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前編
しおりを挟むかつて私は一度婚約者から婚約破棄を言いわたされた。
私を捨てた婚約者の彼ルーガスは、自分に関係することについて話を振られることを極度に嫌う人であった。そのため、少しでも彼について質問すると、不機嫌になったしもう帰るなどと言い出してしまうといったようなこともあった。
婚約破棄の原因も、私が彼の来月の予定について尋ねたことであった。
ある日悪気なく「来月ってどんな感じで予定空いてそう?」と質問したところ彼は急に激怒した、そして「束縛女、魔女は死ね!」などと暴言を吐かれたうえその場で婚約関係を解消するといった趣旨のことを宣言されてしまったのだった。
それからというもの、私は、質問するということができなくなった。
尋ねると怒られてしまうような気がするのだ。
それで気になることがあってもどうしても尋ねてみることができない。
そんな状態での生活はいろんな意味で不便だった。
知りたいこと、聞いておきたいこと、そういうことは人生において多々あるだろう。しかし問えないということはそこが完全に無となってしまうということで。そんな状態であると、どうしても、物理的な準備も心の準備もろくにできないままで当日を迎えるといったことになってしまうのだ。それゆえ必然的に不安やら何やらも増えてしまい、疲れてしまう。
そんな日々だった。
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