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黒の章
16.違和感
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第16都市を出発しておよそ9時間後。日暮れの少し前に目的地である死の森に到着した一行は、死の森の側での野営は危険と判断し、30分ほど戻った場所に野営に適した地を発見し、そこで一夜を明かした。
翌早朝、再び死の森の入口へと戻った一行は、リカを残して魔導車を降りた。今日より本格的な探索が始まるとあって、装備もそれ相応のものとなっている。
といっても、トウコとリョウは機動性を重視した戦闘スタイルということもあって軽装だ。
トウコは蚕型の魔物の吐く糸に魔力を通した特殊な糸で編まれた、防刃性の白のロングTシャツに、同じく防刃性の黒のレギンスの上にデニムのショートパンツを履いている。腰には小ぶりのウエストポーチを付けており、靴は軍放出品のコンバットブーツだ。太ももには投げナイフを数本装着している。髪は邪魔にならないよう耳の後ろで乱雑に1つに結んでいる。
リョウも、同様の防刃性の黒のロングTシャツにコンバットベスト、黒のズボンで腰には短剣を2本差しており、足元はトウコと同じ軍放出品のコンバットブーツだ。
対してマリーはというと、下衣はリョウとほぼ同じだが、上半身裸で昨日使用した万力鎖よりは小型の、それでも3メートルはあるそれを腰にぐるぐると巻き付け、背中にバトルハンマーを背負っている。
トウコとリョウは前述の通り、機動性を重視した装いだがマリーに関しては「筋肉こそが最大の装甲」というマリー曰く筋肉の哲学によって上半身は裸である。
ヨシは、必要な荷物が入った大きなバックパックを背負い、白いシャツに茶色のズボンで、何らかの魔物の鱗を使用しているであろう胸部のみを覆うプレートと、それと同じ手甲と膝当てをつけている。
そもそもこの世界において、重装備の者はあまりおらず、ヨシのような装備が一般的だ。
というのも、魔力障壁と呼ばれる魔力を物理化した青い壁のようなものを、魔力を持つものならば誰でも使用することができるからだ。使用する魔力によって強弱が決まるため、保有魔力が高い者ほど強い障壁を張ることができる。そのため、保有魔力が弱い者の中には重装備で固める者もいるし、また魔力が高い者でも魔力障壁以外に魔力を使用したいがために、重装備をしている者も少数ながら存在する。
「あはははは!マリーさんすごーい!戦う男って感じ!」
マリーの姿を見たリカが無邪気な歓声を上げる。
「リカちゃん!そこは戦乙女っていうところよ!」
満更でもなさそうな雰囲気で応えるマリーの隣でヨシが遠い目をして「ヒーラー・・・?」と呟く。それを見たトウコとリョウが苦笑しながら言う。
「まあ、私らは全員がアタッカーのようなものだからな。」
「純粋な筋力勝負だったら俺もトウコも敵わねーし。」
「やめてちょうだい!ただの石ころで魔物を破裂させるような怪力は私にはないわよ!」
「クソ重い鎖を振り回す怪力は俺にはねーよ。」
「とりあえず、マリーさんに守ってもらえるのであれば、安心だということはよく分かりました・・。」
装備品や携行品の最終確認を終えた一行はいよいよ探索へと出発するが、ここでリカとはいったん別行動になる。遺跡にはもちろん死の森にも魔導車は入れないためだ。リカは、来る途中に休憩で立ち寄った集落で待機し、5日後の昼過ぎに再度ここで4人と合流する予定だ。
「リカちゃん、気を付けてね。」
マリーが心配そうにリカに声をかける。
「はい!ありがとうございます!魔物を見つけたら一目散に逃げます!それに、一応武器もありますよ!」
そういってリカが取り出したのはハンドガン――魔導銃だ。魔導銃は魔力が込められた特殊な弾を打ち出すことができる銃である。
「魔導銃か。弾数は十分なのか?」
リョウが聞くと、「それが・・・」とリカが顔を曇らせながら言う。
「十分だとは思うんですけど、予備の弾の全てに魔力は充填できていないんです・・・空っぽの弾も結構あって。その、ちょっとお金がなくって・・・。」
魔導銃に使用する弾は、通常何も込められていない空っぽの状態で売られている。使用者は各々好みに応じて付与師に魔力を付与してもらう必要があり、その分金もかかる。
リョウが小さくため息をつき、「込めてやるから空弾を全部出せ。」というと、リカは顔を輝かせ、ヨシは慌ててリョウを止める。
「そんな!リョウさんいいです!こちらの不手際ですし、今から探索だというのにこんなことのために魔力を使ってもらうわけにはいきません!」
「お前らの不手際なのは間違いないが、リカに何かがあって迎えに来られない状態になったらどうすんだよ。俺らの命も関わってんだ。いいから出せ。属性は何でもいいな?適当に込めるぞ。」
有無を言わせない口調に、ヨシは「すみません・・・」と小さくなり、リカが少し嬉しそうに空弾をリョウに差し出す。差し出された弾に魔力を込めながら、リョウは続ける。
「金がないなら雇い主、今回で言うと組合だな。組合に交渉してその分の金を出させろ。
さっきも言ったが、運転手の命だけじゃなく俺らの命も掛かっていることの責任を持て。」
リョウの言葉にヨシとリカが反省しているのを横目に、トウコはリョウの行動を少し以外に思った。
リョウは基本的に人に興味を持っていない。トウコに対しては異常な執着心を見せ、またママリーのことは仲間だと思っているからか例外だが、それ以外の人間は路傍の石ころくらいにしか思っていない節がある。
リョウが2人に言ったことは普段ならばマリーが言うようなことで、現にマリーは2人に注意しようとしていた。それなのに、それを制するかのように先にリョウがあのようなことを口にしたのがトウコには意外だった。マリーも少し意外そうな顔をしているので、トウコと同じことを思ったのだろう。
リョウが興味を持った、あるいは気に入ったのはリカかヨシかそれとも2人共なのか、トウコは少し気になったか何も言わなかった。
翌早朝、再び死の森の入口へと戻った一行は、リカを残して魔導車を降りた。今日より本格的な探索が始まるとあって、装備もそれ相応のものとなっている。
といっても、トウコとリョウは機動性を重視した戦闘スタイルということもあって軽装だ。
トウコは蚕型の魔物の吐く糸に魔力を通した特殊な糸で編まれた、防刃性の白のロングTシャツに、同じく防刃性の黒のレギンスの上にデニムのショートパンツを履いている。腰には小ぶりのウエストポーチを付けており、靴は軍放出品のコンバットブーツだ。太ももには投げナイフを数本装着している。髪は邪魔にならないよう耳の後ろで乱雑に1つに結んでいる。
リョウも、同様の防刃性の黒のロングTシャツにコンバットベスト、黒のズボンで腰には短剣を2本差しており、足元はトウコと同じ軍放出品のコンバットブーツだ。
対してマリーはというと、下衣はリョウとほぼ同じだが、上半身裸で昨日使用した万力鎖よりは小型の、それでも3メートルはあるそれを腰にぐるぐると巻き付け、背中にバトルハンマーを背負っている。
トウコとリョウは前述の通り、機動性を重視した装いだがマリーに関しては「筋肉こそが最大の装甲」というマリー曰く筋肉の哲学によって上半身は裸である。
ヨシは、必要な荷物が入った大きなバックパックを背負い、白いシャツに茶色のズボンで、何らかの魔物の鱗を使用しているであろう胸部のみを覆うプレートと、それと同じ手甲と膝当てをつけている。
そもそもこの世界において、重装備の者はあまりおらず、ヨシのような装備が一般的だ。
というのも、魔力障壁と呼ばれる魔力を物理化した青い壁のようなものを、魔力を持つものならば誰でも使用することができるからだ。使用する魔力によって強弱が決まるため、保有魔力が高い者ほど強い障壁を張ることができる。そのため、保有魔力が弱い者の中には重装備で固める者もいるし、また魔力が高い者でも魔力障壁以外に魔力を使用したいがために、重装備をしている者も少数ながら存在する。
「あはははは!マリーさんすごーい!戦う男って感じ!」
マリーの姿を見たリカが無邪気な歓声を上げる。
「リカちゃん!そこは戦乙女っていうところよ!」
満更でもなさそうな雰囲気で応えるマリーの隣でヨシが遠い目をして「ヒーラー・・・?」と呟く。それを見たトウコとリョウが苦笑しながら言う。
「まあ、私らは全員がアタッカーのようなものだからな。」
「純粋な筋力勝負だったら俺もトウコも敵わねーし。」
「やめてちょうだい!ただの石ころで魔物を破裂させるような怪力は私にはないわよ!」
「クソ重い鎖を振り回す怪力は俺にはねーよ。」
「とりあえず、マリーさんに守ってもらえるのであれば、安心だということはよく分かりました・・。」
装備品や携行品の最終確認を終えた一行はいよいよ探索へと出発するが、ここでリカとはいったん別行動になる。遺跡にはもちろん死の森にも魔導車は入れないためだ。リカは、来る途中に休憩で立ち寄った集落で待機し、5日後の昼過ぎに再度ここで4人と合流する予定だ。
「リカちゃん、気を付けてね。」
マリーが心配そうにリカに声をかける。
「はい!ありがとうございます!魔物を見つけたら一目散に逃げます!それに、一応武器もありますよ!」
そういってリカが取り出したのはハンドガン――魔導銃だ。魔導銃は魔力が込められた特殊な弾を打ち出すことができる銃である。
「魔導銃か。弾数は十分なのか?」
リョウが聞くと、「それが・・・」とリカが顔を曇らせながら言う。
「十分だとは思うんですけど、予備の弾の全てに魔力は充填できていないんです・・・空っぽの弾も結構あって。その、ちょっとお金がなくって・・・。」
魔導銃に使用する弾は、通常何も込められていない空っぽの状態で売られている。使用者は各々好みに応じて付与師に魔力を付与してもらう必要があり、その分金もかかる。
リョウが小さくため息をつき、「込めてやるから空弾を全部出せ。」というと、リカは顔を輝かせ、ヨシは慌ててリョウを止める。
「そんな!リョウさんいいです!こちらの不手際ですし、今から探索だというのにこんなことのために魔力を使ってもらうわけにはいきません!」
「お前らの不手際なのは間違いないが、リカに何かがあって迎えに来られない状態になったらどうすんだよ。俺らの命も関わってんだ。いいから出せ。属性は何でもいいな?適当に込めるぞ。」
有無を言わせない口調に、ヨシは「すみません・・・」と小さくなり、リカが少し嬉しそうに空弾をリョウに差し出す。差し出された弾に魔力を込めながら、リョウは続ける。
「金がないなら雇い主、今回で言うと組合だな。組合に交渉してその分の金を出させろ。
さっきも言ったが、運転手の命だけじゃなく俺らの命も掛かっていることの責任を持て。」
リョウの言葉にヨシとリカが反省しているのを横目に、トウコはリョウの行動を少し以外に思った。
リョウは基本的に人に興味を持っていない。トウコに対しては異常な執着心を見せ、またママリーのことは仲間だと思っているからか例外だが、それ以外の人間は路傍の石ころくらいにしか思っていない節がある。
リョウが2人に言ったことは普段ならばマリーが言うようなことで、現にマリーは2人に注意しようとしていた。それなのに、それを制するかのように先にリョウがあのようなことを口にしたのがトウコには意外だった。マリーも少し意外そうな顔をしているので、トウコと同じことを思ったのだろう。
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