『偏差値75の恋愛ゲーム』~年下は「対象外」の私を、5歳下の幼馴染が逃がしてくれません~

デルまりん

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第2話 約束、覚えてるよね?

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「今日は楽しかったな。……もしよかったら、また二人で出かけませんか?」 

駐車場での別れ際、宗介は車の前で立ち止まった。

「はい!もちろん!是非!今度は私が払います!」 

凛は食い気味に頷いた。

「……楽しみにしてるよ。おやすみ凛先生。気をつけて」

「はい!宗介先生も気をつけてください!」

宗介はそう言うと、車に乗り込み、ゆっくりと発進させた。

宗介を見送ったあと、凛も自分の車に乗り、ガッツポーズをした。

「さすがにこれは脈アリ!勝った!」

今まで負け続けてたけど、やっと白星がついた!
遥や桃香、職場の後輩たちに、次は「彼氏」として堂々と紹介できる。
来月には交際、再来月には両親に紹介、そして来年には……!

大好きな曲をかけ、夜道を走る。
凛のテンションは最高潮だった。

マンションの駐車場に車を置き、部屋に入って上機嫌でメイクを落とそうとした時だった。

ブーッ、ブーッ。

洗面台に置いたスマホが震えた。

今日のお礼メッセージかな?と思い、弾む手つきで画面を覗き込む。

しかし。
表示された名前に、凛の表情は凍りついた。

上村 湊かみむら みなと

心臓がドクンと跳ねる。

この間、遥たちが噂をしたからだろうか。
いや、違う。2月1週目、日曜日。今日はーー。

(……医師国家試験の最終日だ)

試験が終わって予備校の解答速報が出回り、合否の目処が立つ時間帯。

(……まさかね)

凛の脳裏に、6年前、最後に湊と電話した時の記憶が蘇る。

『……その時は結婚してくれる?』

凛は首を激しく振り、過去の記憶を振り払った。

(何か重要な連絡かもしれない……)

凛は恐る恐る、通話ボタンを押した。

「……もしもし?」

『……やっと出た。凛ちゃん?久しぶり。元気だった?』

スピーカーから響いたのは、登校班で泣いていた少年の高い声ではなく、低く、落ち着いた大人の男の声だった。

背筋がゾクリとする。

それは懐かしさではなく、本能的な警戒警報だった。

「……久しぶりね。6年ぶりくらいかしら」

『試験、終わったよ。予備校の解答速報を見て自己採点したけど、合格確実だって。4月からは研修医だよ』

「……そ、そう。すごいじゃない。おめでとう」

短く告げられた合格報告。
凛は姉としての定型文を返した。

窓の外では、北風が音を立てて吹き荒れていた。
まるで、嵐が近づいているかのようだ。

『ありがとう。……凛ちゃん』

予感じみた悪寒を感じていると、電話の向こうで、彼が静かに、けれど逃げ場のない声で言った。

『……約束、覚えてるよね?』

凛の脳裏に、先程振り払った6年前の記憶が再び浮かんできた。

『凛ちゃん、俺、大学受かったよ』

『おめでとう!さすがね、湊』 

『うん。……だから、付き合って』

電話越しの湊の声は真剣だった。

けれど、当時23歳の凛にとって、18歳の男子高校生の彼はただの弟分。
凛は笑って受け流した。

『何言ってんの。あんたはこれから東京に行くんでしょ?医学生なんてモテるんだから、向こうで可愛い彼女作りなさい』

『いらない。俺は凛ちゃんがいい』

『はいはい。……大学生になって、いろんな世界を見て、それでもまだ私のことが好きだったら、その時聞いてあげるわよ』

それは、子供をあしらうための適当な方便だった。
しかし、湊は食い下がった。

『じゃあ、俺が医者になれたら……その時は結婚してくれる?』

あまりに飛躍した話に、凛は驚きながらも真剣に答えた。

『わかったわよ。6年後、あんたが医者になった時……私が独身で、あんたの気持ちが変わってなかったら考えてあげる。だからそれまでは連絡しないで!東京でちゃんと青春してきなさい!』

『……わかった。約束だよ』

あれから6年。
本当に連絡は一度もなかった。

(……まさか、6年間ずっと覚えてたわけ!?普通、東京に行けば彼女のひとりやふたり出来るでしょ!?)

『……黙ってるってことは、覚えてるんだよね?』

「……あー、あれね。覚えてるわよ。もう6年も経つのねー」

凛は努めて平静を装ったが、口から心臓飛び出そうなほど緊張していた。

『凛ちゃん、まだ独身だよね?』

「どうかしら」

『……全部知ってるから。明日の夜、そっち行くからよろしくね』

「え!?明日?」

『うん。夜そっちのターミナル駅に行くから。また連絡する』

「え、ちょっと待っ……」

凛の言葉を待たずに電話は切れた。
窓の外の北風が、轟音を響かせている。

「……嘘でしょ……」

凛の呟きは、風の音にかき消された。
スマホを握りしめたまま、彼女は動けなくなっていた。
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