14 / 25
14話「もう恐れはない」
しおりを挟む
ディアのため、そして彼の国のために、私は力を使うことにした。
生まれながらにして持っていた魔力。
それは呪いの鎖のようだった。
けれども今こそそれを善良な人たちのために使いたい。
そうすればきっと――私のこれまでの苦労も報われるだろうから。
「コングラシャヘリモヘリトラフトラクトフコングラシャトラヘリハモトリハラトラフムトラフシャラハトラハコングラシャヘリモトストカコングラシャヘリモトリストフコングラシャヘリモ」
呪文を唱える。
発動する魔法。
目の前に置かれていた魔物一体は光に包まれ消し飛ばされた。
「これは……凄い、想像以上の威力です」
その様を見ていたディアは感心したように感想を述べる。
――そう、これはまだ実践ではない。
ディアに協力すると決めた私はまずその力を見てもらうことにした。何事も言葉で説明するより実際に見てもらう方が早く伝えられるものだから。それで、国が以前拘束していた魔物を連れてきてもらい、その魔物に向けて魔法を放ってみたのである。
「光の魔法ですか?」
「はい、今のはそうです」
ディアは軽く握った片拳を口もとに添えつつ「これほどまでとは……」と独り言を呟いていた。
「魔物に対してであれば光の魔法が効果的かと思いそれを選びました」
「なるほど」
「ですが他の属性の魔法も使えます」
「多属性……」
「はい。私の場合は属性に縛られません。その点は多少珍しいかもしれません」
もっとも、そういうところもまた、私を不幸にしてきた点なのだが。
魔法使いは大抵特定の属性の魔法を使う。複数の属性の魔法を一人が使う、ということは、歴史上なかったわけではないようだがわりと珍しいことではあるのだ。ゆえに、多数の属性の魔法を使いこなす者は良く思われない傾向がある。いや、良く思われない、というよりかは、気味悪がられる、という方が相応しいかもしれない。いずれにせよ、多属性魔法使いだからといって愛されるわけではないのだ。
「もしよければ他の属性の魔法も見せてくださいませんか?」
「……不快ではありませんか」
「まさか。エリサさんのどこに不快な要素があるのでしょう。そもそも、魔法の才があることと不快な存在であることに繋がりなどありませんし」
本当に、彼の言葉にはいつも救われる。
ディアは深く考えず発しているのだろう。
けれどもその言葉一つ一つが私の心にはじんわりと染み渡るのである。
「分かりました、ではお見せします」
彼ならきっと私の力を受け入れてくれる。
今はそう信じられる。
だから怖くはない。
「メールートハールートリールトンクソンアンドラストリヘリアメールートハールートリールメリアメールートハールートリールメリアメリメリアリストンメールートハールメルートリールロイントソンアーメーニアアメーリーニアアリストリストアミニケリハールーリンクトリリアンメリニアリスキレリアメールートハールートリール」
彼の前でなら、どんな魔法も使えるだろう。
「ウンジュラリンジュラハントラヘリニホララウンジュラリンジュラハントラヘリニホララヘントラハントリヘンホラエリミネウンジュラリンジュジュミラハントラヘリニホラジュミレネジュジュホリリメウンジュラリンジュラミレニリュミラニラハントラヘリニホラウンジュラリンジュラハントラヘリニホラ」
怖さも、恐れも、もうない。
「リッツゥリッツゥリツツラティッツゥティットゥオポポリッツゥリッツゥリアリツツラティッツゥティットゥオンポポポポポポラッティタテティラッティラアラッティオポポンオポポネオポポントンリッティリッツゥティットリリツツラティッツゥオポポティットゥポポオポティッツオポッポポッポティポッポポティティティットティットポポポリッツゥリッティティリッポポポポピラリッツゥリッツゥリツツラティッツゥティットゥリッツゥリッツゥリティティトゥットツツラティッツゥミッツゥオポポオッポッポポポティッテリッツゥリツリィリツツリィティットゥ」
生まれながらにして持っていた魔力。
それは呪いの鎖のようだった。
けれども今こそそれを善良な人たちのために使いたい。
そうすればきっと――私のこれまでの苦労も報われるだろうから。
「コングラシャヘリモヘリトラフトラクトフコングラシャトラヘリハモトリハラトラフムトラフシャラハトラハコングラシャヘリモトストカコングラシャヘリモトリストフコングラシャヘリモ」
呪文を唱える。
発動する魔法。
目の前に置かれていた魔物一体は光に包まれ消し飛ばされた。
「これは……凄い、想像以上の威力です」
その様を見ていたディアは感心したように感想を述べる。
――そう、これはまだ実践ではない。
ディアに協力すると決めた私はまずその力を見てもらうことにした。何事も言葉で説明するより実際に見てもらう方が早く伝えられるものだから。それで、国が以前拘束していた魔物を連れてきてもらい、その魔物に向けて魔法を放ってみたのである。
「光の魔法ですか?」
「はい、今のはそうです」
ディアは軽く握った片拳を口もとに添えつつ「これほどまでとは……」と独り言を呟いていた。
「魔物に対してであれば光の魔法が効果的かと思いそれを選びました」
「なるほど」
「ですが他の属性の魔法も使えます」
「多属性……」
「はい。私の場合は属性に縛られません。その点は多少珍しいかもしれません」
もっとも、そういうところもまた、私を不幸にしてきた点なのだが。
魔法使いは大抵特定の属性の魔法を使う。複数の属性の魔法を一人が使う、ということは、歴史上なかったわけではないようだがわりと珍しいことではあるのだ。ゆえに、多数の属性の魔法を使いこなす者は良く思われない傾向がある。いや、良く思われない、というよりかは、気味悪がられる、という方が相応しいかもしれない。いずれにせよ、多属性魔法使いだからといって愛されるわけではないのだ。
「もしよければ他の属性の魔法も見せてくださいませんか?」
「……不快ではありませんか」
「まさか。エリサさんのどこに不快な要素があるのでしょう。そもそも、魔法の才があることと不快な存在であることに繋がりなどありませんし」
本当に、彼の言葉にはいつも救われる。
ディアは深く考えず発しているのだろう。
けれどもその言葉一つ一つが私の心にはじんわりと染み渡るのである。
「分かりました、ではお見せします」
彼ならきっと私の力を受け入れてくれる。
今はそう信じられる。
だから怖くはない。
「メールートハールートリールトンクソンアンドラストリヘリアメールートハールートリールメリアメールートハールートリールメリアメリメリアリストンメールートハールメルートリールロイントソンアーメーニアアメーリーニアアリストリストアミニケリハールーリンクトリリアンメリニアリスキレリアメールートハールートリール」
彼の前でなら、どんな魔法も使えるだろう。
「ウンジュラリンジュラハントラヘリニホララウンジュラリンジュラハントラヘリニホララヘントラハントリヘンホラエリミネウンジュラリンジュジュミラハントラヘリニホラジュミレネジュジュホリリメウンジュラリンジュラミレニリュミラニラハントラヘリニホラウンジュラリンジュラハントラヘリニホラ」
怖さも、恐れも、もうない。
「リッツゥリッツゥリツツラティッツゥティットゥオポポリッツゥリッツゥリアリツツラティッツゥティットゥオンポポポポポポラッティタテティラッティラアラッティオポポンオポポネオポポントンリッティリッツゥティットリリツツラティッツゥオポポティットゥポポオポティッツオポッポポッポティポッポポティティティットティットポポポリッツゥリッティティリッポポポポピラリッツゥリッツゥリツツラティッツゥティットゥリッツゥリッツゥリティティトゥットツツラティッツゥミッツゥオポポオッポッポポポティッテリッツゥリツリィリツツリィティットゥ」
41
あなたにおすすめの小説
精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果
あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」
ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。
婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。
当然ながら、アリスはそれを拒否。
他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。
『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。
その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。
彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。
『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。
「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」
濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。
······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。
復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。
※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください)
※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。
※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。
※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
〖完結〗聖女の力を隠して生きて来たのに、妹に利用されました。このまま利用されたくないので、家を出て楽しく暮らします。
藍川みいな
恋愛
公爵令嬢のサンドラは、生まれた時から王太子であるエヴァンの婚約者だった。
サンドラの母は、魔力が強いとされる小国の王族で、サンドラを生んですぐに亡くなった。
サンドラの父はその後再婚し、妹のアンナが生まれた。
魔力が強い事を前提に、エヴァンの婚約者になったサンドラだったが、6歳までほとんど魔力がなかった。
父親からは役立たずと言われ、婚約者には見た目が気味悪いと言われ続けていたある日、聖女の力が覚醒する。だが、婚約者を好きになれず、国の道具になりたくなかったサンドラは、力を隠して生きていた。
力を隠して8年が経ったある日、妹のアンナが聖女だという噂が流れた。 そして、エヴァンから婚約を破棄すると言われ……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
ストックを全部出してしまったので、次からは1日1話投稿になります。
〖完結〗役立たずの聖女なので、あなた達を救うつもりはありません。
藍川みいな
恋愛
ある日私は、銀貨一枚でスコフィールド伯爵に買われた。母は私を、喜んで売り飛ばした。
伯爵は私を養子にし、仕えている公爵のご子息の治療をするように命じた。私には不思議な力があり、それは聖女の力だった。
セイバン公爵家のご子息であるオルガ様は、魔物に負わされた傷がもとでずっと寝たきり。
そんなオルガ様の傷の治療をしたことで、セイバン公爵に息子と結婚して欲しいと言われ、私は婚約者となったのだが……オルガ様は、他の令嬢に心を奪われ、婚約破棄をされてしまった。彼の傷は、完治していないのに……
婚約破棄をされた私は、役立たずだと言われ、スコフィールド伯爵に邸を追い出される。
そんな私を、必要だと言ってくれる方に出会い、聖女の力がどんどん強くなって行く。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
〖完結〗仮面をつけさせられた令嬢は義姉に婚約者を奪われましたが、公爵令息様と幸せになります。
藍川みいな
恋愛
「マリアは醜くて、見ていられないわ。今日から、この仮面をつけなさい。」
5歳の時に、叔母から渡された仮面。その仮面を17歳になった今も、人前で外すことは許されずに、ずっとつけています。両親は私が5歳の時に亡くなり、私は叔父夫婦の養子になりました。
私の婚約者のブライアン様は、学園ダンスパーティーで婚約を破棄して、お義姉様との婚約を発表するようですが、ブライアン様なんていりません。婚約破棄されるダンスパーティーで、私が継ぐはずだったものを取り戻そうと思います!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
現実の世界のお話ではないので、細かい事を気にせず、気楽に読んで頂けたらと思います。
全7話で完結になります。
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
偽物と断罪された令嬢が精霊に溺愛されていたら
影茸
恋愛
公爵令嬢マレシアは偽聖女として、一方的に断罪された。
あらゆる罪を着せられ、一切の弁明も許されずに。
けれど、断罪したもの達は知らない。
彼女は偽物であれ、無力ではなく。
──彼女こそ真の聖女と、多くのものが認めていたことを。
(書きたいネタが出てきてしまったゆえの、衝動的短編です)
(少しだけタイトル変えました)
妹に婚約者を取られてしまい、家を追い出されました。しかしそれは幸せの始まりだったようです
hikari
恋愛
姉妹3人と弟1人の4人きょうだい。しかし、3番目の妹リサに婚約者である王太子を取られてしまう。二番目の妹アイーダだけは味方であるものの、次期公爵になる弟のヨハンがリサの味方。両親は無関心。ヨハンによってローサは追い出されてしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる