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前編
しおりを挟む「お前のような地味な女とはもうこれ以上やっていけない!」
その日は突然やって来た。
災害のように。
何の前触れもなく訪れる瞬間。
「地味だからというだけで判断してはいけないと、もしかしたらもっと良いところがあるかもしれないと、そう思って今まで付き合ってきた。婚約を受け入れたのも、もしかしたら、という思いがあったからだ」
紺色の上下を身にまとった婚約者ヴィテリは冷ややかな眼差しをこちらへ向けながら言葉を紡ぐ。
「だが――結局、結婚するに相応しい素晴らしい部分は見つからなかった」
「そう、ですか……」
「お前と結婚しお前と共に生きてゆく、それを考えた時、俺には絶望しかなかった。だから決めたのだ。悪いが、お前との婚約は破棄とする!!」
ヴィテリは落ち着きながらも鋭い調子で発した。
そうか、私は駄目だったのか……。
良いところがなかった……。
彼に相応しくないと思われてしまったのか……。
きっと彼も色々考え悩んだのだろう。そしてこういう答えを出したのだろう。だとしたら私は。私は、彼に、あれこれ言うことはできそうにない。彼が出した答えに私があれこれ言うことはきっとできないし、それで何かが変わるわけでもない。説得などもはや無駄だろうし。
「承知しました。では……私はこれで、失礼します」
「ああ。今までありがとう」
どうして――どうして今になって、ありがとう、なんて言うのか。
辛いではないか。
今さらそんなことを言われたら。
◆
あれから私は親の勧めで舞踊を習い始めた。
この国の伝統舞踊。
婚約破棄された辛さから逃れるには、何かに打ち込むのが一番だった――ということで舞踊に集中して打ち込んでいたところ、私はみるみる地位を上げていくこととなった。
そして、習い始めてから二年も経たないうちに、注目の若手舞踊家として有名人になった。
それからは色々仕事が舞い込んでくるようになった。
私はひたすらそれをこなしていく。
そのうちにさらに有名になってゆき、気づけば道行く人にも気づかれるくらいになっていた。
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