上 下
2 / 2

後編

しおりを挟む

 スズレアは元々は人を傷つけようとするような人物ではなかった。が、今はもう躊躇なく傷つけることだってできるくらいの感情の持ち主となっていて。

 だから、魔王の手下の提案を受け入れた。

「分かりました。……ぜひ」
「良かった! では、これから、よろしくお願いしますね!」

 こうしてスズレアは魔王のもとへと向かった。
 そして魔王と結婚。
 その後魔王軍はパル王子のいる国へ侵攻を開始した。

 パル王子がいる国も人間の国の中ではそれほど弱い国ではない。しかし彼らも魔王軍の前ではそれほどの力はなく。パル王子がいる国はあっという間に壊滅した。

「妻よ、パル王子という男とその女であるリーナという者を捕まえたが、確か貴女の恨みの対象だったな? どうしようか? 彼への対処は貴女に任せたい」
「どのような対処があるのでしょうか」
「そうだな……ま、何もなく生かしておくということは難しいだろうな、王子ゆえ。ただ、生を終わらせることなら、どのようなことでもできる。さっくり処刑するでも良いし、罰を与えてからでも良い」

 スズレアの意見もあって、パル王子はリーナが拷問され死刑となるところまでを見届けたうえで処刑されることとなった。

 そうして二人はこの世から去った。

「魔王様、すみませんでした。何というか……私の勝手であのようなやり方をさせてしまって」
「いや、よい。協力してくれた礼だ」

 仕返しする相手はもういない。

 スズレアはこれからは己の幸せのために生きてゆくことにした。

 己が悪であると分かっていながらも。
 それを認めながらも。
 それでもなお、己の幸せを追求し、進むことにした。


◆終わり◆
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...