3 / 3
3話
しおりを挟む「死にに……?」
「はい、私はこの世から去ります」
「駄目だよ!」
「もう嫌なんです、何もかも。その手を離してください」
すると彼は翡翠のような瞳でじっとこちらを見つめてきた。
「じゃあ、死ぬんじゃなくて、人間やめるってのはどう?」
彼は静かな声でそう提案してきた。
「え……」
「僕らみたいな道を行くんだ」
「どう、いう……」
「人間をやめればいい。なら死ぬ必要はなくなる。それに、人間でなければ誰だって何でもできる。もうお金なんて関係なくなるしね」
彼は名をローゼットといった。
私はなぜか彼に惹かれた。
そして彼と共に歩む道を選ぶことにした。
どうせ死ぬ気だったのだ、人間をやめるという選択だって一つだろう――そう考えて、私はローゼットと共に行く道を選んだのである。
その後、結論からいうと、私は母への復讐に成功した。
人間をやめた時に手に入れた情報を好き放題広められる能力によって。
まずは母の不倫と私への心ない対応を彼女の夫である父に知らせた。最初こそいたずらかと信じなかった父だったが、何度も情報が入ってきて、やがて知人から「奥さん不倫してるよ」と言われたことでついに事実を事実と受け入れた。そして父は慰謝料を取って離婚した。
その後私は多くの人に母のこれまでの悪しき行動について情報を与えた。
すると驚くべき量の批判が母に届いて。中には過激な人まで発生。そしてある日の夕暮れどき、母は過激な批判者にナイフで刺された。死にはしなかったものの、その件がトラウマになり、以降母は一人で家から滅多に出られないような状態となってしまった。
母は離婚後しばらく実家へ戻っていたが、ちょうど母が心を病んだ頃に彼女の両親は他界。それによって母は一人ぼっちになってしまった。親の死後はずっと一人ぼっちで泣いていたようだ。
今や彼女は悪の人。
誰もがそう理解している。
これが私の復讐――娘を虐めこき使ってきた罰から、母は生涯逃れられない。
そして私はというと、これからは、ローゼットと共に人々に色々な出来事を与える仕事に従事してゆく予定だ。
今の私には仲間がいる。
もう一人じゃない。
だからどんな山も谷も越えてゆけるしそう信じられる。
◆終わり◆
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
【完結】愛で結ばれたはずの夫に捨てられました
ユユ
恋愛
「出て行け」
愛を囁き合い、祝福されずとも全てを捨て
結ばれたはずだった。
「金輪際姿を表すな」
義父から嫁だと認めてもらえなくても
義母からの仕打ちにもメイド達の嫌がらせにも
耐えてきた。
「もうおまえを愛していない」
結婚4年、やっと待望の第一子を産んだ。
義務でもあった男児を産んだ。
なのに
「不義の子と去るがいい」
「あなたの子よ!」
「私の子はエリザベスだけだ」
夫は私を裏切っていた。
* 作り話です
* 3万文字前後です
* 完結保証付きです
* 暇つぶしにどうぞ
婚約破棄されたので実家へ帰って編み物をしていたのですが……まさかの事件が起こりまして!? ~人生は大きく変わりました~
四季
恋愛
私ニーナは、婚約破棄されたので実家へ帰って編み物をしていたのですが……ある日のこと、まさかの事件が起こりまして!?
お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。
四季
恋愛
お前は要らない、ですか。
そうですか、分かりました。
では私は去りますね。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる