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1話
しおりを挟む婚約者ウィロウの母親は少々失礼な人だった。
「冒険者の女? いいじゃない、嫁にしてあげなさいよ。ウィロウがいなくちゃ貰い手もないんだろうし。ま、魔物からでも護ってくれるならそれでいいんじゃない?」
けれども、失礼ではあるけれど、私と息子がくっつくことに関してはそこまで悪くは思っていないようで。むしろ、迷いがあった息子にくっつくよう助言してくれていることもあったくらいのようだ。
だから「失礼なことを言うのは天然なのだろう」と思って流していた。
夫となる人の母親だからって敵意を持っていると思っては駄目だ、そう思い、悪く考えないようにしていた。
しかし徐々に彼女は変わってゆく。
ウィロウの母親は次第に周囲に私を悪く言うようになっていったようで、入ってきた情報によれば「うちの息子なんてね! 貰い手のない野蛮な女しか来なかったのよ!」とか「戦いを生業にしている女なんてないわぁ、最悪だわ」とか言っていたようで。
そのうち、気づけば、彼女は私にやたらと心ない接し方をするようになっていって。
「ミレイさんって、冒険者だっただけあって野蛮よねぇ。お淑やかさが足りないわぁ」
そんなことを直接言われるのはよくあることだったし。
「料理はきちんとできる? ま、脳筋の馬鹿だから無理かしらぁ。うふ、まぁいいわ、あたしが教えてあげる。だからぁ、あたしに習ったことはきちんとすべてその通りに行いなさいよ? そうでなくちゃ、あたしの息子に相応しい女性にはなれないから」
長々と叱られることもあった。
それでも我慢していたのだけれど。
「ミレイさん、貴女はやっぱりうちの息子には相応しくないわ」
ある日の昼下がり、ウィロウの母親に呼び出されて。
「うちの息子との婚約だけれど、破棄とさせてもらうわ!」
宣言されてしまった。
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