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第195話 第三王子は完全無欠のヘタレ!

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母上のおかげでグダグダになってしまった卒業式はトレスベン学院の汚点として、後世に受け継がれて行くことだろう…… その関係者の『シュウ』です。



あのあとが悲惨を極めた。僕らは三号生が退場する時、在校生から祝福の拍手を頂きながら

「あの人が王子様なんだって?」

「モブよ あれは絶対にモブよ!」

「信じられないわ…… 国王夫妻は美男美女なのに…… 現実って時には残酷な顔を見せるのね」

「全く、王族のオーラを感じないわ?」

「似てない」


――最後の言葉が地味に心に刺さります……








僕ら三号生は教室に戻り、舞踏会用の衣装に着替えを始めた。勿論、女性陣は別室である。みんなそれぞれ傾奇者に相応しい衣装だった。そこではお互いの衣装のことには触れない暗黙のルールのように誰も何も言わない静かな時間だった。


着替えも終わり、舞踏会会場でもある。学院内にある大庭園へと向かった。

大庭園に着くとソフィアちゃんとアイリスちゃんは椅子に座り足をブラブラさせながら何やら話し込んでいるようすで、何か企んでいないか心配になる。一方、父上と母上はお母上様とお父上様と共に在校生や卒業生の保護者と歓談中だった。父上と母上は気さくで、思いやりのある、誰でも受け入れる器を持った素晴らしい人格者のフロンシニアス王国ロイヤルファミリーを演出しているようにしか見えなかったのはボクの性格が卒業式で歪んでしまったのかもしれない……


男性陣がようやく集まりだした頃、女性陣も徐々に大庭園に集まりだした。エリスとマリーはまだ来ていないようだ。

しばらくするとエリスとマリーがやって来た。

エリスは赤を基調としたドレスだった。マリーはあまり傾奇者には興味はないのか黄色を基調としたドレスだった。


「やあ、エリスとマリー。二人ともドレスが似合ってるよ」

「ありがとう。シュウ君」

「シュウ。お前も女性を褒めることも覚えたようだな」

「前から知ってるよ!」

「フフフフッ」

「ハハハハッ」

「フッフフフ」

三人で笑いあっていると、三号生が全員集まったようだ。


学院長が秘書の二人を従え

「三号生の諸君、卒業おめでとう。ささやかではあるが料理も用意した。存分に楽しんでくれ!」


学院長の挨拶が終わると僕はエリスをダンスに誘うため探しているとエリスとマリーがお母上様、お父上様、ソフィアちゃん、父上、母上、、ウツボ様、アイリスちゃん、マリーパパ、マリーママ、学院長に捕まっていた。

「どうしたんです?」

僕がその一団に近付くと在校生から

「あっ!? やっぱり親子だったんだ」

「いや、養子とも限らんぞ」

「ガチであの人、王子様だったんだ!」

「私の白馬の王子様像が崩れていく」




――在校生よ。現実とは不条理で出来ているんだよ! ワッハハハハ!………… かなしい……


「シュウ君…… 気にしちゃぁ駄目よ」

「うん……」

エリスがさりげなくフォローを入れてくれた。気分を切り替えてエリスをダンスに誘ってみよう。

「エ、エ、エリス。ぼ、僕とい、い、一緒ダ、ダ、ダ、ダンスお、お、踊ら…… ないか?」
 
緊張しすぎてパニックになってしまった。


「――――――――はい」


「――!? エリス、ありがとう……」

「シュウ君、ダンスのお誘いありがとう」


アイリスちゃんが僕の後ろから

「相変わらずシュウさんはヘタレですね」

「アイリスたん!?」

「アイリスたん?」

「あっ、いや、今のは間違い。何? アイリスちゃん」

「こういう時はスマートに行きましょう。スマートに!」

「わかってるよ。そんなこと……」

「シュウ兄様、ダメダメだあ」

「ソフィアちゃんまで」

「じゃあ、行ってくるよ」

「シュウさん、エリスお姉様の足を踏まないようにしてくださいよ」

「僕はそこまでダンス下手じゃないよ。ちゃんと今日のために練習して来たんだから」

「シュウ兄様。誰と練習したの?」


「……………………」


――今日に限って、ソフィアちゃんのツッコミが尋常じゃない! さすがに悪役巨大カメのぬいぐるみが練習相手とは言えなかった……


僕はその場から一刻も離れたい気持ちでエリスの手を掴み、みんながダンスを踊っている場所まで急いだ。


「シュウ兄様、逃げましたね。アイリスちゃん!」

「ええ、そのようですね。ソフィアちゃん。やはりシュウさんは完全無欠のヘタレで間違いないみたいですね」

「ザンネンですゥ」

「アイリス様。それは仕方がありませんわ。それがシュウなのですから」

「マリーの言う通りね」

「本当に困った子ねぇ…… 誰に似たのかしら」

「セ、セリーナ! オレジャナイゾ! オレハソンナヘタレジャナイゾ!」

「どうしたブルース? 動揺しまくりじゃないか」

「マルクス。変なことを言うな!」

「ブルース。私からの見たら親子揃ってヘタレだと思うわ」

「アリエスまで何を言ってるんだ! 本当に俺はヘタレじゃないぞ! 見てろ! セリーナお、おど、踊りに行くぞ!」

「ハイ、ハイ」


「じゃあ、私たちも行きましょうか?」

「お、おう」

「こういう時、普通は男性から誘うものよ。マルクス」

「……………………」

「あなたも人のこと言えないじゃない……」


「じゃあなんだ~ エミー。俺たちも行くか?」

「なに恥ずかしがってるのよ」

「うっ、べ、別に恥ずかしくは…… ほら行くぞ!」

「ハイよ!」


「ソフィア嬢。私と一曲踊って頂けませんか?」

「ハイ、アイリス様。喜んで!」


「私たちも負けてられないわね。行くわよ。マリー嬢」

「ウツボ様! ちょっと待ってます下さい!」


それぞれがパートナーと共にダンスを楽しんだ。



――サヨナラ トレスベン学院……







トレスベン学院を卒業し、お母上様から大事な話しがあると言うことで、やって来ました! ハルタンへ!


エリスと共にお母上様の居られる執務室にやって来た。

「エリス、シュウ君。お疲れ様。連日で大変ねぇ」

「いえ、そんなことはないです。それで、僕に大事な話しがあるとか?」

「ええ、そうよ。大事な話しよ。シュウ君、私の話しをしっかり聞くのよ」

「はい……」


――一体、これ以上大事な話しってなんなのだろう……
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