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前編
しおりを挟むそこそこ裕福な家の次女として生まれ育った私には婚約者がいました。
彼の名はフローレンス。
見た感じ好青年で、社会での評判も高い。
そんな人物でした。
友人からも、私が彼との縁を得たことを羨ましがられたほどでした。
しかし、そんな彼も完璧かつ善良な人物というわけではなくて。自分に自信があるゆえに、婚約者である私にも完璧さを求めてきて。彼は私の振る舞いに対してことあるごとに注意を投げてきました。経っている時の指先がもっと綺麗でないと駄目、というような、かなり細かいことまで言われたほどでした。
そんなある日のこと。
「君との婚約だが、破棄することにした」
フローレンスは私を自宅へ呼び出すとそう告げました。
「あの……私、そんなに大変なことをやらかしたのでしょうか?」
「ふん。分かっていないようだな。君は俺に相応しくない、そして、注意をしても完璧になれない。そんな女に俺の隣にいる資格などないってことさ。それが理由。さすがに分かったか?」
気に食わないことが降り積もり過ぎた、ということでしょうか。
そういうことなら仕方ないのかもしれない。
少々理不尽な気はするけれど。
ただ、彼はどうしても納得できないのだろう、ということは、これまでの彼の発言を覚えていたなら何となくは理解できます。
「裕福な家の生まれの癖に受けた教育は最低のものだったようだな。……ではこれにて。お別れとさせてもらうよ。さよなら」
こうして私は話し合いも説得もさせてもらえないまま切り捨てられることとなってしまいました。
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