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8話「あらゆるものの、未来」
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オーツレットの一件以来王家への評価は下がり続ける一方。また、後に現国王の弟の数名との同時不倫が発覚したため、王族への評価はさらに下がっていった。また、そんな中でも王族の女性たちは一般人の目など一切気にせず高額な衣服やアクセサリーを大量に発注したり国内に多数の別荘を建てたりしていて、それによって王家はより一層国民から嫌われるようになっていった。
そして、来たる春、ついに国民が動いた。
いつまでもあんなやつらにこの国を任せていてはならない。
多くの人がそう判断したのだ。
そして戦いの果てに、王族は捕らえられ、憂さ晴らしに酷い目に遭わされたうえ処刑された。
で、現在はというと、新しい国家が立ち上がっているところである。
私とウィージスは夫婦となっているけれど、幸い、私たちが暮らす地域にはそれほど被害はない。
戦いにも巻き込まれなかったし、影響といえば少々物価の波が荒くなった程度で――私たちは今も穏やかに平和に暮らすことができている。
「リメリアさん、今日お母さん来られるんだったよね?」
「そうです」
私たち夫婦は仲良しだし、互いの親同士もそこそこ良い関係を築けている。それゆえ、私の親がここへ来ることもあれば、彼の親がここへやって来ることもある。けれども何か揉め事が起きるわけではないし嫌みを言われるわけでもない。いつものんびりお茶を飲んだり話をしたりして細やかな幸せを噛み締めるだけだ。
本人同士はもちろんだが、親同士の相性も悪くなくて助かった。
「何準備しておけばいいかな? やっぱり……紅茶とか、かな?」
「飲み物は昨夜作ったのがあります」
「そうなんだ!?」
「はい、こっそり作って置いておきました。あれを出せば良いかと」
「さすがリメリアさん! 賢いね!」
オーツレットとルビアは幸せになれず、しかし、捨てられた私は幸せになれた。
こんな未来、想像していなかった。
けれども幸福な今があることは事実。
やはり人生とは分からないものだ。
それに、身分だけで幸不幸のすべてが決まるわけでもない。
一般人同士でも結婚だとしても幸せは掴めるのだと、ウィージスが教えてくれた。
「そんなことないですよ。それに、ウィージスさんだってこの前、準備自力でなさっていましたよね」
「ああ、あの時はね! だって僕の親が来たいとか勝手なこと言い出したわけだから。準備くらいは責任もってしないと!」
「あの時、すごいなぁって尊敬したんです」
「えっ。そんなこと言われたら照れちゃうよ」
片手で控えめに己の髪に触れながら恥じらったような表情を面に滲ませるウィージス。はにかみ屋さんな子どもみたいで少しばかり可愛らしかった。表情の真っ直ぐさが見ていて心地よい。
「任せっきりじゃなくて自分でできることはしよう、という姿勢に感動したんです! だから私も、見習って、そうしようって」
「あはは、そんなそんな。たいしたことしてないのに~。あ、じゃあ、僕はリメリアさんのお母さんへの贈り物でも作っておこうかな!」
これからは、ウィージスと共に。
二人で歩いてゆく。
きっと明るい未来があると信じて。
ただひたすらに突き進むのだ。
◆終わり◆
そして、来たる春、ついに国民が動いた。
いつまでもあんなやつらにこの国を任せていてはならない。
多くの人がそう判断したのだ。
そして戦いの果てに、王族は捕らえられ、憂さ晴らしに酷い目に遭わされたうえ処刑された。
で、現在はというと、新しい国家が立ち上がっているところである。
私とウィージスは夫婦となっているけれど、幸い、私たちが暮らす地域にはそれほど被害はない。
戦いにも巻き込まれなかったし、影響といえば少々物価の波が荒くなった程度で――私たちは今も穏やかに平和に暮らすことができている。
「リメリアさん、今日お母さん来られるんだったよね?」
「そうです」
私たち夫婦は仲良しだし、互いの親同士もそこそこ良い関係を築けている。それゆえ、私の親がここへ来ることもあれば、彼の親がここへやって来ることもある。けれども何か揉め事が起きるわけではないし嫌みを言われるわけでもない。いつものんびりお茶を飲んだり話をしたりして細やかな幸せを噛み締めるだけだ。
本人同士はもちろんだが、親同士の相性も悪くなくて助かった。
「何準備しておけばいいかな? やっぱり……紅茶とか、かな?」
「飲み物は昨夜作ったのがあります」
「そうなんだ!?」
「はい、こっそり作って置いておきました。あれを出せば良いかと」
「さすがリメリアさん! 賢いね!」
オーツレットとルビアは幸せになれず、しかし、捨てられた私は幸せになれた。
こんな未来、想像していなかった。
けれども幸福な今があることは事実。
やはり人生とは分からないものだ。
それに、身分だけで幸不幸のすべてが決まるわけでもない。
一般人同士でも結婚だとしても幸せは掴めるのだと、ウィージスが教えてくれた。
「そんなことないですよ。それに、ウィージスさんだってこの前、準備自力でなさっていましたよね」
「ああ、あの時はね! だって僕の親が来たいとか勝手なこと言い出したわけだから。準備くらいは責任もってしないと!」
「あの時、すごいなぁって尊敬したんです」
「えっ。そんなこと言われたら照れちゃうよ」
片手で控えめに己の髪に触れながら恥じらったような表情を面に滲ませるウィージス。はにかみ屋さんな子どもみたいで少しばかり可愛らしかった。表情の真っ直ぐさが見ていて心地よい。
「任せっきりじゃなくて自分でできることはしよう、という姿勢に感動したんです! だから私も、見習って、そうしようって」
「あはは、そんなそんな。たいしたことしてないのに~。あ、じゃあ、僕はリメリアさんのお母さんへの贈り物でも作っておこうかな!」
これからは、ウィージスと共に。
二人で歩いてゆく。
きっと明るい未来があると信じて。
ただひたすらに突き進むのだ。
◆終わり◆
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