学園卒業の日に始まった彼との縁はある女の登場で切れてしまいました。が、悲しみの先にそれ以上の幸せが待っていました。

四季

文字の大きさ
1 / 2

前編

しおりを挟む

「あのさ、ちょっといいか?」
「はい……何でしょうか」

 あれは、学園卒業の日。

 帰りしなに一人の男子学生に声をかけられた――それが後に婚約者となる彼ローランだった。

「もしよかったらなんだけど……これから仲良くしてくれないか?」
「え。何ですかそれ」

 彼との交流はその日から始まったのだ。

 それまでは、向こうはこちらを知っていたようだが、こちらは向こうをほぼ認識していなかった。学園時代クラスが違っていたこともあり、顔すら認識していない勢いであった。

「ええと、その……実は、前から君に惚れてて。それで……良かったら食事にでも、と」
「ああ、そういうことですか」
「どうだろう?」
「……良いですよ、明るい時間帯であれば」
「ありがとう! じゃあ、約束させてください!」
「はい」

 そこから関わるようになっていった私たちは、やがて、両親へも話をして――その果てに婚約するに至った。

 思えばあの頃は幸せだった。

 二人で未来を信じていられた、あの頃は――。


 ◆


「俺、彼女と生きることにしたから」

 いつからか、ローランは私に目を向けなくなった。
 そしてその先で。
 彼はついに私ではない女性を選んだ。

「悪いけど、お前との婚約は破棄する」

 女連れでそんなことを言われて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

さようなら、あなたとはもうお別れです

四季
恋愛
十八の誕生日、親から告げられたアセインという青年と婚約した。 幸せになれると思っていた。 そう夢みていたのだ。 しかし、婚約から三ヶ月ほどが経った頃、異変が起こり始める。

今さら泣きついても遅いので、どうかお静かに。

有賀冬馬
恋愛
「平民のくせに」「トロくて邪魔だ」──そう言われ続けてきた王宮の雑用係。地味で目立たない私のことなんて、誰も気にかけなかった。 特に伯爵令嬢のルナは、私の幸せを邪魔することばかり考えていた。 けれど、ある夜、怪我をした青年を助けたことで、私の運命は大きく動き出す。 彼の正体は、なんとこの国の若き国王陛下! 「君は私の光だ」と、陛下は私を誰よりも大切にしてくれる。 私を虐げ、利用した貴族たちは、今、悔し涙を流している。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~

アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。

婚約者の座は譲って差し上げます、お幸せに

四季
恋愛
婚約者が見知らぬ女性と寄り添い合って歩いているところを目撃してしまった。

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

処理中です...