聖女がいなくなった時……

四季

文字の大きさ
1 / 4

1話

しおりを挟む
 隣国の王子に嫁ぐことが決まった時は何が何だか分からなかった。

 私——マレイ・クルトンは、十八を迎えた春、隣国の第一王子と婚約することになった。なぜなら私が通称国守りの娘、一種の聖女のような存在であると判明したから。私がそういう娘であることを知った隣国の王が、自分の息子に嫁いでほしいと頼んできたのだ。

 私は貴族と呼ばれるような家の娘。だが王族ではない。本来、隣国の王子と結ばれるような身分の人間ではないのだ。だが、頼まれれば断ることはできず、第一王子に嫁ぐこととなった。

 しかし、彼のもとへ行ってからというもの、人々にやたらと絡まれた。

「こんな貧相なお子ちゃまが未来の王妃? ばっかじゃないの」

 第一王子カツドンの姉にあたる女性は、私を見た瞬間、馬鹿にしたような表情でこんなことを言ってきた。

 せめて裏で言ってくれ、裏で。
 面と向かって言われると不快感が凄まじい。

「知ってる? カツドン王子の婚約者、貧相な小娘だそうよ」
「えぇ……そうなの、残念……」
「痩せてるし凹凸もないし平凡な容姿だし、いいとこなしよね」

 城で働く使用人の女性たちはいつもそんなひそひそ話をしていた。
 私がすぐそばを通る時にはぴたっと話をとめるのだが、通り過ぎればまた話し出す。ちなみに、一応小声での会話ではあるものの丸聞こえ。どうやら本気で隠す気はないらしい。

「国守りの娘だとか言われてるけれど絶対嘘よねぇ、あんな地味な娘のはずないわぁ」
「そうねぇ」
「何かの間違いよ、きっとそうよ」
「うふふ」

 それなりに年を重ねた婦人たちも私を受け入れてはくれない。
 地味だとか相応しくないだとか嫌みを言うばかり。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

あなたに何されたって驚かない

こもろう
恋愛
相手の方が爵位が下で、幼馴染で、気心が知れている。 そりゃあ、愛のない結婚相手には申し分ないわよね。 そんな訳で、私ことサラ・リーンシー男爵令嬢はブレンダン・カモローノ伯爵子息の婚約者になった。

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

あなただけが頼りなの

こもろう
恋愛
宰相子息エンドだったはずのヒロインが何か言ってきます。 その時、元取り巻きはどうするのか?

王立学園の特待生

碧井 汐桜香
恋愛
兄4人で唯一の末っ子女子として産まれたルリアンヌは、それはそれは溺愛されて育ってきた。 そんなルリアンヌは王立学園の首席特待生。将来の夢は、初の女性宰相。 平民のくせに主席なんて、と陰口を言われるルリアンヌには秘密があって……。

私を陥れ王の妃になろうとした罪深き聖女は、深い闇の中に一生閉ざされる事になりました。

coco
恋愛
王の妃候補の私を、悪女に仕立て上げた聖女。 彼女は私に代わり、王の妃になろうとするが…? 結局彼女はその愚かな行いが原因で、深い闇の中に一生閉ざされる事になりました─。

幸せになれると思っていた

里見知美
恋愛
18歳になったら結婚しよう、と約束をしていたのに。 ある事故から目を覚ますと、誰もが私をいないものとして扱った。

【R15】婚約破棄イベントを無事終えたのに「婚約破棄はなかったことにしてくれ」と言われました

あんころもちです
恋愛
やり直しした人生で無事破滅フラグを回避し婚約破棄を終えた元悪役令嬢 しかし婚約破棄後、元婚約者が部屋を尋ねに来た。

処理中です...