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3話

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 こうして母は死んだ。
 もう私に暴言を吐くことはできない。

 ……ああ、もう、こんなに嬉しいのはいつ以来だろう。

 皆私の精神状態を心配してくれていたけれど、それは、あくまで母が良き母であったのだと信じているからだ。

 人々は母の悪行を知らない。
 だからこそ私が悲しんでいると思うのである。

 母の死後しばらくして、私は、母が私に対してしてきた悪行を世に広く公開した。

 苦しんできたのだ。
 悲しんできたのだ。

 たくさん傷ついてきた。

 ずっと、ずっと、ずっと……。

 だから真実を知った人たちが母を批判してくれてものすごく救われた。

 ようやく少し報われた気がする。
 これまで背負ってきた痛みが人々に理解されて。

 さて、私はここからまた新たな一歩を踏み出す。

 母のいなくなった快晴の日のような心地よい世界で生きてゆくのだ。


 ◆


「結婚おめでとう!」

 母の死から二年。
 私はついに結婚式の日を迎えた。

「色々大変だったわね、今まで……でも貴女が幸せになって、本当に良かったわ。おめでとう。これからも末永くお幸せに」
「とっても綺麗だよ!」
「素晴らしい花嫁姿だと思うぞ」

 白いドレスに身を包み、親戚の人たちから祝福の言葉を貰う。

「新しい出発ね! 応援してるから!」
「絶対幸せにならなくちゃ、だよ。でもきっと、きっと、大丈夫。信じてるから!」
「困ったことがあったらいつでも言ってちょうだいねぇ」

 悪質な母に傷つけられたくらいで不幸になんてなってやるものか。

 私は絶対に負けない。
 嫌がらせや暴言にずっと泣かされている私ではない。

 それが地獄へ堕ちた母への最大の復讐。

 そうよ、幸せになるの。


◆終わり◆
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