「お前みたいな不細工、やっぱ相手にするんじゃなかったわ。てことで、婚約は破棄な!」なんて言われるような女でしたが、ある夜奇跡が起きまして。

四季

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後編

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 ◆


 ヴィフストラスに婚約破棄されてから数日が経ったある夜、私に奇跡が起こった。

 寝しな、枕もとに見知らぬ女性が現れて。
 きらきらと光る粉をまとっている彼女は「貴女に救いを」と述べてから杖を振った。

 すると奇跡が起こり、私は一瞬にして美女になったのである。

「幸せにね」

 これは一体何が起きている? 不細工な私は消えた? でも、そんな、嘘みたいな。そんなことってあるのだろうか。一時的に、ならまだしも、顔が変わって一生そのまま、なんて。そんな嘘みたいな、架空の物語みたいな。そんなことが起こるものなのか?

「え……あ、あのっ、これは魔法で……!?」
「そうよ、一生とけない魔法」
「い、一生、って……本当、なのですか……? その、そんな、そんなことって……本当にあるものなのですか……!?」

 すると女性は微笑んだ。

「ええ、永遠にその顔よ」

 そして彼女は光となり消えてしまった。

 半信半疑だったけれど、結局、私の顔は美しいものになったままだった。

 どうやらあの女性が言っていたことは嘘ではないらしい。


 ◆


 顔が変わった夜から一年五ヶ月、私は王子と結婚した。

 きっかけは街を歩いていたところを王子に発見され見初められたこと。そこから急激に関係が進展していって、婚約し、結婚にまで至った。

 嘘みたいな本当の話、である。

 ただ、私は、王子に対してすべてを明かしている。

 ――この顔は生まれつきのものではない。

 そのことも結婚前にきちんと話した。

 でも王子は「それでも貴女がいい」と言ってくれて、それで、今日があるのだ。

 実は顔が美しいものに変わった直後ヴィフストラスから「その顔になったのならやり直さないか? 今度は優しくしてやる」と言われたことがあった。ただ、私としては彼はもう絶対に目にしたくない存在だったので、こちらからお断りしてやった。

 あの時彼のところへ戻っていなくて良かった。
 だって、そこで彼のところへ帰っていたとしたら、王子との幸せな現在は存在しないのだ。

 ちなみにヴィフストラスはというと、私に拒否された数日後に私の実家へ殴り込み「この俺を拒むなど生意気過ぎる!」などと叫びながら刃物を持って暴れようとしたそうで、それによって逮捕された。

 で、彼は今、冷えた美味しくない食べ物しか口にできないような環境で生活せざるを得なくなっているそうだ。

 だがそれも自業自得。
 思い通りにいかなかったからと暴れた彼だけに非がある。


◆終わり◆
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