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#037 Hymn
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東京都・18歳女性「海外なんて初めてだったけど、オーストリアは普通に音楽活動が許されていて驚いた。生まれて初めてストリートミュージシャンに投げ銭なんて経験をしたんだけど日本でも大昔は普通だったらしい」
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「ギル…ド……?どこの組合だい?」
「ウィーンのどっかの企業が、裏では自分達を楽団って名乗りながら人攫いをしてるらしいよ」
「俺は薬物の輸入販売の元締めやってるマフィアだって聞いたぜ」
布商人の噴水が有名なトゥーフラウベン通り。
等間隔に並んだ街灯が宵闇の中でもその歴史的建造物の数々を美しく照らし出している。
例に漏れず観光客の多いこの地域でも、その悪い噂はジワリジワリと人々の間に浸透しているようであった。
通りを一本入った小道を進んでいくと、暗がりの路地にぼんやりと浮かぶバーの看板が見えてくる。勢いよくそのドアベルを鳴らしたのは、一組の男女であった。
カッチリとした紺色のダブルスーツに茶色いクラウドマッシュのオールバックでビジネスマンのような印象の長身の男。そして、女の方はボルドーで細身のロングドレスを纏っていた。観光客なのだろうか、それぞれ小ぶりなキャリーケースを手に持っている。
カウンターの一番奥に着いた二人を追って、店員が水の入ったグラスを置きながら尋ねる。
「初めてのお客さんですね。誰かに勧められました?」
彼が腰に巻いたエプロンのポケットから、手のひらサイズのバインダーを取り出す様子を眺めていた女の方が口を開いた。
「……ええ。緑色のベレー帽を被った花屋のお爺さんに」
彼女の回答を聞いた店員は、ボールペンを持った右手をピタリと止める。そして、手に持った道具の全てをすぐ様ポケットにしまいながら、ついて来るようにと促してきた。
立ち入り禁止と書かれた扉の奥に進み、10畳程のスペースに複数のショーケースが並べられた空間に案内された男女。ライトアップされたガラスの向こう側には、色鮮やかな錠剤が詰められた袋がディスプレイされている。
コの字型に配置されたショーケースに囲まれた場所には、暗い室内だと言うのにサングラスを掛けたニット帽の男が鎮座しており、二人が入室してきたタイミングで顔を上げて立ち上がった。
「100ユーロからやってるよ。どんくらい欲しいんだ?」
咥えていた煙草に火をつけながら尋ねてきた男は、ショーケースの中から錠剤が入った袋を取り出して二人の前に差し出す。
顔を見合わせた男女は、互いに小さく頷き合った。そして、男の方が口を開く。
「……済まないが、こういうモノに興味を持ったのも初めてなんだ。詳しく聞かせてくれるか?」
最後にニコッと笑った様子に、ニット帽の男は面倒臭そうな様子で元々掛けていた椅子に座り直すと、煙草の煙を彼の方に吹きかけながら答えてやる。
「最近アメリカで流行ってるROCKってドラッグだ。元々は医療用の鎮痛成分だな。体に悪ィ事なんてねぇよ」
体に悪くない薬物など存在しない。売人の決まり文句に苦笑いを浮かべた女の方が小さく手を挙げながら尋ねる。
「売り始めたのは最近?上はとても雰囲気の良い感じのバーだったからギャップに驚いちゃって」
「隠れ蓑ってやつさ。仕入れ先は毎回変わるが、今回はかなり羽振の良いマフィアでな……」
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シンと静まり返ったバーの店内。床や天井、壁は一面真っ赤に染まっており、所々にバラバラになった人間の肉片のようなものがこびり着いている。
まるで人体が爆発したような惨状の中、奥の部屋で薬物の売人と話をしていた男女は顔色ひとつ変えずに店を後にした。
彼らの手には入店時に持っていた筈のキャリーケースは無く、代わりにジュラルミン製A3サイズのアタッシュケースが携えられている。
「なかなか胴元に辿り着きませんねぇ…此処も結局、利用されている側の人間でしたし…」
男の方が店の扉を静かに閉め、踵を返しながら女の方に声を掛けた。
「……右頬に大きな傷跡がある革手袋の中年男。ソイツさえ突き止められれば話は早そうなんだけどね」
それは、京哉がザルツブルクでチンピラ達から聞き出した『楽団を陥れようとしている何者』かの情報である。
彼らはヨーロッパ支部所属の旋律師であり、ロジャーから直々に指令を受けて動いていた。
民間人に楽団という組織の存在を仄めかし、あらぬ噂を立てさせて捜査機関を動かそうという何者かについて調査せよ。そして、噂の吹聴に加担した人間は、一人の例外も無く始末して来る事。
「調査も何も……異端絡みの案件に決まってるでしょ。どれだけ楽団にちょっかい出せば気が済むのやら」
「まぁまぁ…決めつけも良くないですよ。それに、噂を断つには関わった人物の特定と抹消は必要不可欠な訳ですし」
ダブルスーツの懐から手帳を取り出した男は、開いたページに挟んでおいたボールペンを手に取って文字を書き込み始める。
「これで38人……ザルツブルクでは何人でしたっけ?」
几帳面に始末した人間の数を書き込んでいる様子の男を見て、女の方は呆れ返った表情になった。
「……6人でしょ。記録はする癖に、何人殺したのかは覚えてない訳?」
「いえ…ちょっと目を背けたかったと言うか……子供まで殺す必要あったのかなって思うと、あまり覚えていたくなかったので…」
男は眉を顰めながら手帳を閉じた。
京哉に絡んできたチンピラは全部で5人。6人目は子供……兄達に利用されていた男児であろう。
「こんな事でいちいち落ち込んでたらやってらんないよ。10歳で旋律師になって、政治家やらその子供やらを殺しまくってた奴だっているんだからさ」
「10歳……あぁ!」
虚げな眼差しで夜空を眺めていた女の話に、男はピンときた様子で小さく頷く。
楽団にメリットのある内容であること。そして、その規模や危険性に見合う報酬であること。これらの条件を満たせば、大凡どのような依頼でも受ける。受諾か否かの上層部の判断に、善悪の意識は介入しない。
しかし、実際に任務を遂行するのは[[rb:旋律師 > メロディスト]]であり、彼らも人の子である。絶対服従の命令下と言えど、抵抗する術のない弱者を手に掛けた時は心が痛む。
「せめて1秒でも早く発見してもらって、ちゃんと弔ってもらえると良いんですけどね…」
譫語のようにそう呟いた男の背中に拳をめり込ませた女は、そこに力を込めてど突いた。
「良い人ブんな。殺した奴が1秒でも早く惨たらしく死ぬ方が、そいつらも報われるだろうが」
楽団の旋律師は正義のヒーローでも何でもない。教育を受けている最中、幾度となく師匠から聞かされていた言葉を思い出し、男は自嘲気味に笑っていた。
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都内の至る場所から発見された、偽の楽譜。託斗が異端の目を欺く為に用意したと思われる冊子の総数は500近くにのぼる、というガブリエルの報告に白目を剥いていたのは現場を担当していたサラフィエルだった。
青紫色のドレッドヘアを揺らしながら高層ビル最上階の廊下を闊歩する彼女は怒りに震えており、ズカズカと大きな足音を立てながら暗室の両開きのドアを足で蹴った。
「どういう事だよ!ガブリエル!!」
登場するなり不躾に言い放ったサラフィエルの方を向いたのは、部屋の中央に鎮座していた部屋の主と、彼の元に集結していた主要な幹部メンバーの面々。
「どういう事も何も…アンタの方こそ、召集の連絡見てなかったの?」
召集だァ?と繰り返したサラフィエルは太々しい表情で周囲を見渡した。
「…ミゲルの野郎はどうした?」
彼女の問い掛けに、一歩前に出たアミティエルが口を開く。
「楽団の奴に怪我させられたんだ……俺がもっと早くミゲルと合流してれば…」
今にも泣き出しそうな表情のアミティエルの肩を叩いた椙浦の横で、ユリエルがパンパンと手を二回叩く。
「ドクタースギウラが適正な処置を施した。彼なら数日もすれば義足で走り幅跳びぐらいやってのけるだろうから、今我々が議論を最優先すべきは二つだよ」
顎を釈って続きを話せと促してきたユリエルに、視線の先にいたガブリエルは大層面倒くさそうな表情を見せながら立ち上がった。
「……そうねェ…」
彼の周囲に配置された背の高い燭台の蝋燭に火を灯しながら歩いて回るガブリエルは、サラフィエルの目の前でマッチを勢い良く擦りながら小さな燈を彼女に近付けた。
「まずは…ラファエルの事。ワシントン発の便に搭乗して12時間以上が経過しているわ。連絡の一つも寄越さないのはどういうことかしら」
マッチの火がゆっくりと蝋燭に移り、ぼんやりと淡く周囲を照らしていく。徐々に室内が明るくなる中、ガブリエルの方を向いていた彼らの表情は次第に曇っていった。
「……間違いなく何かあったな」
サラフィエルがそう返すと、使用済みのマッチの束を握りしめたガブリエルが小さく頷いた。
「楽団のお膝元だ。事前に空港で待ち伏せされたとしても何ら不思議じゃない」
揺らめく炎をじっと見つめていたユリエルが口を挟む。そして、椙浦の方に視線を移しながら話を続けた。
「……まぁ…ペネムの口から情報が漏れる事は無いにしろ……殺されたのなら、死体は回収する必要がありますよねェ…、ドクタースギウラ」
「はい。彼は実験体の中でも一番オリジナルに近い出来でしたから……。データを取るために回収は必須です」
仲間の生死が定かでは無い状況にも関わらず、ユリエルと椙浦の二人は既にペネムを死んだものとして回収の算段を立て始めていた。
「冷たいわねぇ~」と呆れた様子のガブリエルは彼らに背を向けて再び床のゴザの上に胡座を描いて座ると、二つ目の議題について話し始める。
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「そして、第21楽章の件だけど……残念ながら本物を特定する術は今の所無いわ。全てのパチモンにタクト・ウガミが呪詛でもかけてるらしくってね」
目の前の燭台に橙色の光が灯ると、サラフィエルは眉間に皺を寄せながら首を傾げる。
「どうすんだよ。日本の政府には、第21楽章が見つかったって報告しちまったんだろ?やっぱり間違いでしたーで、話は済むのか?次の報告会は来週だろ?」
日本国内の音楽家を徹底排除する為に、政府は異端の使徒達と協力関係を結んだ。しかし、排除すべき音楽家達の代表例である楽団所属の人間を組織へ引き入れようとする動きを見せていた異端に対して、現首相の都野崎は不信感を募らせていた。
そんな取引相手を説き伏せる為にミゲルが持ち出したのが、選ばれた旋律師だけが演奏を許された超絶技巧と異能に関する事柄だ。
超絶技巧を有する旋律師を取り込んで、戦力増強を図る目的がある…というのが異端側の建前であった。
もちろん、彼らには旋律師を純粋に仲間にしたいという意思は無く、ミゲルやガブリエルの個人的興味、趣味によるところが大きい。そして、ある目的の為にも…。
その場にいる全員のじっとりとした視線が集中したのを感じたガブリエルは、右手を頬に置きながら腰をくねらせる。
「あらやだ…私達のせい?」
特に悪びれる様子の無いガブリエルの挙動に、サラフィエルは頭を抱えた。
「どう考えてもミゲルとアンタのせいだろ……。ミスタートノザキへの言い訳は二人で考えておけよな」
腕組みをして外方を向いてしまったサラフィエルに代わり、落ち着きを取り戻したアミティエルが尋ねる。
「じゃあ、第21楽章はもう諦めるってこと?偽物がゴロゴロ仕掛けられてて、ガブリエルでもお手上げって言うならもう探し様が無いよね?まさかもう燃えちゃってたりして…」
もっともな疑問をぶつけてきた彼に向けて人差し指を立てたガブリエルは、チッチッと言いながらそれを左右に振る。
「私の読みじゃあ……楽団側は既に何か情報を掴んでるんじゃないかしら?でなきゃ、私達の捜索の手を阻むためのトラップを都内だけにあんなに集中させる訳が無いのよ」
トラップという単語に、先日掴まされた偽物の事を思い出したサラフィエルの怒りがまたぶり返してきた様子で、彼女は頭を抱えて天井に向かって吠えている。イライラを払拭するかのように、ドレッドヘアを両手でワシャワシャと勢い良く掻き上げた。
「折角タクト・ウガミが日本に潜伏してんだ!アイツ取っ捕まえて全部吐かせちまおうぜ!一番手っ取り早いだろ!」
フンッと鼻を鳴らしたサラフィエルが視線を感じた方向に顔を向けると、先程まで椙浦と話し込んでいたユリエルの顔が至近距離に迫っている。
不気味な白い半面に驚いたサラフィエルは大きく仰け反りながら数歩後退した。
「な…何だよ!?」
「タクト・ウガミに直接話を聞けば良いとは…珍しく名案を出すじゃないか、サラフィエル」
和かに笑ったユリエルは両腕を大きく広げながら軽い足取りでガブリエルの前まで歩み寄った。
「一つ、任せてくれないか?ガブリエル」
「……本人から聞き出すって?どうやってあの男を引っ張ってくんのよ?」
ガブリエルの問いにどう答えるのかと、周囲を囲う面々も固唾を飲んで見守る。
「引っ張ってくる必要なんて無い。あちらから出向かざるを得ない状況を作ってやるのさ……なに、簡単な事だよ…」
ケタケタと不気味に笑いながら、手を叩いて一人愉快そうにしているユリエルの様子を見て、サラフィエルとアミティエルが不思議そうに顔を見合わせていた。
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ザルツブルクからウィーンまでは鉄道で3時間程度。朝一番にウォルターの楽器店でフルートを受け取った京哉であったが、楽団本部に戻る頃には正午を過ぎていた。
ヨーロッパ支部長という立場のミーアが直々に命を受けて外に赴く。それは、緊急性の高い事態が発生した事を意味していた。
現に本部では厳戒態勢が敷かれており、普段なら開放されている正面玄関からの進入は出来ないのだと、扉の真横に立つ二人の警備員から伝えられた。
「セキュリティカード持ってる社員だったら、裏口から入れる様になってるよ。君、旋律師でしょ?」
どうやら警備員の一人は、京哉が日本に発つ前から彼の顔を見知っていたようで、一般従業員には出入りを許されない特別な玄関から入る様にと促してくれた。
自分の足音が反響する程シンと静まり返っているオフィス内。ミーアに預けていたシェリーが何処かにいるはずだと、京哉はレッスン室の並ぶ廊下を歩きながら使用中の表示を探していた。
すると、一番奥の扉に掛けられた木製の札だけが使用中になっている。完全に遮音されている為、耳を欹てても中の様子は窺い知れないが、社内の状況を鑑みるに旋律師が練習をしているとは考えられない。
金属製の扉をコンコンと控えめにノックして、中からの反応を待つ。
「………は、はい…」
恐る恐る、といった様子で5センチ程扉を開けたのは椿であった。京哉の姿を見るなり、何やら安心した表情で扉を全開にする。
「良かった……言葉わからないから、何で私がこの部屋にいるか説明できない所だった…」
目深に被っていたパーカーのフードを外し、静電気で左右に跳ねた髪を手櫛で整えならが答えた彼女は、部屋には自分一人しかいないと言う。
「シェリーは?」
「あの子なら…ほんの少し前にミーアさんが連れて行った」
椿の回答を聞いた京哉は、一抹の不安を感じていた。
異端の人間が『アンプ』と呼ぶシェスカの遺作。父親によって造り変えられたシェリーの身体には、楽団上層部もその真相を掴めていない秘密が隠されている事は間違いなかった。
今回の渡航で彼女に対して幾つかの検証をしたいと言われた時、京哉は従わざるを得なかった。それは、打診ではなく命令であるからだ。
シェリーが楽団に利益をもたらす存在であるならば、上層部は京哉から彼女を引き離してオーストリアに留めるだろう。そして、どんな形で利用されるかはわからないが、京哉には一つだけわかる事がある。マトモな扱いをされる訳がないという事だ。
シェリーを本社に預けている間に、楽団が彼女の秘密を暴いてしまったのだとしたら…。支部長であるミーアが出動せざるを得ない事態の根源が彼女にあるのだとしたら…。悪い予感ばかりが募っていく。
「何処に行ったかなんて……聞いてないよな?」
落ち着かない様子の京哉の問いに、椿も難しい表情を見せる。そして、静かに首を横に振った。
「せめて…ミーアさんが何を言ってたのか理解できれば良かったんだけど…」
でも、と続けた椿から得たヒントは京哉を社屋の地下に向かわせるには十分なものであった。
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両腕と左脚を失った子供が、分厚いアクリルでできた遮音壁に囲われた金属製の台の上に拘束されていた。綺麗に切断された断面には適正な処置が為された跡が見える。
目隠しと猿轡をされ、表情すら伺えないペネムの周囲には、完全遮音仕様のイヤーモニターを両耳に装着したミーアと彼女の部下数名、そしてシェリーの姿があった。
楽団の地下に存在する、何も無い部屋。コンクリート打ちっぱなしの空間には窓すら存在せず、一度扉を閉ざせばどんなに悲鳴を上げようとも外に音が漏れ出ることは無い。
そういう仕様でなければできない事をやる部屋なのだ。
「……辛ければ直視しなくて良い。私の後ろにいなさい」
じっとペネムの方を見据えるミーアの声は骨伝導マイクが拾い上げ、イヤーモニター越しにシェリーの耳に届いていた。痛々しい少年の姿に目を細めていたシェリーの様子を気にかけたのだろう。しかし、彼女はブンブンと首を横に振る。
「歌声で莫大な音エネルギーを操る子供を捉えた」
……そうミーアから聞かされたシェリーは、自ら彼に会うことを望んでこの部屋まで着いてきた。理由は一つ。『何故、その身体になったのか』を聞きたかったからである。
「大丈夫です……ありがとうございます」
グッと眉間にシワを寄せながら、シェリーは真っ直ぐにペネムの方を見つめていた。
彼がシェリーを模した存在であるなら、身体の中を暴く必要がある。ミーア達は医療班に連絡を入れ、移動式のレントゲン装置の到着を待っていた。
「遅いですね……アイツら何やってるんでしょうか」
苛立った様子のミーアの部下の一人が腕時計に視線を落としながら言う。
「彼らも忙しいんだろう。こちらは飛び込みで依頼をしてるんだ。大人しく待ちなさい」
冷静な口調でミーアに窘められた彼がおずおずと頭を下げて後退したその時、イヤーモニターからは二人の男が誰かと揉める声を受信し始めた。
『だーかーら、許可が無いと入れないんですよ!しつこいですね!』
『この人このまま付いてきちゃいますよ!支部長に連絡入れた方が良いですって!』
何やら耳元が騒がしくなり、室内にいる人間はお互いの表情をキョロキョロと見合わせる。
踵を返して防音扉の方に向かったミーアは、そっと扉を押し開けて外の様子を伺った。
「一体何があった?」
素早く廊下に出て扉を閉したミーアの目前には、キャスター付きの移動式レントゲン装置を運んできた医療班の二人と、彼らに突っかかっている京哉の姿があった。イヤーモニターを片方外したミーアは彼に話し掛ける。
「キョウヤ、戻ったんだな」
無事で何よりだと続けようとしたミーアの正面に医療班の男達を押し退けて立った京哉が、彼にしては珍しく声を荒げながら迫った。
「支部長!シェリーに何をするつもりなんですか!?コイツら何聞いても答えられないって言うし!」
「キョ…キョウヤ、落ち着け。別に私達は彼女に何も…」
「もしかして、解剖ですか!?それともこの機械使って……」
「解剖!?いやいや、何を勘違いしてるか知らないが…」
再び開いた扉の向こう側からシェリーが飛び出してきたかと思えば、ミーアに必死の形相で迫る京哉の背中に彼女の綺麗な飛び膝蹴りが決まる。
「変な想像すんな!キモいんだよ!」
顔を真っ赤にして仁王立ちになったシェリーは、腰を摩りながら振り返った京哉を睨み付けながら息を荒げていた。
「あれ!?何で?」
てっきり、上層部の人間に良からぬ事をされていると思い込んでいた京哉は、キョトンとした表情でシェリーの怒り狂う様子に首を傾げている。
「……待っていなさい。今、イヤーモニターを追加で持ってきてもらうから」
呆れた表情でPHSに手を伸ばしたミーアの方に視線を移しながら、京哉は更に首を傾げる角度を大きくしていった。
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せっせと機械のセッティングをする医療班の男達を眺めながら、ミーアはイヤーモニターを装着している京哉に尋ねた。
「それにしても、よくこの部屋だとわかったな。大事を取って多くの社員を捌けさせてもらっていたから、誰かに教えられた訳ではないのだろう?」
「あー……レッスン室に残ってた椿が。アイツ、鼻が効くみたいで支部長から血の匂いがしたって言ってて…」
京哉の回答を聞くや否や、ミーアはすぐさま自身の服の匂いを嗅ぎ始めた。
返り血を大量に浴びた燕尾服なら、楽団本社に戻ってすぐ着替えた筈なのに…と。
ウィーン国際空港でミーアが捕らえた異端の使徒。いくら尋問にかけても一切口を割らないペネムから彼自身の情報を得る為にシェリーの協力を得てはどうかと提案したのはロジャーであった。
ペネムをX線で調べ、内臓がハンネス機関に置き換えられているならば、同じ身体を持つシェリーの質問には耳を貸すかもしれない…と。
もし、それでも黙秘を貫くというのであれば、想像に耐え難い方法を使用する他無いとミーアはシェリーに伝えていた。
「…始めてくれ」
ミーアの合図で医療班の二人がペネムの身体に向けて50センチ四方の照射装置を構える。キャスター付きの本体画面に徐々に映し出されていった彼の体内構造に、全員が思わず息を呑む。
想定通り、声帯から下の臓器は全てが取り攫われ、胸の皮膚に残る円を描いたような傷跡の下には拳大のハンネス機関が存在していた。
そして、本来声帯があるべき位置には白い筒状の物体が埋め込まれている。
「…私と同じだ……」
ボソリと呟いたシェリーは、不安げな表情で京哉の顔を見上げた。彼も神妙な面持ちでじっと画面を見つめている。
「シェリアーナ…それでは、頼めるかい?対象が君を攻撃しようとすれば、私達がすぐに対応する」
構えられたミーアのフルートがキラリと輝くサーベルに変形し、周囲の部下達も身構えた。
ゴクリと息を呑んで一歩前に踏み出したシェリーの隣を行く旋律師の一人は、遮音壁の一部を開けて手を突っ込むと、ペネムの口に嵌めていた猿轡と目隠しを外す。
「……アナタと話がしたい。ドイツ語はわかる?アタシは、シェリアーナ・シェスカ。アナタ達はアタシの事を『アンプ』って呼んでいるんでしょ?」
頭上のスピーカーから突然耳に入ってきたシェリアーナの声に、ペネムは唯一自由に動く首だけで彼女の方を向いた。
人の精神に異常を来たす歌声を持つペネムがいきなり歌い出せば、その場にいる全員の命が危険に晒される。遮音仕様のイヤーモニターからは喉元に装着した骨伝導マイクが拾ったお互いの声だけが聞こえるようになっていた。
ペネムが発した声は防音壁内に仕込まれた音声入力装置が文字起こししたデータを、デジタル音声ソフトが読み上げる仕組みで彼らに伝達されるようになっており、万が一ペネムが歌い出したとしても直接的な影響は無いように設計されていた。
「シェスカ……君がオリジナルなんだね」
楽団に捕えられてから彼が初めて声を発した様子に、ミーアは引き続き話し続けるようにとシェリーに目で促した。
「アナタのような子供が、何故異端にいるの?」
「先生が拾ってくれたからだよ。パパもママも音楽家だったから、警察に捕まっちゃったんだ。僕、先生がいなかったらお腹空き過ぎて死んじゃう所だったよ」
ペネムが先生と呼ぶ人物が、彼の身体を造り変えたのだろうか。聞きたいことは山程あるが、シェリーは逸る気持ちを抑えながら、事前にミーアと打ち合わせた通りに質問をしていく。
「……アナタは歌声で人を殺せるの?」
その質問には、ペネムは少し考え込む様子を見せた。
「僕の歌のせいじゃないよ。パパのせいなんだ」
「パパ……警察に捕まったんじゃないの?」
次々に疑問が浮かぶが、ペネムは年相応の回答しか寄越さない。
「捕まったよ。でも、パパのせいだって先生が言ったんだ。僕は悪くないからって」
「一体どういう事……?」
どうしたものかと困り顔で視線を送ってきたシェリーの様子に、ミーアは京哉と顔を見合わせた。
「参ったな…彼は自身の身体の仕組みについて理解していないのかもしれない」
シェリーとペネムの違い。それは、歌声が莫大な音エネルギーを生み出すか否かであった。X線画像で判明した通り、シェリーを模して造られたペネムの体内は彼女と全く同じ構成をしていた。本来心臓のある位置に据えられたハンネス機関。そして……
「……オルゴールだ」
京哉の呟いた声はイヤーモニター越しにシェリーにも届いていた。ハッと何かに気が付いた彼女は、再びペネムに疑問を投げ掛ける。
「……パパとママ、この世にはいないんじゃないの?アナタの身体の中にはどちらかの骨で……「パパとママは生きてるよ!」
シェリーを遮って叫んだペネム。彼女の方に向けられた表情は、怒りとも悲しみとも取れる感情で歪んでいる。
「先生は、パパが僕の為に作ったお守りをくれたんだ。大切なものだから、ちゃんと仕舞っておこうって言われて……」
「そっか…わかったよ。ごめん」
次第に早口になっていくペネムの精神状態が崩壊し、会話が続けられなくなっては困る。シェリーは咄嗟に彼の言葉を制止した。
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「……パパがくれたお守りって、何だったのかわかる?先生は教えてくれた?」
落ち着きを取り戻した様子のペネムは、フゥッと息を吐きながら天井の方を真っ直ぐに見つめていた。お守りかぁ、と呟きながら目を細めている。
「音が鳴る小さな箱だよ」
回答を聞いたシェリーは、やはり体の中に埋め込まれたオルゴールが彼の異能の鍵になっているのだと理解した。
「先生が、大事なものだから……僕の体の中にしまっておこうって言ったんだ。いつでも聴けるから大丈夫だって言ってて…」
「体の中にあるのに……どうやって聴いてるの?やり方があるんでしょ?」
自身の躰の使い方がわかれば、今まで抱えてきた鬱蒼とした疑問が解決されるかもしれない。アクリルの防音壁に駆け寄ったシェリーは、緊張した面持ちでペネムを見つめる。
回答を心待ちにするシェリーの期待に満ちた眼差しに、ペネムはクスクスと笑い始めた。
「オリジナルなのにわからないんだよね。先生から聞かされてたよ。僕の周りの大人は君のお父さんの書いた設計図を読んでちゃんと理解してたのに……君の近くにいる人は、本当に君の事をお飾りだって思ってるんだね」
何のために造り変えられたのかわからない。この身体の使い方も教えてくれない。
自分の父親は一体何をしたかったのだろうか。本当に唯、金持ちのコレクションにする為に娘にメスを入れたと言うのだろうか。
「……わからないよ。わからないから、アナタに教えてもらいたい」
静かな口調で返したシェリーは、京哉達の方を指差しながら続けた。
「アナタが此処で素直に答えなければ、楽団の人達がアナタの身体に聞くだけ。でも、アタシはアナタにこれ以上痛い思いをして欲しくない」
脚を片方残したのは、コレからの尋問の際に使う為だとミーアはシェリーに伝えていた。彼の口から全てを語らせるまでは、自ら命を断つ事すら許さないのだという。
自分を模した存在を生み出す為、犠牲になった人間の一人。シェリーはペネムを哀れんでいた。彼はきっと成功した数少ない例なのだろう。臓器をまるまる取り出してハンネス機関を埋め込むという被人道的な行為の最中で、どれだけ多くの実験体が命を落としたのかわからない。
実験体になってしまったせいで、彼は手足を失い、今楽団によって拘束されている。
全ての元凶は自分である。シェリーの言わんとしている事がわかってしまったミーアと京哉は、固唾を飲んで二人のやり取りを見守っていた。
「教えて……お願い」
更に防音壁に近付いて掌でその表面に触れたシェリーは、悲痛な面持ちでペネムに懇願する。
オリジナルは唯のお飾りとして扱われている。ラファエルと共に行動していた彼は、異端の幹部達からそう聞かされていた。
彼女自身は『アンプ』としての異能を得る方法を知らず、周囲も扱い方を理解していない、と。
ペネムはその事に優越感すらを覚えていた。自分はモルモットなんかじゃない。オリジナルですら出来ない事ができてしまうのだと。
それは素晴らしい事で、ラファエルや周囲の人間が褒めてくれる凄い事なのだと。
そう思う事で、人々を殺める行為を肯定してきたのだ。
肯定しなければ、その小さな身体では償い切れない程の罪を犯してしまった事に対して心が保てなかったから。
「……一つだけ聞いて良い?」
無表情のまま尋ねてきたペネムは、シェリーがコクリと首を縦に振る様子を見て続ける。
「君は嫌じゃないの?利用されるんだよ…そこにいる人達に……。僕みたいに、こうやって壊れるまで…ずっと……」
じわじわと彼の瞳には涙が溢れ、金属製の台の上に流れ落ちている。
孤児として拾われ、恩を感じていた人間に人体実験を施され、殺人の道具として利用され続けたペネムの境遇を知りながらも、楽団は彼に制裁を下さねばならなかった。危険な異能を有し、多くの仲間を惨殺した処刑対象であるからだ。
子供心に、ペネムは自分がこの世から居なくなるのだと理解していた。
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『アンプ』とは、アンプリファイア…増幅するものという意味である。
オルバス・シェスカの設計図によると、体内に埋め込まれたオルゴールにはハンネス機関のある部位を動かす為に存在しているのだという。
シェリーやペネムの体内に埋め込まれているハンネス機関には、通常の発電や蓄電に使用するものには付いていないユニットが付属されていた。それが、オルゴールに繋がる『イコライザ』である。
音の周波数を補正するイコライザを通す事で、不安定で複雑な周波数をもつ人の歌声であっても大きな音エネルギーを生み出す事ができる綺麗な合成波に修正されるのだ。
そして、このイコライザを駆動する為の鍵となるオルゴール部分には仕掛けが施されていた。オルゴールが奏でる音楽はシリンダーに刻まれたピンの配置によって決まる。
体内に埋め込むという構造上、18弁15秒の曲に限られるが、このシリンダーに刻まれた曲を正確な音程で歌う事によってイコライザが駆動し始めるのだ。
ペネムの場合、イコライザによってハンネス機関で増幅された音エネルギーの全てを対象にぶつける事で、耳から脳を揺らし内部を破壊していた。
人の歌声ですら凶器に変えてしまうオルバスの『アンプ』は、まさに世界各国の政府が警戒し禁止するに至った音の武力化の最たる物であろう。
「先生が体の中に隠す前に、僕はオルゴールの曲を聴いたんだ。君もそれがわかれば……」
歌声で人を殺せるようになる。続きは声に出さなかったが、ペネムの言わんとする事をシェリーは悟っていた。
「……オルゴールが何の曲を奏でるか……」
ゼンマイではなく、シリンダーに刻まれた曲を歌う事によってこの呪われた躰はその秘められた能力を発揮するのだ。
しかし、シェリーの場合既に体内に埋め込まれてしまっている為、オルバスが妻の骨で何を刻んだのかを知る術は一つだけであった。
「オルバス・シェスカの設計図を入手すれば……情報を掴める可能性はあるな。彼を造り変えた先生とやらに接触する必要がありそうだ」
ミーアは京哉の方を向きながら提案した。
支部長である彼女が上層部に掛け合い、楽団本体の意思によって異端を攻撃する命令が下れば、いよいよ直接対決という事になる。
これまで散々被害を被ってきた楽団であったが、異端を叩く理由がオルバス・シェスカの設計図を手に入れる為という事になれば、その先に得られるシェリーの能力は楽団上層部が管理する事になるだろう。
シェリーの身柄は当然本社預かりとなり、京哉の元からは離れざるを得ない。それは彼女が望む、良縁屋でのごく普通の生活とは掛け離れている。
一向に返事を寄越さず黙ったままの京哉の横顔からは、そんな近い将来を想像して首を縦に振る事が出来ない彼の複雑な心境が滲み出ていた。
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防音扉から地下のヒンヤリとした石畳の廊下に出た京哉とシェリー。ミーアから先に椿の元に戻るように指示を受けていた。
あの部屋に残った彼女達がこれからペネムに何をするのか、そんな事は想像に容易い。
「……ミーアさんって……怖い人?」
足元を見つめながら、シェリーは京哉に小声で尋ねる。
「楽団なんてあんな人ばっかだろ。ヤバい会社なんだから…」
そのヤバい会社とやらに所属している自分はどうなのだと突っ込んでやりたかったが、ペネムとの会話でどっと疲れてしまったシェリーはそんな気力すら残っていなかった。
そこからはお互いに無言のまま、椿の待つレッスン室へと向かう。ふと、一歩前を歩く京哉の後ろ姿に視線をやったシェリーは、先日の出来事を思い出す。
『…貴女、彼の事好きなんだ』
一人でバタバタと手足を暴れさせながら身悶えているシェリーの方を振り返った京哉は訝しげな表情を見せた。
「…オーストリアの水、体に合わなかった?おかしくなったみたいだけど…」
「お、おおおかしくなってなんか……!っていうか、あの女と何したの!?何かしたからアイツ……」
両手で自分のツインテールを掴んでグイグイと引っ張りながら早口でそう尋ねるシェリーの顔は真っ赤だった。
「ほ、ホラ……アイツの……コレ!」
コレ、と言いながらシェリーは自身の胸の前で何度も上から下へと弧を描く。何事かと目を凝らして彼女の言わんとする事を考えていた京哉。
「アイツの…コレ……?あー、乳がデカいと?」
何のオブラートにも包まれていない言葉で言い当てられると、自分から振った話にも関わらずシェリーはすかさず京哉の頬をパシンと平手打ちした。
「ってーな!何すんだよ絶壁!」
「へ…変態だ!!やっぱり歯磨いてるとか言いながら見てたんだ!!アタシの裸!!」
ますます顔を真っ赤にしながら肩を抱くシェリーの様子に苛立ちを感じた京哉は、唇を尖らせながら大人気なく言い返す。
「覗いてねーしー!お前が絶壁だなんて服の上からでも見りゃわかんだろ!被害妄想お疲れ様でしたー!」
「あーっ!他の女の人の事も見てんだ、そうやって!チサキに言いつけてやる!」
ギャアギャアと騒がしく言い合いながら椿の待つレッスン室の扉を開け放った京哉。ガルガルといつまでも噛み付いてくるシェリーの頭を押さえつけながら室内に入ると、窓際に立っていた椿が外に向かって彼女のライフル銃を構えている様子に慌てて駆け寄って行った。
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「ちょちょちょ!やめて!?何してんのアンタ!?」
ジッとスコープを覗き込んでいる椿は、銃身を京哉に掴まれてズルズルと部屋の中央まで連れて来られる。
「危ないでしょ、そんな物騒なモン取り出して!」
しまいなさい!と怒られると、彼女は仕方なくといった表情でガンケースにライフルを納めた。
「……怪しい男がいた」
「怪しい……?どんな奴よ?」
眉を顰めながら尋ねる京哉に、椿は自分の右頬を指差しながら答える。
「此処に大きな傷跡があるオジサン。ジロジロとこの建物を見ていた」
右頬の大きな傷跡。それは、京哉が今朝方ロジャーに報告を入れた楽団に不利益を齎す噂を流す人物の特徴そのものであった。
[37] Hymn 完
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「ギル…ド……?どこの組合だい?」
「ウィーンのどっかの企業が、裏では自分達を楽団って名乗りながら人攫いをしてるらしいよ」
「俺は薬物の輸入販売の元締めやってるマフィアだって聞いたぜ」
布商人の噴水が有名なトゥーフラウベン通り。
等間隔に並んだ街灯が宵闇の中でもその歴史的建造物の数々を美しく照らし出している。
例に漏れず観光客の多いこの地域でも、その悪い噂はジワリジワリと人々の間に浸透しているようであった。
通りを一本入った小道を進んでいくと、暗がりの路地にぼんやりと浮かぶバーの看板が見えてくる。勢いよくそのドアベルを鳴らしたのは、一組の男女であった。
カッチリとした紺色のダブルスーツに茶色いクラウドマッシュのオールバックでビジネスマンのような印象の長身の男。そして、女の方はボルドーで細身のロングドレスを纏っていた。観光客なのだろうか、それぞれ小ぶりなキャリーケースを手に持っている。
カウンターの一番奥に着いた二人を追って、店員が水の入ったグラスを置きながら尋ねる。
「初めてのお客さんですね。誰かに勧められました?」
彼が腰に巻いたエプロンのポケットから、手のひらサイズのバインダーを取り出す様子を眺めていた女の方が口を開いた。
「……ええ。緑色のベレー帽を被った花屋のお爺さんに」
彼女の回答を聞いた店員は、ボールペンを持った右手をピタリと止める。そして、手に持った道具の全てをすぐ様ポケットにしまいながら、ついて来るようにと促してきた。
立ち入り禁止と書かれた扉の奥に進み、10畳程のスペースに複数のショーケースが並べられた空間に案内された男女。ライトアップされたガラスの向こう側には、色鮮やかな錠剤が詰められた袋がディスプレイされている。
コの字型に配置されたショーケースに囲まれた場所には、暗い室内だと言うのにサングラスを掛けたニット帽の男が鎮座しており、二人が入室してきたタイミングで顔を上げて立ち上がった。
「100ユーロからやってるよ。どんくらい欲しいんだ?」
咥えていた煙草に火をつけながら尋ねてきた男は、ショーケースの中から錠剤が入った袋を取り出して二人の前に差し出す。
顔を見合わせた男女は、互いに小さく頷き合った。そして、男の方が口を開く。
「……済まないが、こういうモノに興味を持ったのも初めてなんだ。詳しく聞かせてくれるか?」
最後にニコッと笑った様子に、ニット帽の男は面倒臭そうな様子で元々掛けていた椅子に座り直すと、煙草の煙を彼の方に吹きかけながら答えてやる。
「最近アメリカで流行ってるROCKってドラッグだ。元々は医療用の鎮痛成分だな。体に悪ィ事なんてねぇよ」
体に悪くない薬物など存在しない。売人の決まり文句に苦笑いを浮かべた女の方が小さく手を挙げながら尋ねる。
「売り始めたのは最近?上はとても雰囲気の良い感じのバーだったからギャップに驚いちゃって」
「隠れ蓑ってやつさ。仕入れ先は毎回変わるが、今回はかなり羽振の良いマフィアでな……」
…………………………………………………………………………………
シンと静まり返ったバーの店内。床や天井、壁は一面真っ赤に染まっており、所々にバラバラになった人間の肉片のようなものがこびり着いている。
まるで人体が爆発したような惨状の中、奥の部屋で薬物の売人と話をしていた男女は顔色ひとつ変えずに店を後にした。
彼らの手には入店時に持っていた筈のキャリーケースは無く、代わりにジュラルミン製A3サイズのアタッシュケースが携えられている。
「なかなか胴元に辿り着きませんねぇ…此処も結局、利用されている側の人間でしたし…」
男の方が店の扉を静かに閉め、踵を返しながら女の方に声を掛けた。
「……右頬に大きな傷跡がある革手袋の中年男。ソイツさえ突き止められれば話は早そうなんだけどね」
それは、京哉がザルツブルクでチンピラ達から聞き出した『楽団を陥れようとしている何者』かの情報である。
彼らはヨーロッパ支部所属の旋律師であり、ロジャーから直々に指令を受けて動いていた。
民間人に楽団という組織の存在を仄めかし、あらぬ噂を立てさせて捜査機関を動かそうという何者かについて調査せよ。そして、噂の吹聴に加担した人間は、一人の例外も無く始末して来る事。
「調査も何も……異端絡みの案件に決まってるでしょ。どれだけ楽団にちょっかい出せば気が済むのやら」
「まぁまぁ…決めつけも良くないですよ。それに、噂を断つには関わった人物の特定と抹消は必要不可欠な訳ですし」
ダブルスーツの懐から手帳を取り出した男は、開いたページに挟んでおいたボールペンを手に取って文字を書き込み始める。
「これで38人……ザルツブルクでは何人でしたっけ?」
几帳面に始末した人間の数を書き込んでいる様子の男を見て、女の方は呆れ返った表情になった。
「……6人でしょ。記録はする癖に、何人殺したのかは覚えてない訳?」
「いえ…ちょっと目を背けたかったと言うか……子供まで殺す必要あったのかなって思うと、あまり覚えていたくなかったので…」
男は眉を顰めながら手帳を閉じた。
京哉に絡んできたチンピラは全部で5人。6人目は子供……兄達に利用されていた男児であろう。
「こんな事でいちいち落ち込んでたらやってらんないよ。10歳で旋律師になって、政治家やらその子供やらを殺しまくってた奴だっているんだからさ」
「10歳……あぁ!」
虚げな眼差しで夜空を眺めていた女の話に、男はピンときた様子で小さく頷く。
楽団にメリットのある内容であること。そして、その規模や危険性に見合う報酬であること。これらの条件を満たせば、大凡どのような依頼でも受ける。受諾か否かの上層部の判断に、善悪の意識は介入しない。
しかし、実際に任務を遂行するのは[[rb:旋律師 > メロディスト]]であり、彼らも人の子である。絶対服従の命令下と言えど、抵抗する術のない弱者を手に掛けた時は心が痛む。
「せめて1秒でも早く発見してもらって、ちゃんと弔ってもらえると良いんですけどね…」
譫語のようにそう呟いた男の背中に拳をめり込ませた女は、そこに力を込めてど突いた。
「良い人ブんな。殺した奴が1秒でも早く惨たらしく死ぬ方が、そいつらも報われるだろうが」
楽団の旋律師は正義のヒーローでも何でもない。教育を受けている最中、幾度となく師匠から聞かされていた言葉を思い出し、男は自嘲気味に笑っていた。
…………………………………………………………………………………
都内の至る場所から発見された、偽の楽譜。託斗が異端の目を欺く為に用意したと思われる冊子の総数は500近くにのぼる、というガブリエルの報告に白目を剥いていたのは現場を担当していたサラフィエルだった。
青紫色のドレッドヘアを揺らしながら高層ビル最上階の廊下を闊歩する彼女は怒りに震えており、ズカズカと大きな足音を立てながら暗室の両開きのドアを足で蹴った。
「どういう事だよ!ガブリエル!!」
登場するなり不躾に言い放ったサラフィエルの方を向いたのは、部屋の中央に鎮座していた部屋の主と、彼の元に集結していた主要な幹部メンバーの面々。
「どういう事も何も…アンタの方こそ、召集の連絡見てなかったの?」
召集だァ?と繰り返したサラフィエルは太々しい表情で周囲を見渡した。
「…ミゲルの野郎はどうした?」
彼女の問い掛けに、一歩前に出たアミティエルが口を開く。
「楽団の奴に怪我させられたんだ……俺がもっと早くミゲルと合流してれば…」
今にも泣き出しそうな表情のアミティエルの肩を叩いた椙浦の横で、ユリエルがパンパンと手を二回叩く。
「ドクタースギウラが適正な処置を施した。彼なら数日もすれば義足で走り幅跳びぐらいやってのけるだろうから、今我々が議論を最優先すべきは二つだよ」
顎を釈って続きを話せと促してきたユリエルに、視線の先にいたガブリエルは大層面倒くさそうな表情を見せながら立ち上がった。
「……そうねェ…」
彼の周囲に配置された背の高い燭台の蝋燭に火を灯しながら歩いて回るガブリエルは、サラフィエルの目の前でマッチを勢い良く擦りながら小さな燈を彼女に近付けた。
「まずは…ラファエルの事。ワシントン発の便に搭乗して12時間以上が経過しているわ。連絡の一つも寄越さないのはどういうことかしら」
マッチの火がゆっくりと蝋燭に移り、ぼんやりと淡く周囲を照らしていく。徐々に室内が明るくなる中、ガブリエルの方を向いていた彼らの表情は次第に曇っていった。
「……間違いなく何かあったな」
サラフィエルがそう返すと、使用済みのマッチの束を握りしめたガブリエルが小さく頷いた。
「楽団のお膝元だ。事前に空港で待ち伏せされたとしても何ら不思議じゃない」
揺らめく炎をじっと見つめていたユリエルが口を挟む。そして、椙浦の方に視線を移しながら話を続けた。
「……まぁ…ペネムの口から情報が漏れる事は無いにしろ……殺されたのなら、死体は回収する必要がありますよねェ…、ドクタースギウラ」
「はい。彼は実験体の中でも一番オリジナルに近い出来でしたから……。データを取るために回収は必須です」
仲間の生死が定かでは無い状況にも関わらず、ユリエルと椙浦の二人は既にペネムを死んだものとして回収の算段を立て始めていた。
「冷たいわねぇ~」と呆れた様子のガブリエルは彼らに背を向けて再び床のゴザの上に胡座を描いて座ると、二つ目の議題について話し始める。
…………………………………………………………………………………
「そして、第21楽章の件だけど……残念ながら本物を特定する術は今の所無いわ。全てのパチモンにタクト・ウガミが呪詛でもかけてるらしくってね」
目の前の燭台に橙色の光が灯ると、サラフィエルは眉間に皺を寄せながら首を傾げる。
「どうすんだよ。日本の政府には、第21楽章が見つかったって報告しちまったんだろ?やっぱり間違いでしたーで、話は済むのか?次の報告会は来週だろ?」
日本国内の音楽家を徹底排除する為に、政府は異端の使徒達と協力関係を結んだ。しかし、排除すべき音楽家達の代表例である楽団所属の人間を組織へ引き入れようとする動きを見せていた異端に対して、現首相の都野崎は不信感を募らせていた。
そんな取引相手を説き伏せる為にミゲルが持ち出したのが、選ばれた旋律師だけが演奏を許された超絶技巧と異能に関する事柄だ。
超絶技巧を有する旋律師を取り込んで、戦力増強を図る目的がある…というのが異端側の建前であった。
もちろん、彼らには旋律師を純粋に仲間にしたいという意思は無く、ミゲルやガブリエルの個人的興味、趣味によるところが大きい。そして、ある目的の為にも…。
その場にいる全員のじっとりとした視線が集中したのを感じたガブリエルは、右手を頬に置きながら腰をくねらせる。
「あらやだ…私達のせい?」
特に悪びれる様子の無いガブリエルの挙動に、サラフィエルは頭を抱えた。
「どう考えてもミゲルとアンタのせいだろ……。ミスタートノザキへの言い訳は二人で考えておけよな」
腕組みをして外方を向いてしまったサラフィエルに代わり、落ち着きを取り戻したアミティエルが尋ねる。
「じゃあ、第21楽章はもう諦めるってこと?偽物がゴロゴロ仕掛けられてて、ガブリエルでもお手上げって言うならもう探し様が無いよね?まさかもう燃えちゃってたりして…」
もっともな疑問をぶつけてきた彼に向けて人差し指を立てたガブリエルは、チッチッと言いながらそれを左右に振る。
「私の読みじゃあ……楽団側は既に何か情報を掴んでるんじゃないかしら?でなきゃ、私達の捜索の手を阻むためのトラップを都内だけにあんなに集中させる訳が無いのよ」
トラップという単語に、先日掴まされた偽物の事を思い出したサラフィエルの怒りがまたぶり返してきた様子で、彼女は頭を抱えて天井に向かって吠えている。イライラを払拭するかのように、ドレッドヘアを両手でワシャワシャと勢い良く掻き上げた。
「折角タクト・ウガミが日本に潜伏してんだ!アイツ取っ捕まえて全部吐かせちまおうぜ!一番手っ取り早いだろ!」
フンッと鼻を鳴らしたサラフィエルが視線を感じた方向に顔を向けると、先程まで椙浦と話し込んでいたユリエルの顔が至近距離に迫っている。
不気味な白い半面に驚いたサラフィエルは大きく仰け反りながら数歩後退した。
「な…何だよ!?」
「タクト・ウガミに直接話を聞けば良いとは…珍しく名案を出すじゃないか、サラフィエル」
和かに笑ったユリエルは両腕を大きく広げながら軽い足取りでガブリエルの前まで歩み寄った。
「一つ、任せてくれないか?ガブリエル」
「……本人から聞き出すって?どうやってあの男を引っ張ってくんのよ?」
ガブリエルの問いにどう答えるのかと、周囲を囲う面々も固唾を飲んで見守る。
「引っ張ってくる必要なんて無い。あちらから出向かざるを得ない状況を作ってやるのさ……なに、簡単な事だよ…」
ケタケタと不気味に笑いながら、手を叩いて一人愉快そうにしているユリエルの様子を見て、サラフィエルとアミティエルが不思議そうに顔を見合わせていた。
…………………………………………………………………………………
ザルツブルクからウィーンまでは鉄道で3時間程度。朝一番にウォルターの楽器店でフルートを受け取った京哉であったが、楽団本部に戻る頃には正午を過ぎていた。
ヨーロッパ支部長という立場のミーアが直々に命を受けて外に赴く。それは、緊急性の高い事態が発生した事を意味していた。
現に本部では厳戒態勢が敷かれており、普段なら開放されている正面玄関からの進入は出来ないのだと、扉の真横に立つ二人の警備員から伝えられた。
「セキュリティカード持ってる社員だったら、裏口から入れる様になってるよ。君、旋律師でしょ?」
どうやら警備員の一人は、京哉が日本に発つ前から彼の顔を見知っていたようで、一般従業員には出入りを許されない特別な玄関から入る様にと促してくれた。
自分の足音が反響する程シンと静まり返っているオフィス内。ミーアに預けていたシェリーが何処かにいるはずだと、京哉はレッスン室の並ぶ廊下を歩きながら使用中の表示を探していた。
すると、一番奥の扉に掛けられた木製の札だけが使用中になっている。完全に遮音されている為、耳を欹てても中の様子は窺い知れないが、社内の状況を鑑みるに旋律師が練習をしているとは考えられない。
金属製の扉をコンコンと控えめにノックして、中からの反応を待つ。
「………は、はい…」
恐る恐る、といった様子で5センチ程扉を開けたのは椿であった。京哉の姿を見るなり、何やら安心した表情で扉を全開にする。
「良かった……言葉わからないから、何で私がこの部屋にいるか説明できない所だった…」
目深に被っていたパーカーのフードを外し、静電気で左右に跳ねた髪を手櫛で整えならが答えた彼女は、部屋には自分一人しかいないと言う。
「シェリーは?」
「あの子なら…ほんの少し前にミーアさんが連れて行った」
椿の回答を聞いた京哉は、一抹の不安を感じていた。
異端の人間が『アンプ』と呼ぶシェスカの遺作。父親によって造り変えられたシェリーの身体には、楽団上層部もその真相を掴めていない秘密が隠されている事は間違いなかった。
今回の渡航で彼女に対して幾つかの検証をしたいと言われた時、京哉は従わざるを得なかった。それは、打診ではなく命令であるからだ。
シェリーが楽団に利益をもたらす存在であるならば、上層部は京哉から彼女を引き離してオーストリアに留めるだろう。そして、どんな形で利用されるかはわからないが、京哉には一つだけわかる事がある。マトモな扱いをされる訳がないという事だ。
シェリーを本社に預けている間に、楽団が彼女の秘密を暴いてしまったのだとしたら…。支部長であるミーアが出動せざるを得ない事態の根源が彼女にあるのだとしたら…。悪い予感ばかりが募っていく。
「何処に行ったかなんて……聞いてないよな?」
落ち着かない様子の京哉の問いに、椿も難しい表情を見せる。そして、静かに首を横に振った。
「せめて…ミーアさんが何を言ってたのか理解できれば良かったんだけど…」
でも、と続けた椿から得たヒントは京哉を社屋の地下に向かわせるには十分なものであった。
…………………………………………………………………………………
両腕と左脚を失った子供が、分厚いアクリルでできた遮音壁に囲われた金属製の台の上に拘束されていた。綺麗に切断された断面には適正な処置が為された跡が見える。
目隠しと猿轡をされ、表情すら伺えないペネムの周囲には、完全遮音仕様のイヤーモニターを両耳に装着したミーアと彼女の部下数名、そしてシェリーの姿があった。
楽団の地下に存在する、何も無い部屋。コンクリート打ちっぱなしの空間には窓すら存在せず、一度扉を閉ざせばどんなに悲鳴を上げようとも外に音が漏れ出ることは無い。
そういう仕様でなければできない事をやる部屋なのだ。
「……辛ければ直視しなくて良い。私の後ろにいなさい」
じっとペネムの方を見据えるミーアの声は骨伝導マイクが拾い上げ、イヤーモニター越しにシェリーの耳に届いていた。痛々しい少年の姿に目を細めていたシェリーの様子を気にかけたのだろう。しかし、彼女はブンブンと首を横に振る。
「歌声で莫大な音エネルギーを操る子供を捉えた」
……そうミーアから聞かされたシェリーは、自ら彼に会うことを望んでこの部屋まで着いてきた。理由は一つ。『何故、その身体になったのか』を聞きたかったからである。
「大丈夫です……ありがとうございます」
グッと眉間にシワを寄せながら、シェリーは真っ直ぐにペネムの方を見つめていた。
彼がシェリーを模した存在であるなら、身体の中を暴く必要がある。ミーア達は医療班に連絡を入れ、移動式のレントゲン装置の到着を待っていた。
「遅いですね……アイツら何やってるんでしょうか」
苛立った様子のミーアの部下の一人が腕時計に視線を落としながら言う。
「彼らも忙しいんだろう。こちらは飛び込みで依頼をしてるんだ。大人しく待ちなさい」
冷静な口調でミーアに窘められた彼がおずおずと頭を下げて後退したその時、イヤーモニターからは二人の男が誰かと揉める声を受信し始めた。
『だーかーら、許可が無いと入れないんですよ!しつこいですね!』
『この人このまま付いてきちゃいますよ!支部長に連絡入れた方が良いですって!』
何やら耳元が騒がしくなり、室内にいる人間はお互いの表情をキョロキョロと見合わせる。
踵を返して防音扉の方に向かったミーアは、そっと扉を押し開けて外の様子を伺った。
「一体何があった?」
素早く廊下に出て扉を閉したミーアの目前には、キャスター付きの移動式レントゲン装置を運んできた医療班の二人と、彼らに突っかかっている京哉の姿があった。イヤーモニターを片方外したミーアは彼に話し掛ける。
「キョウヤ、戻ったんだな」
無事で何よりだと続けようとしたミーアの正面に医療班の男達を押し退けて立った京哉が、彼にしては珍しく声を荒げながら迫った。
「支部長!シェリーに何をするつもりなんですか!?コイツら何聞いても答えられないって言うし!」
「キョ…キョウヤ、落ち着け。別に私達は彼女に何も…」
「もしかして、解剖ですか!?それともこの機械使って……」
「解剖!?いやいや、何を勘違いしてるか知らないが…」
再び開いた扉の向こう側からシェリーが飛び出してきたかと思えば、ミーアに必死の形相で迫る京哉の背中に彼女の綺麗な飛び膝蹴りが決まる。
「変な想像すんな!キモいんだよ!」
顔を真っ赤にして仁王立ちになったシェリーは、腰を摩りながら振り返った京哉を睨み付けながら息を荒げていた。
「あれ!?何で?」
てっきり、上層部の人間に良からぬ事をされていると思い込んでいた京哉は、キョトンとした表情でシェリーの怒り狂う様子に首を傾げている。
「……待っていなさい。今、イヤーモニターを追加で持ってきてもらうから」
呆れた表情でPHSに手を伸ばしたミーアの方に視線を移しながら、京哉は更に首を傾げる角度を大きくしていった。
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せっせと機械のセッティングをする医療班の男達を眺めながら、ミーアはイヤーモニターを装着している京哉に尋ねた。
「それにしても、よくこの部屋だとわかったな。大事を取って多くの社員を捌けさせてもらっていたから、誰かに教えられた訳ではないのだろう?」
「あー……レッスン室に残ってた椿が。アイツ、鼻が効くみたいで支部長から血の匂いがしたって言ってて…」
京哉の回答を聞くや否や、ミーアはすぐさま自身の服の匂いを嗅ぎ始めた。
返り血を大量に浴びた燕尾服なら、楽団本社に戻ってすぐ着替えた筈なのに…と。
ウィーン国際空港でミーアが捕らえた異端の使徒。いくら尋問にかけても一切口を割らないペネムから彼自身の情報を得る為にシェリーの協力を得てはどうかと提案したのはロジャーであった。
ペネムをX線で調べ、内臓がハンネス機関に置き換えられているならば、同じ身体を持つシェリーの質問には耳を貸すかもしれない…と。
もし、それでも黙秘を貫くというのであれば、想像に耐え難い方法を使用する他無いとミーアはシェリーに伝えていた。
「…始めてくれ」
ミーアの合図で医療班の二人がペネムの身体に向けて50センチ四方の照射装置を構える。キャスター付きの本体画面に徐々に映し出されていった彼の体内構造に、全員が思わず息を呑む。
想定通り、声帯から下の臓器は全てが取り攫われ、胸の皮膚に残る円を描いたような傷跡の下には拳大のハンネス機関が存在していた。
そして、本来声帯があるべき位置には白い筒状の物体が埋め込まれている。
「…私と同じだ……」
ボソリと呟いたシェリーは、不安げな表情で京哉の顔を見上げた。彼も神妙な面持ちでじっと画面を見つめている。
「シェリアーナ…それでは、頼めるかい?対象が君を攻撃しようとすれば、私達がすぐに対応する」
構えられたミーアのフルートがキラリと輝くサーベルに変形し、周囲の部下達も身構えた。
ゴクリと息を呑んで一歩前に踏み出したシェリーの隣を行く旋律師の一人は、遮音壁の一部を開けて手を突っ込むと、ペネムの口に嵌めていた猿轡と目隠しを外す。
「……アナタと話がしたい。ドイツ語はわかる?アタシは、シェリアーナ・シェスカ。アナタ達はアタシの事を『アンプ』って呼んでいるんでしょ?」
頭上のスピーカーから突然耳に入ってきたシェリアーナの声に、ペネムは唯一自由に動く首だけで彼女の方を向いた。
人の精神に異常を来たす歌声を持つペネムがいきなり歌い出せば、その場にいる全員の命が危険に晒される。遮音仕様のイヤーモニターからは喉元に装着した骨伝導マイクが拾ったお互いの声だけが聞こえるようになっていた。
ペネムが発した声は防音壁内に仕込まれた音声入力装置が文字起こししたデータを、デジタル音声ソフトが読み上げる仕組みで彼らに伝達されるようになっており、万が一ペネムが歌い出したとしても直接的な影響は無いように設計されていた。
「シェスカ……君がオリジナルなんだね」
楽団に捕えられてから彼が初めて声を発した様子に、ミーアは引き続き話し続けるようにとシェリーに目で促した。
「アナタのような子供が、何故異端にいるの?」
「先生が拾ってくれたからだよ。パパもママも音楽家だったから、警察に捕まっちゃったんだ。僕、先生がいなかったらお腹空き過ぎて死んじゃう所だったよ」
ペネムが先生と呼ぶ人物が、彼の身体を造り変えたのだろうか。聞きたいことは山程あるが、シェリーは逸る気持ちを抑えながら、事前にミーアと打ち合わせた通りに質問をしていく。
「……アナタは歌声で人を殺せるの?」
その質問には、ペネムは少し考え込む様子を見せた。
「僕の歌のせいじゃないよ。パパのせいなんだ」
「パパ……警察に捕まったんじゃないの?」
次々に疑問が浮かぶが、ペネムは年相応の回答しか寄越さない。
「捕まったよ。でも、パパのせいだって先生が言ったんだ。僕は悪くないからって」
「一体どういう事……?」
どうしたものかと困り顔で視線を送ってきたシェリーの様子に、ミーアは京哉と顔を見合わせた。
「参ったな…彼は自身の身体の仕組みについて理解していないのかもしれない」
シェリーとペネムの違い。それは、歌声が莫大な音エネルギーを生み出すか否かであった。X線画像で判明した通り、シェリーを模して造られたペネムの体内は彼女と全く同じ構成をしていた。本来心臓のある位置に据えられたハンネス機関。そして……
「……オルゴールだ」
京哉の呟いた声はイヤーモニター越しにシェリーにも届いていた。ハッと何かに気が付いた彼女は、再びペネムに疑問を投げ掛ける。
「……パパとママ、この世にはいないんじゃないの?アナタの身体の中にはどちらかの骨で……「パパとママは生きてるよ!」
シェリーを遮って叫んだペネム。彼女の方に向けられた表情は、怒りとも悲しみとも取れる感情で歪んでいる。
「先生は、パパが僕の為に作ったお守りをくれたんだ。大切なものだから、ちゃんと仕舞っておこうって言われて……」
「そっか…わかったよ。ごめん」
次第に早口になっていくペネムの精神状態が崩壊し、会話が続けられなくなっては困る。シェリーは咄嗟に彼の言葉を制止した。
…………………………………………………………………………………
「……パパがくれたお守りって、何だったのかわかる?先生は教えてくれた?」
落ち着きを取り戻した様子のペネムは、フゥッと息を吐きながら天井の方を真っ直ぐに見つめていた。お守りかぁ、と呟きながら目を細めている。
「音が鳴る小さな箱だよ」
回答を聞いたシェリーは、やはり体の中に埋め込まれたオルゴールが彼の異能の鍵になっているのだと理解した。
「先生が、大事なものだから……僕の体の中にしまっておこうって言ったんだ。いつでも聴けるから大丈夫だって言ってて…」
「体の中にあるのに……どうやって聴いてるの?やり方があるんでしょ?」
自身の躰の使い方がわかれば、今まで抱えてきた鬱蒼とした疑問が解決されるかもしれない。アクリルの防音壁に駆け寄ったシェリーは、緊張した面持ちでペネムを見つめる。
回答を心待ちにするシェリーの期待に満ちた眼差しに、ペネムはクスクスと笑い始めた。
「オリジナルなのにわからないんだよね。先生から聞かされてたよ。僕の周りの大人は君のお父さんの書いた設計図を読んでちゃんと理解してたのに……君の近くにいる人は、本当に君の事をお飾りだって思ってるんだね」
何のために造り変えられたのかわからない。この身体の使い方も教えてくれない。
自分の父親は一体何をしたかったのだろうか。本当に唯、金持ちのコレクションにする為に娘にメスを入れたと言うのだろうか。
「……わからないよ。わからないから、アナタに教えてもらいたい」
静かな口調で返したシェリーは、京哉達の方を指差しながら続けた。
「アナタが此処で素直に答えなければ、楽団の人達がアナタの身体に聞くだけ。でも、アタシはアナタにこれ以上痛い思いをして欲しくない」
脚を片方残したのは、コレからの尋問の際に使う為だとミーアはシェリーに伝えていた。彼の口から全てを語らせるまでは、自ら命を断つ事すら許さないのだという。
自分を模した存在を生み出す為、犠牲になった人間の一人。シェリーはペネムを哀れんでいた。彼はきっと成功した数少ない例なのだろう。臓器をまるまる取り出してハンネス機関を埋め込むという被人道的な行為の最中で、どれだけ多くの実験体が命を落としたのかわからない。
実験体になってしまったせいで、彼は手足を失い、今楽団によって拘束されている。
全ての元凶は自分である。シェリーの言わんとしている事がわかってしまったミーアと京哉は、固唾を飲んで二人のやり取りを見守っていた。
「教えて……お願い」
更に防音壁に近付いて掌でその表面に触れたシェリーは、悲痛な面持ちでペネムに懇願する。
オリジナルは唯のお飾りとして扱われている。ラファエルと共に行動していた彼は、異端の幹部達からそう聞かされていた。
彼女自身は『アンプ』としての異能を得る方法を知らず、周囲も扱い方を理解していない、と。
ペネムはその事に優越感すらを覚えていた。自分はモルモットなんかじゃない。オリジナルですら出来ない事ができてしまうのだと。
それは素晴らしい事で、ラファエルや周囲の人間が褒めてくれる凄い事なのだと。
そう思う事で、人々を殺める行為を肯定してきたのだ。
肯定しなければ、その小さな身体では償い切れない程の罪を犯してしまった事に対して心が保てなかったから。
「……一つだけ聞いて良い?」
無表情のまま尋ねてきたペネムは、シェリーがコクリと首を縦に振る様子を見て続ける。
「君は嫌じゃないの?利用されるんだよ…そこにいる人達に……。僕みたいに、こうやって壊れるまで…ずっと……」
じわじわと彼の瞳には涙が溢れ、金属製の台の上に流れ落ちている。
孤児として拾われ、恩を感じていた人間に人体実験を施され、殺人の道具として利用され続けたペネムの境遇を知りながらも、楽団は彼に制裁を下さねばならなかった。危険な異能を有し、多くの仲間を惨殺した処刑対象であるからだ。
子供心に、ペネムは自分がこの世から居なくなるのだと理解していた。
…………………………………………………………………………………
『アンプ』とは、アンプリファイア…増幅するものという意味である。
オルバス・シェスカの設計図によると、体内に埋め込まれたオルゴールにはハンネス機関のある部位を動かす為に存在しているのだという。
シェリーやペネムの体内に埋め込まれているハンネス機関には、通常の発電や蓄電に使用するものには付いていないユニットが付属されていた。それが、オルゴールに繋がる『イコライザ』である。
音の周波数を補正するイコライザを通す事で、不安定で複雑な周波数をもつ人の歌声であっても大きな音エネルギーを生み出す事ができる綺麗な合成波に修正されるのだ。
そして、このイコライザを駆動する為の鍵となるオルゴール部分には仕掛けが施されていた。オルゴールが奏でる音楽はシリンダーに刻まれたピンの配置によって決まる。
体内に埋め込むという構造上、18弁15秒の曲に限られるが、このシリンダーに刻まれた曲を正確な音程で歌う事によってイコライザが駆動し始めるのだ。
ペネムの場合、イコライザによってハンネス機関で増幅された音エネルギーの全てを対象にぶつける事で、耳から脳を揺らし内部を破壊していた。
人の歌声ですら凶器に変えてしまうオルバスの『アンプ』は、まさに世界各国の政府が警戒し禁止するに至った音の武力化の最たる物であろう。
「先生が体の中に隠す前に、僕はオルゴールの曲を聴いたんだ。君もそれがわかれば……」
歌声で人を殺せるようになる。続きは声に出さなかったが、ペネムの言わんとする事をシェリーは悟っていた。
「……オルゴールが何の曲を奏でるか……」
ゼンマイではなく、シリンダーに刻まれた曲を歌う事によってこの呪われた躰はその秘められた能力を発揮するのだ。
しかし、シェリーの場合既に体内に埋め込まれてしまっている為、オルバスが妻の骨で何を刻んだのかを知る術は一つだけであった。
「オルバス・シェスカの設計図を入手すれば……情報を掴める可能性はあるな。彼を造り変えた先生とやらに接触する必要がありそうだ」
ミーアは京哉の方を向きながら提案した。
支部長である彼女が上層部に掛け合い、楽団本体の意思によって異端を攻撃する命令が下れば、いよいよ直接対決という事になる。
これまで散々被害を被ってきた楽団であったが、異端を叩く理由がオルバス・シェスカの設計図を手に入れる為という事になれば、その先に得られるシェリーの能力は楽団上層部が管理する事になるだろう。
シェリーの身柄は当然本社預かりとなり、京哉の元からは離れざるを得ない。それは彼女が望む、良縁屋でのごく普通の生活とは掛け離れている。
一向に返事を寄越さず黙ったままの京哉の横顔からは、そんな近い将来を想像して首を縦に振る事が出来ない彼の複雑な心境が滲み出ていた。
…………………………………………………………………………………
防音扉から地下のヒンヤリとした石畳の廊下に出た京哉とシェリー。ミーアから先に椿の元に戻るように指示を受けていた。
あの部屋に残った彼女達がこれからペネムに何をするのか、そんな事は想像に容易い。
「……ミーアさんって……怖い人?」
足元を見つめながら、シェリーは京哉に小声で尋ねる。
「楽団なんてあんな人ばっかだろ。ヤバい会社なんだから…」
そのヤバい会社とやらに所属している自分はどうなのだと突っ込んでやりたかったが、ペネムとの会話でどっと疲れてしまったシェリーはそんな気力すら残っていなかった。
そこからはお互いに無言のまま、椿の待つレッスン室へと向かう。ふと、一歩前を歩く京哉の後ろ姿に視線をやったシェリーは、先日の出来事を思い出す。
『…貴女、彼の事好きなんだ』
一人でバタバタと手足を暴れさせながら身悶えているシェリーの方を振り返った京哉は訝しげな表情を見せた。
「…オーストリアの水、体に合わなかった?おかしくなったみたいだけど…」
「お、おおおかしくなってなんか……!っていうか、あの女と何したの!?何かしたからアイツ……」
両手で自分のツインテールを掴んでグイグイと引っ張りながら早口でそう尋ねるシェリーの顔は真っ赤だった。
「ほ、ホラ……アイツの……コレ!」
コレ、と言いながらシェリーは自身の胸の前で何度も上から下へと弧を描く。何事かと目を凝らして彼女の言わんとする事を考えていた京哉。
「アイツの…コレ……?あー、乳がデカいと?」
何のオブラートにも包まれていない言葉で言い当てられると、自分から振った話にも関わらずシェリーはすかさず京哉の頬をパシンと平手打ちした。
「ってーな!何すんだよ絶壁!」
「へ…変態だ!!やっぱり歯磨いてるとか言いながら見てたんだ!!アタシの裸!!」
ますます顔を真っ赤にしながら肩を抱くシェリーの様子に苛立ちを感じた京哉は、唇を尖らせながら大人気なく言い返す。
「覗いてねーしー!お前が絶壁だなんて服の上からでも見りゃわかんだろ!被害妄想お疲れ様でしたー!」
「あーっ!他の女の人の事も見てんだ、そうやって!チサキに言いつけてやる!」
ギャアギャアと騒がしく言い合いながら椿の待つレッスン室の扉を開け放った京哉。ガルガルといつまでも噛み付いてくるシェリーの頭を押さえつけながら室内に入ると、窓際に立っていた椿が外に向かって彼女のライフル銃を構えている様子に慌てて駆け寄って行った。
…………………………………………………………………………………
「ちょちょちょ!やめて!?何してんのアンタ!?」
ジッとスコープを覗き込んでいる椿は、銃身を京哉に掴まれてズルズルと部屋の中央まで連れて来られる。
「危ないでしょ、そんな物騒なモン取り出して!」
しまいなさい!と怒られると、彼女は仕方なくといった表情でガンケースにライフルを納めた。
「……怪しい男がいた」
「怪しい……?どんな奴よ?」
眉を顰めながら尋ねる京哉に、椿は自分の右頬を指差しながら答える。
「此処に大きな傷跡があるオジサン。ジロジロとこの建物を見ていた」
右頬の大きな傷跡。それは、京哉が今朝方ロジャーに報告を入れた楽団に不利益を齎す噂を流す人物の特徴そのものであった。
[37] Hymn 完
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