「お前みたいな不細工、やっぱ相手にするんじゃなかったわ。てことで、婚約は破棄な!」なんて言われるような女でしたが、ある夜奇跡が起きまして。

四季

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前編

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「お前みたいな不細工、やっぱ相手にするんじゃなかったわ。てことで、婚約は破棄な!」

 婚約者ヴィフストラスがある日突然そんなことを言ってきた。

「え……」

 これにはさすがに戸惑うしかなかった。

 ……あまりにも急だったから。

「今日以降、俺らは他人! いいな!」
「ま、待ってください、あまりにも急で……その……」
「お前に発言権はねぇよ!」
「あっ……」

 ――そう、私は不細工だ。

 五体満足で生まれた。
 それだけでも幸運なことなのだけれど。

 ただ、私の顔は、一般的に美しいと言われるような顔立ちとはかけ離れている。

「これまで婚約してやってたことに感謝しろよ? どーせお前みたいな不細工は誰にも相手にされねぇんだからよ。それでも俺は一時的にでもお前と婚約してやったんだ、それは優しかったからだよ。ま! 精々一生の思い出にするんだな!」

 どうしてそんな酷いことが言えるの?

 そう言いたかった。
 でも無理だった。
 ここで私がこの顔で何を言い返そうとも、ただの負け惜しみと取られるだけだ。

 結局、不細工には発言する権利はないということなのか……。

 こんな世界は嫌だ。
 私だって普通の人間なのに。

 それなのに愛されないどころか最低限の権利すら与えてもらえないなんて……。

 ただ、私としてもヴィフストラスへの執着心が強いわけではなかったので、流されるように婚約破棄を受け入れることができた。

 もっと彼を愛していたら。
 もっと彼を必要としていたら。

 それはもうきっととてつもなく辛かっただろうが。

 ――それだけは幸いだった。
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