MELODIST!!

すなねこ

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#073 Jusqu’à la fin Ⅱ

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東京都・32歳男性「信じてたんですよ、彼の事は。でも、遂に未成年に手を出してしまって…。本人は冤罪だって騒いでましたけど、どう見ても最中でした。顔が良くたってダメ。ただしイケメンに限るとか無いから」


…………………………………………………………………………………




 心地良い音色に意識が呼び寄せられる。
 薄く瞼を持ち上げると、見たことのない廃墟の天井が広がっていた。
 そこは、公園から程近い場所にある地下商店街。ダクトを通る水の音が遠くに響き、ひんやりと湿った空気の流れる床からゆっくりと上体を持ち上げる阿須賀。

「あんまり動くなってさ。血、結構流れてたから」

床に胡座を描いて座る京哉の声を聞き、そちらの方向に顔を向ける。

「京ちゃん……ん?え?ワシ……生きとる…?」

確か、椿が寄越した拳銃で首を撃ち抜いた筈。恐る恐る手で触れてみるものの、傷跡一つ残っていなかった。

「夢見とったんか…?」
「夢じゃないよ。コイツが死にたてホヤホヤの阿須賀を治したの。ま、詳細は企業秘密ですケド」

コイツと言いながら京哉が指差したのは、彼の肩に顔を埋めて寝息を立てている麗慈である。

 大己貴命オオナムチノミコトの力によって発生した細密な音エネルギーの波により、細胞分裂の速度を速めるよう脳に直接促すことが出来る。
 耳が生きているうちであれば、麗慈の超絶技巧によって蘇生が可能であった。


「……ようわからんケド、医者の兄ちゃんに感謝やな。んで、治療で疲れ果てて寝てしもたん?」
「今なら何しても起きないよ。試した事あるもん」
一体どんな悪戯を仕掛けたというのか。「聞く?」と言われた阿須賀であったが、貧血でクラクラしてきた為首は横に振っておいた。



 ドスドスと近寄ってきた足音の方に視線を向けた京哉は、鬼頭がサングラスを外して目頭を揉む様子に首を傾げた。

「どうだった?上の様子…」
「……ああ、起きてるな新宿の大将。心して聞いて欲しいんだが」

嫌な予感しかしない語り口に、京哉の表情は強張る。
3人の近くに腰掛け、サングラスを掛け直した鬼頭は阿須賀を一瞥してから非常に重い口を開く。

「…椿が死んでた」

ポツリと、それだけを聞かされた京哉と阿須賀は数秒間何も言う事ができなかった。瞬きを繰り返し、鬼頭の言葉の意味を咀嚼するうち、京哉の頭の中は「何故」という感情に支配される。

「一度アジトに戻った方が良いという話になったそうでな。シェリー達と別れて公園を出ようとした時だったらしい」

 起爆スイッチが押され、椿の体に巻き付けられていた爆弾が炸裂した。

「………何で…ワシは死んだ事になっとるんやろ?目的は達成しとるやんか……いくら凌壱兄さんでも椿は妹みたいなモンやのに何で…」
「恐らく最初からそうするつもりだったんだろう。……言葉が悪くなっちまうが、用済み…ってことだったんだだろうな」

血縁者であろうと、気に食わない奴に肩入れしていた者は使い捨てる。志麻凌壱の残虐性は、二人の想像を遥かに超えていた。

「シェリーは?大丈夫そうか?」
友人が爆散した姿を目撃してしまったのなら、彼女の精神状態が気になる京哉。彼の質問に対しても、鬼頭は暗い表情で答える。

「かなり落ち込んでるな。動こうとしなかった。祐介と道夫に傍にいて貰ってるが、お前が行ってやる方が良い。今後の作戦会議も必要だ…どうにか全員を此処に連れて来てくれ」

鬼頭に麗慈の身体を預けて立ち上がった京哉は、まだ混乱している様子の阿須賀を一瞥してから地上へ繋がる階段を昇り始める。


…………………………………………………………………………………



 暗雲立ち込める空の下、血溜まりを前に地面にへたり込んだままの状態でぼんやりとした表情を浮かべるシェリー。
 ぽつり、またぽつりと雨が降り出し、彼女の絹のような白い髪を濡らしていた。

 シェリーの後方で彼女の背中を見守っていた祐介と道夫は、京哉の接近に気が付いてそっとその場を離れる。



「雨降ってきたケド」

唐突に声を掛けられ、シェリーは肩を震わせた。それでも京哉の方を振り向かずに動こうともしないシェリーの様子を見て、同じように隣に座った京哉。

 目の前に広がる惨状。黒いパーカーに染み込んだ血液が雨に濡れてじわじわと布地から溢れ出す。
 本降りの雨に肩を濡らす二人の視線の先で、ただの有機物の塊となってしまった彼女の友人が横たわる状況。

 いつまでもこうしている訳にはいかない。そう言ったとて彼女は頑なに動かずに祐介達を困らせたのであろう。

「…椿も雨曝しのままじゃ不憫だ。運んで良い?」

そう問えば、シェリーはゆっくりと首を縦に振った。

「じゃあ、お前も来れる?風邪引いたら祐ちゃんが大変だから」

祐介の事を出されたら弱いのだろうか、彼女は再び首を縦に振ってようやくその場から立ち上がった。

 シェリーが見守る中、地下を出る時に鬼頭に持っていくようにと手渡された毛布で椿の亡骸を包み込む。
 オーストリアで彼女を背負った時に感じた重量には程遠く、その死の事実を突き付けられている様で京哉は目を細めた。





 荒れ果てた地下商店街。毛布に包まれた亡骸をコンクリートの床にそっと降ろすと、祐介の肩を借りた阿須賀が歩み寄ってきた。
 毛布の端を掴んで中を確認し、悲痛の表情を浮かべる。

「…椿……」

阿須賀にとっては家族も同然の存在であった。彼の悲しみはこの中の誰よりも深い。

「お嬢ちゃんと一緒に今朝ワシの所に来た時、一瞬喜んでもうたんや。良かった、生きとったって……」
毛布の前で手を合わせたまま語り出した阿須賀に、シェリーも頷く。
「…生かされただけって考えたらな……もう堪らんわ。怖かったやろな…逃げ出したくてどうしようもなかった筈や……でもな、あの子はちゃんとワシの所来たやろ?」
びしょ濡れになるまで彼女の死を隣で悲しみ寄り添っていたシェリーの方に面を上げた阿須賀。ラウンドのサングラスの奥で一筋の涙が伝うのが見えた。

「自分が逃げたら、きっとアイツは他の人間に同じ事やらす思うて……な。優しいやろ?……椿はそんな子やった…」

 凌壱に利用され、彼女の意思とは関係なく人を傷付けることを強要されていたと話していた椿。ポーランドに向かう電車内でその事を本人から聞いていた京哉は疑問に思っていた事があった。
 阿須賀がその事を知れば、恐らく怒り、凌壱に物申していたであろう。しかし、それをしなかったのは椿が彼に相談していなかったからではないのか。優しさ故に自己犠牲に走ってしまう彼女らしさではある。京哉は不意にあの時の話を思い出し、顔を伏せた。そして、彼に問う。




…………………………………………………………………………………


「阿須賀…志麻凌壱への仇討ち、今なら楽団ギルドの審議すんなり通ると思うんだけど依頼してみない?」

 日本政府に加担する異端カルトが量産を続ける機会兵器。凌壱は既にそれらを使って旋律師メロディストを3人殺害しており、その他多くの楽団ギルド関係者も犠牲になっていた。
 楽団ギルドとして凌壱殺害を請け負う理由は十分にある。

 しかし、京哉の提案を聞いた阿須賀は鼻で笑った。

「ド阿呆…ちゃうやろ、京ちゃん」
その返答に京哉は小首を傾げた。
「ワシがアイツの事殺さんように止めたってや……」

 凌壱は一線を超えてしまった。与えられた兵器を使って多くの都民を無差別に殺戮し、椿までも利用した挙句惨殺したのだ。
 しかし、阿須賀は堅気である。例え憎き仇であっても、自警団彼らのやり方で制裁を下す。そうしなければ、周平太に申し訳が立たない。

「志麻凌壱に阿須賀が生きていたと知れたら、次こそあの兵器を使って確実に殺しに来るはずだ。一騎討ちどころじゃねぇだろ?」

遠くから意見する鬼頭の言う通りだと、京哉も頷く。

「そんなら、あの虫は京ちゃんに頼む事にするわ。通りすがりの楽団ギルドの兄チャンが腹いせに刀振り回してたって事にすればタダで手伝ってくれるんやろ?」

あまりにも都合の良い“お願い”の内容に京哉は口角を引き攣らせた。

「ボランティアっすかぁ……まぁ想いは同じ訳だから問題無いかな」



 アイツだけは絶対に許さない。それがこの場に居る人間全員が志麻凌壱に対して抱いた感情である。



 

…………………………………………………………………………………




 服を全て脱ぎ、雨に濡れて含んだ水分を絞り取る。そして、毛布を体に巻き付けて小さな焚き火の前に座ったシェリー。
 パチパチと心地良く細い木の枝が弾ける音を聞きながら、炎に向かって掌を当てて寒さに凍えていた体を温めていた。
 乾かす為に細い紐にぶら下げておいた衣類が静かに揺れる様子を無心で眺めていると、背後から近づいて来る一人分の足音。
 慌てて振り返った視線の先には、同じ様に毛布を被っていた京哉がいた。その手には絞った衣類がまとめられている。

「…何だよ。僕だってびしょ濡れなんだケド」

焚き火の近くの壁の突起に細い紐をくくり付け、濡れた服を干していく京哉。毛布1枚しか纏っていない姿で隣り合って座る相手としては、シェリーにとってはあまりにも心臓に悪かった。

 お互いに一言も喋らないまま時が過ぎていく。チラッと横目で京哉の方を見ると退屈そうに欠伸をしていて、今にも居眠りを始めそうであった。

 ねぇ、キョウヤ。

 いつも通り彼の名を呼ぼうとしたシェリーであったが、喉からはスーッと息が抜けていくだけ。何故か音にならなかった。声が出ないのである。

 慌てて京哉にその事を伝えようとするが、伝える手段が無い。毛布に包まり達磨のような状態から腕だけを伸ばして京哉の肩を叩くが、振り向いた彼にどう説明すれば良いのだろうか。

「…どした?落ちたものでも食った?」

 いつもの調子でそんな事を言ってくる京哉。誰にも気付いてもらえなかったらどうしようという不安に駆られると、自然に涙が滲んできた。
 そんな彼女の様子を見て焦った京哉は、どうしただの何かあったのかだの尋ねてくるが、それに答えることの出来ないシェリーの涙は段々と大粒になって溢れ出してくる。
 俯いてフルフルと首を振るシェリー。椿の事を思い出して泣いているのかと考えた京哉であったが、それにしては様子がおかしい。そして彼は、彼女がそれまでに一言も言葉を発していない事にようやく気が付いた。

「もしかして……声…出ない?」

 バッと顔を上げたシェリーは、感極まった様子で京哉に抱き付きながら静かに号泣し始める。抱き付いた表紙に彼女の包まっていた毛布が床に落ちた。
「あっ!ちょっ!見える見える!」
焦った京哉がシェリーの脇腹を毛布越しに腕で押すが、その時簡易的に作ったダンボールのパーティションの向こう側から誰かが接近してくる音が耳に入る。
「何でこんな時に…っ!」
少女の裸体を見られる訳にはいかないと、意を決した京哉は自分の毛布の中にシェリーを入れて隠した。冷たい肌に直接触れ、何とも言えない感情に苛まれて気まずい表情を浮かべる。

「あ、ごめんね京ちゃん。阿須賀くんの服も血で汚れてたから洗って来たんだけど……どうしたの?」

不自然な愛想笑いを浮かべている京哉に、阿須賀の服を持って来たという祐介は眉を顰めた。そして周囲を見渡すがシェリーがこの場に居ないことに気が付いてしまう。
「シェリーちゃんは?服はまだ乾かしてる途中だと思うけど…」
「え?あ、ああー…いやー、どこだろうなー?僕が来た時にはもう姿が…」
苦し紛れに要領を得ない言葉をアレコレ発しているうちに、彼の毛布の中にいたシェリーが息苦しくなってもがき始めた。
「馬鹿馬鹿っ!静かにしてろ!……な、何でもないデスよ、あはははー…」
あと少しで祐介が引き返そうというタイミングで、窒息しかけたシェリーが力の限り京哉を押した。バランスを崩した京哉は背中からバタンと倒れてしまい、被っていた毛布は肌ける。
 濡れた服を乾かしているという理由が無ければ、いかがわしい行為の最中にしか見えない二人の姿が露わになり、祐介は目を見開いて驚愕している様子であった。おまけに、シェリーの頬には涙の跡があり、目は真っ赤である。



…………………………………………………………………………………


 言うまでもなく緊急会議が開催され、ぐるりと輪になった男達に囲まれた京哉は毛布1枚だけを被った姿で正座をさせられていた。

「京ちゃん…見損なったよ。何やってんだよこんな時に」
腕を組んで仁王立ちする祐介は大きな溜め息をつく。
「シェリー殿は泣いておられたと聞きましたが…まさか無理矢理……まさか……京哉殿がそんな事をするゲスだったとは…」
道夫は顔面蒼白になって京哉に軽蔑の眼差しを向けていた。
「京哉…死んだ親父も悲しんでるぞ。言っておくがアイツもそこまでじゃなかったからな。そこまでじゃ」
額に手を置いて、はぁ…と失望した様子の鬼頭。
「但し、イケメンに限る…っちゅう話や無いで、京ちゃん。アカンもんはアカンよ……」
肩から毛布を被った阿須賀は哀れみの表情を浮かべていた。
「ひ…酷いや皆して……!僕が何をしたって言うんだ!冤罪だ!」
わんわん騒ぎ出した京哉を、即席で拵えたハリセンで四方八方から叩きまくる。
「見苦しいで京ちゃん!反省しぃや!」
「なにが冤罪でありますか!シェリー殿に謝ってくだされ!」
スパーンスパーンという大きな音と京哉の悲鳴が地下商店街に響き渡る中、シェリーを連れた麗慈が京哉達の元に戻ってきた。
 毛布の端をキュッと握って俯く彼女の様子に、男達はハリセンを床に投げ捨てて麗慈の説明を待つ。

「…外傷性ではない。おそらく一時的なモンだが……」

 心理的に大きなショックを受け声が出なくなるという事例は存在するという。ただ、それは一般的な人体構造を持った人間に関する情報であった。
 シェリーには声帯が無い。どのような原理で歌を歌っているのか、医者である麗慈にも理解不能であると京哉には説明している。

「暫く様子見で良い…というか、それしかない。お前も無理に声出そうとすんなよ」

 彼の忠告に、シェリーは俯いたまま静かに首を縦に振った。明らかに元気の無い様子の彼女は皆が見守る中、服を乾かしている空間に向かって歩き出す。

 借り物とは言え住処を失い、敵に追われ、壊されていく東京の街で友人を残虐な方法で殺される経験など、普通に生きていればまず経験する事は無い。……筈であった。
 都野崎による強行政策によって、今まで東京に住んでいた人間の多くが同様の災難に見舞われている。

「……シェリー殿、大丈夫でありますかな……」
意気消沈する少女の後ろ姿を不安げな表情で眺める道夫。そんな彼の肩を叩いたのは鬼頭であった。
「お前さんも無理だけはすんなよ。俺達と行動を共にしてれば、嫌でも見たくないモン目の当たりにする事になる」

 ミゲルによって陥れられた道夫は、偶然逃げ込んだ六本木の廃ビルでの出会いをキッカケに楽団ギルドの人間と行動を共にするようになっていった。
 つい最近までアングラな世界の事情など知らない一般人だった彼にとっても、今の東京の状況は相当精神的に堪えるものであろう。



…………………………………………………………………………………



 取調室で黙秘を貫くロジャーに、聴取を担当していた刑事達も困り切った表情を見せていた。
 社屋の地下で発見された不自然な焼死体。重要参考人として任意の取り調べに応じる為に警察署に足を運んできた筈の彼は、どういう訳かどの質問にも答えようとしなかった。

「……少し休憩入れましょうか」

席を立った刑事の一人が周囲の人間に目配せをして全員で退室する。取調室内には監視カメラが四隅に取り付けられており、隣の部屋にいる警察官が常に中の状況を確認していた。


 机の上で組んだ手をじっと見つめたままのロジャー。突如彼の耳に届いたのは、休憩に出た筈の刑事の1人が再度扉を開ける音。彼に誘導されて取調室に入ってきたのは、世界政府のクロークスであった。

「…お世話になっております、ロジャーさん」

静かな口調で声を掛けてきたクロークスはロジャーの正面に座った。
 此処は警察署内の、しかも取調室だ。事件の可能性がある事象での重要参考人を隔離している部屋に関係者以外の人間を通す理由など一つだけである。
 クロークスが世界政府の権限を行使したのだ。

「貴方に二、三お伺いしておきたい事がございまして……」

そう語り出したクロークスは机に両肘をついて指を違い違いに組んだ手の上に顎を乗せた。

「まずはイースト・アラベスクの件です。つい先程、奇妙な話を聞いてしまいまして……今あの船はインド洋手前で緊急停泊中だそうです。何でも、航行を続ければ攻撃するという謎の脅迫無線を受信したとかで……何かご存知でしたか?」
「……ほう…それは一大事ですな。今初めて耳にしました。オーケストラを日本に急がせている我々としては早急に解決いただきたい」
淡々と答えたロジャーの隙の無い様子に、クロークスは何かを疑うような表情を見せながらも次の質問に移る。

「……では、こちらの写真をご覧いただけますか?」

懐から取り出したのは、解像度低い防犯カメラ映像の切り抜き。そこに写るのはユリエルと椙浦、そして顔を伏せる黒髪の東洋人…。

異端カルトの人間と共にいるこの男性は……先日お会いしたミスターウガミではありませんか?こちらは今朝、オーストリア空港の国際線発着口で撮影された映像です」

ロジャーの前に突き出された写真。クロークスが指差した男の姿に視線を落とすと、彼は小首を傾げる。

「彼は火事で亡くなりました。非常に残念ですが」

託斗が生きていたとすれば、ロジャーにとっては喜ばしい事の筈だ。しかし、今のこの反応……クロークスの疑念は募るばかりである。
 ガサガサと両手で髪を掻き乱したクロークスは、その両の手を握り締めて力強く机を叩いた。
「……ロジャーさん…何を隠していらっしゃるのですか!?我々に協力し、音楽否定派の国を一掃するという目的は……」
「……絶対中立の世界政府がこちら側に大きく傾いた。これを好機と捉えるほど馬鹿じゃありませんよ、私も」

クロークスの言葉を遮ったロジャーは鋭い目付きで睨みを効かせる。

「ハンネス機関の利権を新機構開発研究部から奪い取った世界政府としては戦争が起こった方が儲かる。ポーランドの密造刑務所の壊滅を許諾したのも、自分らの利益を損なう存在を始末する為……。終末兵器をチラつかせ、日本や中国を焼き払う事で抑止力はいつでも行使できるという事を世界中の国々に思い知らせたい訳です」

図星を突かれたようで、クロークスは声を荒げながら立ち上がる。

「日本では零式を模した機械兵器が国民を脅かし、いずれ世界に進出させようとしている…!こんな勝手は許されない!世界政府が平和の為に動くのは当たり前だ!」
「その為には我々のような裏稼業とも手を組む…と」

ロジャーの返しにクロークスは再び机を叩いた。そして、今度は口元に笑みを見せる。

「…零式の起動に大きく携わったのが楽団あなた方だと世間が知れば、その影響力は段違いに拡大する…っ!暗躍する立場なら相手に畏怖を抱かせるのは大きなアドバンテージでしょうが!だから協力させた…首を縦に振るとわかっていたから!」
「そりゃお気遣いいただきありがとうございます…ミスターヴァーグ」

クロークスの熱弁に対して、相変わらず表情の無い顔でポツリと短く返したロジャーは、右手の人差し指を立てた。


…………………………………………………………………………………


「…ひとつ……お伝えしておきましょう。我々は何も、英雄になりたい訳じゃありません。楽団ギルドとは世間の鼻つまみ者の受け皿、吹き溜まりなのです。承認欲求など皆無の人間だけが世界中から届く“身勝手な願望”の捌け口として生きている」

パイプ椅子から立ち上がったロジャーは、その人差し指をクロークスの方にまっすぐ向ける。

「世界の平和の為?……おかしな事を言う人だ。戦争がお望みならば、各国のプレジデントを暗殺して回りましょう……そちらの方が得意分野です。そうして始まった世界大戦の後始末で矢面に立たされるのは誰だと思いますか?」

ロジャーの問いの答えを見つけ出そうと思考を巡らせるクロークス。しかし、先程から向けられているロジャーの人差し指の先……目で追えば自身の心臓の位置に辿り着く。

「……まさか…」
「過去に楽団ギルドと結託して国を滅ぼした実績は仇となる。さっき言いましたよ、暗殺は我々の得意分野だと。当然疑われるでしょうね、世界政府の人間が大戦の引き金を引かせたのではないかと」

 バクバクと今までに経験した事のない速さで脈打つ心臓。全身からは冷や汗、脂汗が次々と滲み出る。風邪を引いて熱を出しながら寒気を感じる時のように、全身が体の不調を訴えていた。





「……クライアントは日本政府です」




ロジャーの言葉に目を見開くクロークス。
 そんな事は有り得ない、そう口にする事を憚られたのは目の前の男が冗談を言うようなタマでは無いと、その立ち振る舞いから感じ取る事ができたからだ。






 12月27日の朝、楽団ギルド社屋最上階に位置する社長室の電話が鳴った。それは世界政府のクロークスから連絡を受ける前日であった。
 執務中だったロジャーが受話器を持ち上げると、意外な相手からの第一声に静かに驚く。

『初めまして。わたくし異端カルトという組織の支持役を務めております…ミゲルと申します』
「……これはこれは。初めまして、代表取締役社長のハロルド・ロジャーです。こちらの番号は依頼専用となっております。お掛け間違いでは?」

ハハハと笑い飛ばしたミゲルの大声に、ロジャーは受話器を耳から遠ざけた。

『依頼したい事があります。依頼主としましては、日本国首相のミスター・トノザキなのですが…此処はドイツ語堪能な私が代わりに、と』

対立している筈の組織からの依頼。今すぐに受話器を戻しても良い。しかし、この調子だと切ってもまたすぐに掛けてきそうだと思い、大人しくその依頼内容を聞き入れる事にしたロジャー。


『まず依頼に際しまして……キョウヤ・ウガミ君……彼は良いですね。実に優秀です。あの性格のお父様からどのように搾精されたのかも気になる所ではありますが、それはまた今度じっくりお聞きいたしましょう。愛した男のクローンを無理矢理孕ませられたお母様…可哀想で良いですね。よく歪まずにあんなに良い子が育ちましたよ』


かつてロジャーがシエナを託斗から引き離す為に行った非道。何故この男はその詳細を知っているのだろうか。そう疑問に思うのと同時に、過去の行いの一つ一つの罪を突き付けられているような感覚に陥り、ロジャーは眉間にグッと力を込めた。

『シエナ・シルヴェスターの脳を使った終末兵器が東京の地下深くに眠っている事はご存知ですか?』


 ロジャーはこの時初めて零式自鳴琴の存在を認識した。詳細なスペック、製作者、壱式と呼ばれている起動の為の鍵となる存在についても。



…………………………………………………………………………………

『日本政府は明日から、その零式の設計図から作り出した弍式自鳴琴と呼ばれる機械兵器を投入して国民狩りを始めていきます。東京を更地にしたいのだそうです』

 指導者による国民の大量殺戮。いずれ他国にも進出しようというこの機械兵器の台頭には真の狙いがあった。それが、世界政府を動かして本物の零式を起動させると言う事。

『日本人はコツコツと積み重ねる事が得意だし、好きみたいですけど……私にはとてもじゃないけど耐えられません。手っ取り早く地球全体を焼き尽くしたくて仕方ない』

 世界政府の起動させた零式自鳴琴のコントロールを奪取し、その絶望的な破壊力で世界中の国々に攻撃を仕掛けたいというのがこの男の願望であった。
 まるでSF映画の様な現実の物とは俄かに信じ難いミゲルからの情報を整理するのに、暫くの時間を要した。そして、肝心なのはまだ彼が『依頼』について話をしていないという事。

『話が逸れてしまいましたね…申し訳ない、私の悪い癖です。さて…楽団ギルドにお願いしたいのは、第一に…世界政府に対する揺動です』

元世界政府の人間であった彼は裏から手を回し、零式起動に必要な電力確保を楽団ギルドに依頼するよう仕向けるのだと言う。そこで彼らの目を欺いて世界政府の計画を破綻させたいという訳である。
 しかし、この時点でミゲルの依頼内容と先の発言との間で矛盾が生じていた。異端カルトは零式自鳴琴を起動させたい筈だというのに、それを妨害せよとの事。

「起動までは世界政府の動きを野放しにした方が良いのでは?」
『いえいえ。零式自鳴琴が格納されている場所の操作盤…あそこの物理的な鍵が手に入れば彼らは用済みなんですよ。電力を確保したとなれば、スタッフを日本に送り込んで起動の準備に入る筈……まあ、物理鍵は我々で奪い取りますのでご心配無く』
これから世界政府を相手に強盗しようというのに、やけに明るい声色のミゲル。そして続け様に第二の依頼について語り出した。

『なので……我々としても莫大な電力を確保したい所なんですよ。そうですね…例えば……超絶技巧第21楽章を演奏していただく、とか?』
「…アレは我々も楽譜スコアを探している所でですねぇ……」

結局狙いはそれなのかと、この辺りで受話器を置いてしまおうかと思い始めたロジャーであったが、続くミゲルの発言にそれを思いとどまらせる。

『…ロジャーさん、まだミスター・ウガミの事を疑われていますか?第21楽章、本当は紛失などしておらず何処かに隠し持ってるんじゃないかって。でも、彼の事を信じたい気持ちもあった貴方は、呪曲にまつわる依頼を中心にかなりの人員を割いて調査を進めていた…。人手が足りなくなった最近では、あのキョウヤ・ウガミ君まで投入して…』

何故旋律師メロディスト達の詳細な動きを把握しているのか。異端カルトの情報網に驚きを隠せないロジャー。

『安心してください、ミスター・ロジャー。彼は貴方の腹心で間違いない。何故なら、第21楽章は存在しないからですよ』
「…存在……しない?」

耳を疑うロジャー。それでは、託斗は嘘をついていたという事なのだろうか。

『存在しないが……存在している、そう言う事ですよね?と、日本を発つ直前、彼に尋ねたんですよ。そうしましたら、ニコリと上品に笑ってらっしゃいましたので…恐らくそう言う事なんです』
回りくどい言い方をする男だと苛立ちを覚え始めたロジャーの心情を察して、ミゲルは咳払いをして声色を変えた。


…………………………………………………………………………………


『超絶技巧全20曲を同時に演奏する…つまり合奏する事によって、第21楽章になる……私はこう考えました。天地開闢の力……たった20人の演奏とて、そこから生み出される音エネルギーは膨大なものになると……』

 合奏。音エネルギーの武力転用が可能であると世間に認知されたその日から、音楽否定派の国々では最も危険な行為として取り締まりの対象になってきた演奏方式。
 託斗が本当に第21楽章を自らの曲の中に隠していたとしたら……それが意図するのは、世界の風潮に対する反抗心や、純粋に音楽を娯楽として楽しむことのできたあの時代への羨望。まったくもって、彼らしいと言える。

「……第21楽章の合奏については、タクト本人に聞いてくれ。奴が良しと言えば人を貸す事自体は許可しよう」

超絶技巧の災厄について一番良く理解しているのは託斗本人である。ハイリスクだと考えれば協力はしないだろう。

『ご本人と直接交渉して良い、と!それはありがたいです。ウチから二人ほどウィーンに向かわせますので、何卒警戒なさらずにお願い致します』

ガチャリと勢い良く切られた通話。せっかちで自分勝手な奴だという感想を抱きながら、ロジャーは受話器を置いた。
 そして、再度受話器を持ち上げると地下の一室に電話を掛けた。懲罰房の監視をしていた人間伝いに託斗へと繋げられる。

『はいはい、ロジャー?もう出て良い?ヤッター!』
「そう言う所だぞ、タクト……全く、恐れ入ったよ。お前の読み通り、あちらから依頼があった。言われた通りに回答しておいたが……」

 オーストリアから戻ったタクトは、この前日懲罰房の中でロジャーと話をしていた。
 異端カルトの人間から依頼を受ける可能性があるから、その時は全て受諾するように…と。

 帰りの飛行機の中でオルバスの設計図を読了していた託斗は、全てを理解していた。シエナの身体がどのように扱われたのかも。

『世界政府の人が来たら、僕は何も知らなかったテイで絶望してみせるよ。……本当にかなり落ち込んだし、絶望したからさ』

本心を露呈した託斗は、長くため息を吐いた。

『……僕は逃げないよ、ロジャー。シエナにあんな事しなくたって良かったんだ。……でも、もう何もかもが悪い方に進んじゃった訳……』

 日本に行かなければ良かった。
 ミーアとあの日カフェテリアに行かなければ良かった。
 オルバスに目をつけられなければ良かった。
 旋律師メロディストにならなければ良かった。

 そして、託斗と出会わなければ良かった。

『……終末兵器を生み出したのは、僕のせいだ。そして、ロジャー…アンタのせいだ。だから……一緒に罪滅ぼしといこうよ。アンタも良い年なんだし、ボケる前に精算しといた方が地獄でもそれなりの待遇受けられるんじゃないの?』






 託斗の言葉を思い出し、噛み締めたロジャー。
 彼は目の前でクロークスが銃を構えているというのに、微動だにしなかった。

「……貴方が私に騙されたと怒り狂ってくれたのなら、役者としては上出来だったようだ」
「何言ってるんだ!!お前のせいで……世界がどうなっても良いのか!?」

両手で拳銃を握るクロークスが米神に血管を浮き上がらせながら叫ぶ。しかし、ロジャーはそれをフッと鼻で笑ってみせる。

「何が可笑しいっ!?」
「……良いよ、どうなっても」

目を見開いたクロークスの方に向かって歩き出したロジャー。一歩、また一歩と近付く度に情け無い叫び声を上げるクロークスの手は震えていた。

「止まれっ!本当に撃つぞ!裏切り者がっ!!」

恐怖のあまり遂に引き金を引いたが、飛び出した弾丸は大きく外れ、天井にめり込む。

 カランカランと甲高い音を立てながら床を転がる薬莢。

 銃身を握り、硝煙の立ち上る銃口に自らの額を押し付けたロジャーは、瞬き一つせず真っ直ぐにクロークスを見据える。



「最初に我々を裏切ったのは世界の方じゃないか…なぁ、そうだよなウィリアム…」





 雄叫びの後に響いた銃声。
 





 そして、ロジャーの心臓が止まった事を検知したマイクロチップがPHSに信号を送った。







[73] Jusqu’à la fin Ⅱ 完
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