのだ。

 いつになったらこれから解放されるのだろう?
 どうすれば私は自由を手に入れられるのだろう?

 そんなことを思いつつ、私は薄暗い日々を過ごしていたのだが。
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