7 / 27
妹にずっと虐められていましたが、あるパーティーにて王子に見初められまして……? ~時に人生は大きく変化する~
しおりを挟む
妹リーファは姉である私のことを虐めることを生きがいとしていた。
そんなある日。
とある王都開催のパーティーの前日のことだ。
「お姉さまったらぁ、ほーんとだっさぁーい。そんなお姉さまには、こういうドレスがお似合いよー。虫を潰して出た汁をドレスに塗っておいて差し上げたわ。あーっはっはっはは! せいぜいそれを着て人前に出なさいな。うっふっふふふふ!」
私は着ていくために用意していたドレスを汚されてしまった。
この日のためにせっかく用意していたのに。ドレスはとんでもない状態に。美しい淡いブルーのドレスだったのだけれど、気持ち悪い汁でめちゃくちゃになってしまった。
「はぁ……」
これはさすがに溜め息が出てしまう。
とはいえ、今さら他のドレスを用意する時間はない――なので私は仕方なくそのドレスを着ていくことに決めて――不快ではあったけれどもそこに付着した汚れを丁寧に布で拭った。
……もっとも、それでも完全に元通りにはできなかったのだけれど。
でもあのままの状態で着るよりかはましだ。
前向きに、そう考えるようにして、私は少しでも希望を見つめようと努力した。
「あらお姉さま、本当にそれを着ていかれるの?」
「まぁそうするしかないもの」
「うふふっ、ま、そうよね。お金持ちじゃないしぃ。もう一着買ってもらえるほど親に愛されてもいないものね」
こんな酷いことをした妹と一緒にパーティー会場へ行かなくてはならないなんて不愉快さしかない。が、姉妹である以上別行動するというわけにもいかないので、妹と行動することになってしまうのは仕方のないことだ。姉妹としてこの世界に生まれ落ちた、それがすべてなのである。
「お姉さまはせいぜいこのわたくしの引き立て役になってちょうだい!」
「私はべつに男性に気に入ってほしいとは思っていないわ」
「なら! ちょうどいいわ! わたくしは良い男を捕まえたい、だからお姉さまはそのために協力してっ」
ドレスを滅茶苦茶にするような人間を支援する? そんな女が良い男を捕まえられるよう協力? ……馬鹿ではないだろうか。
私がどんな思いで今日を迎えたか、彼女は少しも察していないのか。
そういう思いが強くて。
さすがに「ええ協力するわ」とは返せなかった。
◆
そのパーティーにて、衝撃的な事件が起こった。
「わたくしぃ、リーファと申しますぅ。どうか、殿下、よろしくお願いしま――」
「貴女! とても美しい! 心惹かれました!」
王子フレラグンスが妹そっちのけで私のところへやって来たのだ。
「え……」
女性として華やかなのは私より妹のほうだ。だから私に寄ってくる者がいるなんて思っていなかった。それだけにかなり戸惑ってしまう。しかもその寄ってきている人が王子なのだから、なおさら戸惑いは大きい。
「その独創的な色みのドレスが素晴らしいですし、容姿もまとわれている雰囲気もすべて僕の理想の女性だ!」
フレラグンスの熱量はすさまじかった。
「あ、い、いや」
「どうかお名前を! 教えてくださいませんか!?」
「……リッシェリアです」
「おお! お名前までもお美しい!」
「えええ……」
こうして私はフレラグンスに気に入られたのだった。
「よければこの後二人でお茶でも。いかがです?」
「いえ、私は……」
「お嫌ですか?」
「そうではないのですけど……できれば妹も一緒に……」
「それは不要です」
「ええっ」
「僕が惚れているのは貴女なのですよリッシェリア様。ですから貴女と話したいのです」
断ろうと思った。
だって私だけが王子とお茶をしたなんて話になったら妹からもっといじめられそうな気がしたから。
けれども断らせてはもらえず。
やたらと強いフレラグンスの押しに圧倒されて、そのまま二人でお茶をするところにまで持ち込まれてしまった。
以降もフレラグンスより様々な方向からアプローチを受け、最終的に私は彼と結婚することとなる。
私はもう妹に虐められはしない。
なぜって、自由だから。
あの家にいなくてはならない理由なんてなくなったから。
私はフレラグンスのもとへ行った。
それはいじめからの解放でもあった。
◆
あの後妹は親の紹介で知り合ったそこそこお金は持っているものの年齢がかなり上な男性と婚約した。が、あまりにもわがままで。それによって愛想をつかされ、三ヶ月ももたず婚約破棄されてしまったそう。で、それによって妹は評判を悪くしてしまい、以降ある程度以上の条件の男性からはちっとも相手にされないようになってしまったそうだ。
「どうして、どうしてお姉さまができて、わたくしが結婚できないのよぉぉぉぉぉ……ムカつくムカつくムカつくううううううう!! おかしいでしょそんなの! そもそもあんな虫汁付きドレスを着た女に惚れるとか、王子もどうかしてんのよ! 明らかにわたくしのほうが可愛いし綺麗だし女として上でしょうがぁぁぁぁぁ……目節穴過ぎなのよおおおおおお!!」
今、妹の情緒は、かなり滅茶苦茶になってしまっているようだ。
恐らく、ずっと下に見ていた姉に先を越されたダメージが大きかったのだろう。
しかもその姉の結婚相手が王子だというのだから、衝撃はなおさら大きかったに違いない。
ちなみに私はというと、夫となったフレラグンスに大切にしてもらえている。
そしてそのおかげで日々心穏やかに過ごせている。
王城での暮らしにはすぐには慣れなかったけれど、でも、彼が傍にいて支えてくれていたからこそ徐々にでも慣れることができた。
今は、これから少しずつでも彼に恩返しができたら、と考えているところだ。
◆終わり◆
そんなある日。
とある王都開催のパーティーの前日のことだ。
「お姉さまったらぁ、ほーんとだっさぁーい。そんなお姉さまには、こういうドレスがお似合いよー。虫を潰して出た汁をドレスに塗っておいて差し上げたわ。あーっはっはっはは! せいぜいそれを着て人前に出なさいな。うっふっふふふふ!」
私は着ていくために用意していたドレスを汚されてしまった。
この日のためにせっかく用意していたのに。ドレスはとんでもない状態に。美しい淡いブルーのドレスだったのだけれど、気持ち悪い汁でめちゃくちゃになってしまった。
「はぁ……」
これはさすがに溜め息が出てしまう。
とはいえ、今さら他のドレスを用意する時間はない――なので私は仕方なくそのドレスを着ていくことに決めて――不快ではあったけれどもそこに付着した汚れを丁寧に布で拭った。
……もっとも、それでも完全に元通りにはできなかったのだけれど。
でもあのままの状態で着るよりかはましだ。
前向きに、そう考えるようにして、私は少しでも希望を見つめようと努力した。
「あらお姉さま、本当にそれを着ていかれるの?」
「まぁそうするしかないもの」
「うふふっ、ま、そうよね。お金持ちじゃないしぃ。もう一着買ってもらえるほど親に愛されてもいないものね」
こんな酷いことをした妹と一緒にパーティー会場へ行かなくてはならないなんて不愉快さしかない。が、姉妹である以上別行動するというわけにもいかないので、妹と行動することになってしまうのは仕方のないことだ。姉妹としてこの世界に生まれ落ちた、それがすべてなのである。
「お姉さまはせいぜいこのわたくしの引き立て役になってちょうだい!」
「私はべつに男性に気に入ってほしいとは思っていないわ」
「なら! ちょうどいいわ! わたくしは良い男を捕まえたい、だからお姉さまはそのために協力してっ」
ドレスを滅茶苦茶にするような人間を支援する? そんな女が良い男を捕まえられるよう協力? ……馬鹿ではないだろうか。
私がどんな思いで今日を迎えたか、彼女は少しも察していないのか。
そういう思いが強くて。
さすがに「ええ協力するわ」とは返せなかった。
◆
そのパーティーにて、衝撃的な事件が起こった。
「わたくしぃ、リーファと申しますぅ。どうか、殿下、よろしくお願いしま――」
「貴女! とても美しい! 心惹かれました!」
王子フレラグンスが妹そっちのけで私のところへやって来たのだ。
「え……」
女性として華やかなのは私より妹のほうだ。だから私に寄ってくる者がいるなんて思っていなかった。それだけにかなり戸惑ってしまう。しかもその寄ってきている人が王子なのだから、なおさら戸惑いは大きい。
「その独創的な色みのドレスが素晴らしいですし、容姿もまとわれている雰囲気もすべて僕の理想の女性だ!」
フレラグンスの熱量はすさまじかった。
「あ、い、いや」
「どうかお名前を! 教えてくださいませんか!?」
「……リッシェリアです」
「おお! お名前までもお美しい!」
「えええ……」
こうして私はフレラグンスに気に入られたのだった。
「よければこの後二人でお茶でも。いかがです?」
「いえ、私は……」
「お嫌ですか?」
「そうではないのですけど……できれば妹も一緒に……」
「それは不要です」
「ええっ」
「僕が惚れているのは貴女なのですよリッシェリア様。ですから貴女と話したいのです」
断ろうと思った。
だって私だけが王子とお茶をしたなんて話になったら妹からもっといじめられそうな気がしたから。
けれども断らせてはもらえず。
やたらと強いフレラグンスの押しに圧倒されて、そのまま二人でお茶をするところにまで持ち込まれてしまった。
以降もフレラグンスより様々な方向からアプローチを受け、最終的に私は彼と結婚することとなる。
私はもう妹に虐められはしない。
なぜって、自由だから。
あの家にいなくてはならない理由なんてなくなったから。
私はフレラグンスのもとへ行った。
それはいじめからの解放でもあった。
◆
あの後妹は親の紹介で知り合ったそこそこお金は持っているものの年齢がかなり上な男性と婚約した。が、あまりにもわがままで。それによって愛想をつかされ、三ヶ月ももたず婚約破棄されてしまったそう。で、それによって妹は評判を悪くしてしまい、以降ある程度以上の条件の男性からはちっとも相手にされないようになってしまったそうだ。
「どうして、どうしてお姉さまができて、わたくしが結婚できないのよぉぉぉぉぉ……ムカつくムカつくムカつくううううううう!! おかしいでしょそんなの! そもそもあんな虫汁付きドレスを着た女に惚れるとか、王子もどうかしてんのよ! 明らかにわたくしのほうが可愛いし綺麗だし女として上でしょうがぁぁぁぁぁ……目節穴過ぎなのよおおおおおお!!」
今、妹の情緒は、かなり滅茶苦茶になってしまっているようだ。
恐らく、ずっと下に見ていた姉に先を越されたダメージが大きかったのだろう。
しかもその姉の結婚相手が王子だというのだから、衝撃はなおさら大きかったに違いない。
ちなみに私はというと、夫となったフレラグンスに大切にしてもらえている。
そしてそのおかげで日々心穏やかに過ごせている。
王城での暮らしにはすぐには慣れなかったけれど、でも、彼が傍にいて支えてくれていたからこそ徐々にでも慣れることができた。
今は、これから少しずつでも彼に恩返しができたら、と考えているところだ。
◆終わり◆
1
あなたにおすすめの小説
義務ですもの。
あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。
一体何のことですか?【意外なオチシリーズ第1弾】
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【あの……身に覚えが無いのですけど】
私は由緒正しい伯爵家の娘で、学園内ではクールビューティーと呼ばれている。基本的に群れるのは嫌いで、1人の時間をこよなく愛している。ある日、私は見慣れない女子生徒に「彼に手を出さないで!」と言いがかりをつけられる。その話、全く身に覚えが無いのですけど……?
*短編です。あっさり終わります
*他サイトでも投稿中
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
四人の令嬢と公爵と
オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」
ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。
人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが……
「おはよう。よく眠れたかな」
「お前すごく可愛いな!!」
「花がよく似合うね」
「どうか今日も共に過ごしてほしい」
彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。
一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。
※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください
聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした・完結
まほりろ
恋愛
聖女として召喚された女子高生は、王子との結婚を餌に修行と瘴気の浄化作業に青春の全てを捧げる。
だが瘴気の浄化作業が終わると王子は彼女をあっさりと捨て、若い女に乗
り換えた。
「この世界じゃ十九歳を過ぎて独り身の女は行き遅れなんだよ!」
聖女は「青春返せーー!」と叫ぶがあとの祭り……。
そんな彼女を哀れんだ神が彼女を元の世界に戻したのだが……。
「神様登場遅すぎ! 余計なことしないでよ!」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿しています。
※カクヨム版やpixiv版とは多少ラストが違います。
※小説家になろう版にラスト部分を加筆した物です。
※二章に王子と自称神様へのざまぁがあります。
※二章はアルファポリス先行投稿です!
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて、2022/12/14、異世界転生/転移・恋愛・日間ランキング2位まで上がりました! ありがとうございます!
※感想で続編を望む声を頂いたので、続編の投稿を始めました!2022/12/17
※アルファポリス、12/15総合98位、12/15恋愛65位、12/13女性向けホット36位まで上がりました。ありがとうございました。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
愛は契約範囲外〈完結〉
伊沙羽 璃衣
恋愛
「カヴァリエリ令嬢! 私はここに、そなたとの婚約を破棄することを宣言する!」
王太子の婚約破棄宣言を笑顔で見つめる令嬢、フェデリカ。実は彼女はある目的のために、この騒動を企んだのであった。目論見は成功したことだし、さっさと帰って論文を読もう、とるんるん気分だったフェデリカだが、ひょんなことから次期王と婚約することになってしまい!?
「婚約破棄騒動を仕向けたのは君だね?」
しかも次期王はフェデリカの企みを知っており、その上でとんでもない計画を持ちかけてくる。
愛のない契約から始まった偽りの夫婦生活、果たしてフェデリカは無事に計画を遂行して帰ることができるのか!?
※本編43話執筆済み。毎日投稿予定。アルファポリスでも投稿中。旧題 愛は契約に含まれません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる