転生セイレーンは魔術師に恋をした。〜けれど何故か嫌われているよう。〜

影狼

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遭遇。ー告げるなら何を願う?ー

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男性の名は。
ないだろうに、求めるのは本当なんだな。

その間も、男性は詠唱している。

「すー、すー。」

…………………ぽ、こぽ…………こぽっ…………こぽ………。

未だ消えない恐怖に怯えているが、それでも彼女は耐えることにしたようだ。

…………………ぽ、こぽ…………こぽっ…………こぽ…………ぽわあ………………。

彼女のそばに禍々しい光が、ひとつ出現したようでふわふわと漂っている。

誰かが彼女の名を呼んだような気がした。

誰にも教えてない自らの今の名を。
頭の中に響く声は、低くも不思議な事に落ち着く声だ。

しばらく念話で話をして少し経つと、漂う光は消えてしまったけれど。
どうやら、若干彼女の心は落ち着いたようだ。

少年はそっと寝返りを打つ。

そろそろ、完成するようだよ。

『お、喚ばれるのは嬉しいな。』
そう言いながら、魔法陣から出てきた一人の人物がいた。

…………それで、俺を呼んだからには何か欲しいものがあると見た。
愉快そうに呟いている、その人物は続けて言った。

『本か?ありゃぁ残念だったが、それはどっかの国の「王子サマ」がトンズラした時に持っていかれちまったよ。まあ面白いから放っておくさ!ククク……。
それとも巨万の富か?それから……「不老不死」なんてものもあるが、な。』
「あちら」には「不老不死」だのなんだの、“簡単」には得られない代物だからこそ眉唾物と言われ、信じられてきたものがあるが、ふむ。
だが呼んだ当の本人が、話に耳を傾けつつ顔を上げるとそれを皮切りにして。

……“呼んだからには対価をちぃっとだけ貰う。”“告げて何を願う?”“何が欲しい?”
浮遊しながら男性に近づいて一瞬の沈黙の後に口調を変えて告げる。

「………本当かっ…………!」
言葉が出ないように見受けられた、それはそれとして「甘すぎる」。

それからは早かった。
魔道士魔導師として、歓楽や喜びを享受していた男性がそれとは違った悦びに満ち溢れ高揚するのを体現した声を出して。
そして、口にする願いは。

「あなたと同じく悪魔として生きたい」、との事だ。
「その後は名家に復讐する」とも。

「それらのみが私の目的で、願いだ」……と笑いながら告解告白した。

つまり人の姿すらも捨てて、魔道に堕ちるという訳だ。

彼ら彼女らと同様になるほど、と思うよ。

僕らには瑣末な出来事でね。

悪魔は薄く笑って承諾した。

『その願い叶えよう。』
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