ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ラスボス王子はヒロインたちと悪役令嬢にざまぁしたいと思います~

陸奥 霧風

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第135話 悪意に満ちた一石二鳥

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メアリーのえげつない策略に嵌まり、

「わ、わかったよ。しょうがない。キミらにこの部屋の所有権を渡すよ」

「随分と物分かりが良いわね。物分かりが良すぎて逆に気持ち悪いわ。急にどうしちゃたのかしら?」

「……………………」


――酷すぎる…… あまりにも酷すぎる。なんて言いぐさなんだ。こんな時はふて寝をするのに限る。




『パチン』

凄まじい音とともに、僕は吹き飛ばされていた。

「アレク、あんた何やってんのよ! バカじゃないの! 女の敵!(激おこ)」

メアリーからの酷い扱いに、ふて寝しようとベッドに入り込もうとした瞬間。メアリーから強烈なビンタと罵倒を受けてしまった。 


――僕はただ寝ようとしただけなのに……


「どうして私達が寝ようとしているベッドに入って来ようとしてるのよ! この変態ヤロー!(激おこプンプン丸)」

「えっ!? 恋愛小説や異世界転生系の小説で若い男女が同室になった時、どちらがベッドで寝るかソファーで寝るかで揉めて、最終的には一緒にベッドで寝るという定番の展開じゃないの? 僕はそのお約束展開を実行したまでで……」

僕はお約束展開を力説する。

「バカじゃないの! それは小説の中だけの話しでしょ。それをリアルにやったら当然、犯罪者になるわよ! この人でなし!」

「こ、この僕が犯罪者?…… ほ、本当なのかクリス? 愛恋小説と俺TUEEE小説通りにしただけなのに犯罪者なのか? 愛恋小説は恋愛初心者対象としたハウツー本じゃなかったのか? ま、まさか僕が犯罪者になるなんて…… こんなことなら恋愛小説や俺TUEEE小説なんて信じるんじゃなかった!」

僕が絶望に打ちのめされている間に、クリスからの追い討ちが襲い掛かる。

「お兄様のドスケべェ! 色欲妖怪エロ河童かっぱ!」

クリスからの暴言が僕の心にクリティカルヒットし、精神的、肉体的双方がボロボロに崩壊してしまった。

「こ、この僕が…… あの伝説の色欲妖怪エロ河童になったってことか? そんな、そんな。今までウハウハエロエロ展開なんて経験したことが無かったのに、いつの間にか色欲妖怪エロ河童になっていたなんて……」

因みに色欲妖怪エロ河童の鳴き声は『エロ エェーロォ エロ エェーロォ(巻舌風)』

あまりの衝撃的事実に混乱している僕に、メアリーがとどめを刺す。

「もう、それは良いから早く部屋から出て行ってもらえる? 私達、眠いんだけど?」

「でも、僕はどこで寝たら良いんだ? 今からじゃ新しい部屋なんて貸してくれないよ」

僕は天才軍師様に縋り付こうとしたが、

「そんなこと私は知らないわよ。廊下にでも寝てたら? ちょうど良いじゃない。ドアの前で寝たら、私達の護衛にもなるし、一石二鳥ってやつよ」


――そんなの一石二鳥なんて、誰も言わない……


僕の寝床は廊下側のドアの前で決定した。ああ、なんて無情なんだ……



昼近くに起床し、部屋へ入ろうとしたが、ドアには鍵が掛けられ部屋に入る事が出来なかった。メアリーとクリスのセキュリティは完璧だったようで、僕を絶対に部屋には入れてやらないぞ! という気概を犇々ひしひしと感じた。


――元々は僕が借りた部屋だったのに……


僕のお金をはじめとした貴重品は部屋の中にある。これでは何処にも行けない。パンすらも買いに行けない状況になってしまった。これは、メアリー達に僕の全財産を人質に取られたようなものだ。


――悪夢だ。僕は悪夢を見ているのか? グランプロスへ来てから、ろくな目にあっていない。お腹は空くし、部屋にも入れない。どうする? 仕方がない、二度寝でもしよう。


やることが無くなり仕方なく、ドアの前でまた寝ることにした。





――2時間後


『ドスッ ドスッ』

てっ! 一体どうしたっていうんだ。こっちはお腹が空いて動けないのに」

僕はドアを見上げると、メアリーとクリスが汚物でも見るような目つきで僕を見下ろしていた。

「そこに寝てたら邪魔よ。さっさと退いて」

「ああ、悪かったよ」

メアリーの一言に文句を付けてやろうと思ったが、反撃が何倍にもなって返って来ることがわかっていたので諦めた。

「わかれば良いのよ。それとアレク、今から朝ごはんを食べに行くわよ。とっとと準備して!」

「うん」


――今から朝ごはんだと!? いい加減、昼はとっくに過ぎてるんだけど!


ふと、あることに気付いた。

「なあ、メアリー」

「何よ。なんか文句でもあるの?」

「文句じゃないけど」

「じゃあ、何よ?」

「メアリーって、いつの間にか僕の事を呼び捨てにしてるよね?」

「――!? べ、別に良いでしょ! は、早くご飯食べに行くわよ!」

メアリーは耳を真っ赤にしながら僕の質問をぶった切り、三人で朝食を食べに出かけることになった。しかし、メアリーの手には僕の財布がしっかりと握られていた……

「あっ!そうだ。アレク、あなた金銭感覚が無さそうだから、私があなたの財布を預かっておくわね。あなたは無駄遣いも無くなるし、私達は…… これも一石二鳥ね!」


――一石二鳥じゃねぇーよ! 僕のお金にたかる気満々じゃないか!


全ての支払いが僕に回って来るという悪夢に怯えながら、トボトボと遅い朝食を食べに歩き出すのであった。
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