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2話
しおりを挟む家での暮らしは地獄だ。奴隷のようにこき使われ、たった一度の小さな失敗を指摘され罵倒され、生きている価値のない人間であるかのように言われる。父は呑気で私がそんな目に遭っていると気づいていないし、何なら私と母は仲良しだと思っているほど。もちろん家には他の人はいないので誰かが助けてくれるということもない。
――そんな暮らしに疲れた私は、ついに、死を選ぶことにした。
だってもう生きていても意味なんてないだろう? ずっとここで母に従わされ続けるだけの人生なのだから。未来がある? 夢をみられる? 私にはどちらもない。このまま生きていても、きっと、私はずっと母に好き放題されるだけ。
――ならば死というのも悪くはない。
どうせこの世も地獄、自死によって地獄へ送られるとしても問題はないのだ。
――しかし、私が塔から飛び降りて死のうとした瞬間、誰かが私の片手首に触れた。
「何してるの!?」
まだ高めの少年のような声。
「え」
「駄目だよ、飛び降りたりしたら! 危ないよ!」
振り返ったら、そこには一人の金髪の青年がいた――恐らく青年だと思うのだが、見た目は少年に近い。
つまり、童顔。
「離してください!」
「鳥になりたい、とかいうやつでしょ? いるんだ、そういう人。よく。でもみんななれなかった。みーんな飛び降りたら死んだ!」
「鳥? 違います! 私は死にに来たんです!」
塔に人がいるなんて想定外だった。
ここなら誰にも知られず死ねると思ったのに。
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