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その後色々あって、私たちは、魔王軍の手下に誘拐されることとなってしまった。だがそこで出会った魔王と親しくなり、最初こそ思想の違いで反発しあっていたのだが分かり合えるようになって。最終的に私たちは魔王軍に味方することを決めた。
生まれた国に牙を剥く。
悲しいことだけれど、仕方がない。
私は確かにあの国に生まれた。あの国の王女だった。けれども、物のような乱雑な扱いをされるくらいなら、国を出た方がずっとまし。そういう思いで、私は魔王軍についた。
そのことが明らかになると、私はガルセインから婚約破棄を告げられた。
もちろん直接会って告げられたわけではなく、間接的にだけれど。
それからガルセインはレイビアを含む仲間たちと共に抵抗した。一度は退けた魔王軍だから今度も大丈夫、そう考えていたようだ。だが甘い。一度退けたから次も退けられる、なんて決まりはどこにもない。
◆
その後、魔王軍は侵略を着々と進め、私が生まれ育ったあの国を占領した。
かつての戦いでは活躍した勇者たち。しかし、あの戦いの後に遊び過ぎたがために情けない状態になってしまっていて、今回は活躍できなかったらしい。
ガルセインは一度は戦場に出たが、敵の強さに慄いて逃げようとし、その最中に胸をひと突き。悲鳴をあげる暇もなく、鼻水と唾液を垂らして死亡したそうだ。
レイビアはずっとガルセインの傍にいたそうだが、倒れた彼を治療しようとしている時に拘束され、闇市場に売り飛ばされたらしい。その後は詳しく分からなかったが、女性を売る商売をしている商人たちの間で行き来していたものと思われる。
私に時折声をかけてきていた少女も、戦いに巻き込まれて死亡。その他の勇者や勇者の仲間と呼ばれていた人たちも、その多くが、戦いの中で命を散らせていったと聞いている。
国王であった私の父親も、降伏宣言の後、投獄されたまま亡くなった。
◆
それから数年、この国は魔王軍が統治する国となった。
私は今、この国の王妃だ。
なぜなら、魔王軍を率いている魔王の妻となったからである。
戦争で一度は壊された街は着実に復興への道を歩んでいる。本当に小さな一歩ずつだが、それを重ねることが大切だ。少しずつでも進めていくことで、明るい未来が見えてくる。大抵そういうものである。
希望ある、明るい未来へ。
この国はまだ歩み出したばかり。
◆終わり◆
生まれた国に牙を剥く。
悲しいことだけれど、仕方がない。
私は確かにあの国に生まれた。あの国の王女だった。けれども、物のような乱雑な扱いをされるくらいなら、国を出た方がずっとまし。そういう思いで、私は魔王軍についた。
そのことが明らかになると、私はガルセインから婚約破棄を告げられた。
もちろん直接会って告げられたわけではなく、間接的にだけれど。
それからガルセインはレイビアを含む仲間たちと共に抵抗した。一度は退けた魔王軍だから今度も大丈夫、そう考えていたようだ。だが甘い。一度退けたから次も退けられる、なんて決まりはどこにもない。
◆
その後、魔王軍は侵略を着々と進め、私が生まれ育ったあの国を占領した。
かつての戦いでは活躍した勇者たち。しかし、あの戦いの後に遊び過ぎたがために情けない状態になってしまっていて、今回は活躍できなかったらしい。
ガルセインは一度は戦場に出たが、敵の強さに慄いて逃げようとし、その最中に胸をひと突き。悲鳴をあげる暇もなく、鼻水と唾液を垂らして死亡したそうだ。
レイビアはずっとガルセインの傍にいたそうだが、倒れた彼を治療しようとしている時に拘束され、闇市場に売り飛ばされたらしい。その後は詳しく分からなかったが、女性を売る商売をしている商人たちの間で行き来していたものと思われる。
私に時折声をかけてきていた少女も、戦いに巻き込まれて死亡。その他の勇者や勇者の仲間と呼ばれていた人たちも、その多くが、戦いの中で命を散らせていったと聞いている。
国王であった私の父親も、降伏宣言の後、投獄されたまま亡くなった。
◆
それから数年、この国は魔王軍が統治する国となった。
私は今、この国の王妃だ。
なぜなら、魔王軍を率いている魔王の妻となったからである。
戦争で一度は壊された街は着実に復興への道を歩んでいる。本当に小さな一歩ずつだが、それを重ねることが大切だ。少しずつでも進めていくことで、明るい未来が見えてくる。大抵そういうものである。
希望ある、明るい未来へ。
この国はまだ歩み出したばかり。
◆終わり◆
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