満月の夜、私は見てしまったのです――婚約者が知らない女と抱き合っているところを。

四季

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前編

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 満月の夜、私は見てしまった。

「ああ、オルクル様……」
「今日はとても美しい日だな」

 婚約者オルクルが見知らぬ女性と近所の丘で抱き締め合っているところを。

 信じられなかった。
 少しも想定していない展開だったから。

 月の光が静寂の中で抱き合う二人を照らしている。

「あの、オルクルさん、何をなさっているのですか?」

 ひとまず抱き合う二人の姿を撮影しておいて、それから、思いきって声をかけてみた。

 すると。

「なぜお前がここにいるんだ!」
「え」
「邪魔をするな! いいところなんだよ!」
「ええっ……」

 なぜか怒られてしまう。

 悪いことをしているのはそちらではないの? 婚約者がいる身で他の女性と抱き合っているなんて。なのになぜそんなにも偉そうなの? そんな風に高圧的に出られる貴方ではないでしょう。

 ……どうしてもそんなことを思ってしまう。

 だが流れに逆らうことはできず。

「邪魔するならお前なんぞ存在価値がない、よって、婚約は破棄とする!!」

 そんなことを言われてしまった。

 私は理不尽に捨てられた。
 悪いのは彼なのに。
 なのになぜか私が悪者にされてしまった。

 何なんだ、これは。

 ――だが負けはしない!
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