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黒の章
24.理由
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トウコはまた夢を見ていた。
いつか見た、あの紫の小花が咲き誇る草原を満点の星空の下、男と手をつなぎ歩いている。
男が少し緊張した声で言う。
「結婚しよう。」
「まあ・・・!本当?嬉しいわ。」
自分の声とは違う可憐な声が勝手に言葉を紡ぐ。そのまま隣の男を見上げると、息をのむほど端正な、作り物めいた顔をした男がいた。男は紺碧の鎧を身にまとい、同じ色の鞘の剣を腰に下げている。漆黒の髪を風に揺らし、紫の瞳を愛おし気に細めて微笑むと、
「君を一生幸せにするよ。1人になんてさせない。君が死ぬまで僕がずっと側にいる。」
そう言いながら男は唇が触れるだけのキスをした。
トウコが目を開けると男の紫の瞳の中に知らない女の顔があった。女もまた目の覚めるような美人で保護欲を掻き立てられるような顔立ちをしている。
「私もずっと側にいるわ。」
トウコと男は寄り添いながら、満点の星空を見上げた。
「やっぱあの男殺しときゃよかった」
顎の下から聞こえてきた低い声でトウコは目を覚ました。視線を下げると、トウコの胸元から見上げるすリョウの冷たい目と合った。
「リョウ?」トウコが呟くと、「お前また夢見てただろ?」とリョウが言う。
「夢?・・・言われてみれば見ていたような気もするけど。頭がぼうっとしてよく分からないな。なんだ、また私は何か口走ったのか?」と聞くも、
「いや、なんでもねえ。気にすんな。」とリョウは言い、トウコに口付けると体を起こした。
「リョウ起きたの?」
リョウの気配にマリーが声をかける。
「ああ。トウコも起きた。悪かったな。どんくらい寝てた?」
「5時間ってとこね。お昼の少し前よ。トウコ体の調子はどう?」
「大分いい。まだ少し血は足りない気もするが十分動けるよ。」
「そう。ならそろそろ帰還しようと思うけど大丈夫かしら。ゆっくり移動しても、夜には最初の洞窟にたどり着けるでしょ。そこで夜を過ごして、朝から遺跡を出て死の森を抜ければリカちゃんと予定通り合流できるわ。」
「ああ。大丈夫だ。そうしよう。」
「でしたら、食事の用意しますね!と言っても、朝と同じパンとスープですけど!」
明るくヨシが言い、食事の準備を始める。
一行は簡単に食事を済ませると、移動を開始するために休憩地点を出発した。
移動を開始して30分後。一行は、再び元の休憩地点へと戻ってきた。
ヨシが青い顔でへたりこみ、マリーががっくりと膝と手を地面について項垂れ、リョウは遠い目をして壁を背に座り込み、トウコがため息を一つ吐くとリョウの隣に座った。
リョウがタクティカルベストの胸ポケットから煙草を取り出して火をつけると、トウコがそれを奪い口にくわえる。リョウはそれを恨めしい目で見ると、再度煙草に火をつけた。
それを見たマリーが、「あんたたち煙草の臭いで魔物が来たどうすんのよ。」と文句を言うも、「魔物なんかくるかボケ」とリョウが一蹴する。
「あぁ、それもそうね。来るとしたらあっちからでしょうけど、これまでもそんな気配なかったし、ここには主以外いないんでしょうね・・・」と、主がいると言われた方向を見ながら言い、結局マリーも煙草を吸い始める。
そんな3人を青い顔で見つめているヨシを見とがめたトウコが、「ヨシも吸うかい?」と言いながら、リョウの煙草の箱をヨシに放り投げる。
「お前、それ俺の煙草・・・」と再びリョウがトウコを恨めしい目で見やるも、「まあいいや。」と呟くと、虚空を眺めながら煙を吐き出した。
ヨシが「あ、あの。僕は吸わな・・・いえ、いただきます。」と言いながら火をつけ、吸い込んだ瞬間盛大に咽る。
「げほっ、ぼ、ぼく煙草初めて吸いました・・・」
「人生何事も経験だー。よかったなー初めての経験ができて。」とリョウが投げやりに言った。
一行は出発してすぐ、謎の外套の男と出会った分岐点へとたどり着いた。だがしかし、そこにあるはずの、リョウたちがトウコを探して駆けてきた地上へと戻る道はなかった。また、謎の男がトウコを抱えて歩いてきた道も存在しなかった。あるはずだった場所には壁しか存在せず、唯一あったのは一行が今しがた歩いてきた休憩地点へ戻る道、主へと続く道しか存在しなかったのである。
咽ないように恐る恐る煙草を吸いながら、ヨシが尋ねる。
「あの・・これからどうするんですか・・?」
トウコら3人は揃って虚空を眺めながら煙草を吸っている。煙を細く吐き出したトウコが、「この奥にいる主とやらを倒すしかないね」とポツリと言った。
「主が本当にいるのかは分かんねーけど、とにかくこの先に進むしかねーなぁ。」
「道がないんだから、奥に行くしかないわね。もしかしたら地上へと戻る道があるかもしれないもの。本当に主がいたら・・・主を倒して本来の遺跡の姿とやらにしないと私たちは出られないわね・・・。」
3人の答えに、ヨシが「・・・倒せるんですか?」と再度尋ねるも、3人同時に「「「さあ?」」」と返ってきた。
絶句するヨシに、トウコが苦笑しながら「主がどんな存在か分からないからね。私たちはもちろんこれまでに主なんて倒したことがないし、倒そうなんて思ったこともなかった。だからこの世界のどこかに主という存在がいることは知っていたけどそれだけだ。これまでどんな主がいたのかすら知らないのさ。遺跡調査に関することはもちろん下調べして準備もしたけど、主に関する準備はしていない。倒せる、倒せないの判断材料がそもそもないんだよ。」と、そこで言葉を切ったトウコだったが、何かに思い当たったように言葉を重ねる。
「ああ、判断材料が1つだけあるな。私が本調子じゃない。倒せないに1歩前進だ。」
その言葉に「そんな・・・」と声を震わせたヨシに、トウコは「こればっかりは試してみないと答えは出ないさ。だから、とっとと主とやらに会いに行こう。マリーもリョウもなに暗い顔をしてんのさ。ダメだったら死ぬだけだ。ヨシも腹を括りな。」とあっけらかんと言い放った。
「アンタ簡単に言うわね・・・・」とマリーが言うも、トウコは「ここにいたっていつか死ぬだけだろう?」と取り付く島もない。
「よし、決めた。」
突然リョウが声を上げトウコらが何事かと見つめる中、隣に座るトウコに覆いかぶさりながら言葉を続けた。
「マリー、ヨシ。お前らちょっと後ろ向いて30分ほど耳塞いどけ。時間ねーし、手短に終わらせる。トウコ、一発ヤろう。で、主んとこ行こう。」
その言葉にマリーが右手で顔を覆って天を仰ぎ、ヨシが「えっ!ヤる・・・え!?」と顔を赤くして狼狽える。
トウコが「お前は本当にバカだな・・・」と呆れた目でリョウを見るも、リョウは胸を張って悪びれることなく言う。
「今から死ぬかもしんねーだろ?その前にヤっとくのは悪いことじゃない。」
「そういえば、なんだったかしら。ヨシ君、リョウのバカがトウコが落ちたときにくだらないこと言ってたわよね。」
「あ!あれですね!トウコさんのこと絶対許さないって!だから、帰ったら足腰立たなくなるまでヒーヒー言わせて泣かせてやるー!って言ってましたね!」
マリーが脱力しながらヨシに聞くと、ヨシはなぜか力強く断言した。
それを聞いたトウコがニヤリと笑い、リョウを押し退け立ち上がりながら力強く言い切る。
「リョウ、面白いこと言うじゃないか。よし、無事に帰ったら受けて立ってやる。だから、生き延びて全員で帰るぞ。」
「それに加えて、今から一発がいいんだけど、しゃーねーな。今の言葉忘れんじゃねーぞ、トウコ」
「生き延びる理由がくだらなさすぎるわ・・・でも、トウコが泣いたかどうかは知りたいわね。リョウ、教えなさいよ。」
リョウとマリーも口々に言いながら立ち上がった。
「ぼ、僕も知りたいです!」
未だ少し顔を赤くしているヨシも慌てて立ち上がる。
「誰が教えるかボケ!」
「逆にリョウがトウコに泣かせられるかもしれないわね。」
「で、でもそれならすでに昨日・・・」
「うるせーぞヨシ!黙れ!」
「それにしてももうちょっとマシな目標はないの?生き延びる理由がくだらなさすぎて・・」
「主を倒せば宝物庫になるんだろう?一攫千金でいいじゃないか。」
「お。じゃあトウコ。もう働かなくていいぐらい金が手に入ったら結婚しようぜ。」
「え!トウコさんとリョウさん、結婚するんですか!いいですね!」
「しないぞ。リョウ、いい加減あきらめろ。」
トウコたちは賑やかに、主がいるであろう奥の道へと進んで行った。
いつか見た、あの紫の小花が咲き誇る草原を満点の星空の下、男と手をつなぎ歩いている。
男が少し緊張した声で言う。
「結婚しよう。」
「まあ・・・!本当?嬉しいわ。」
自分の声とは違う可憐な声が勝手に言葉を紡ぐ。そのまま隣の男を見上げると、息をのむほど端正な、作り物めいた顔をした男がいた。男は紺碧の鎧を身にまとい、同じ色の鞘の剣を腰に下げている。漆黒の髪を風に揺らし、紫の瞳を愛おし気に細めて微笑むと、
「君を一生幸せにするよ。1人になんてさせない。君が死ぬまで僕がずっと側にいる。」
そう言いながら男は唇が触れるだけのキスをした。
トウコが目を開けると男の紫の瞳の中に知らない女の顔があった。女もまた目の覚めるような美人で保護欲を掻き立てられるような顔立ちをしている。
「私もずっと側にいるわ。」
トウコと男は寄り添いながら、満点の星空を見上げた。
「やっぱあの男殺しときゃよかった」
顎の下から聞こえてきた低い声でトウコは目を覚ました。視線を下げると、トウコの胸元から見上げるすリョウの冷たい目と合った。
「リョウ?」トウコが呟くと、「お前また夢見てただろ?」とリョウが言う。
「夢?・・・言われてみれば見ていたような気もするけど。頭がぼうっとしてよく分からないな。なんだ、また私は何か口走ったのか?」と聞くも、
「いや、なんでもねえ。気にすんな。」とリョウは言い、トウコに口付けると体を起こした。
「リョウ起きたの?」
リョウの気配にマリーが声をかける。
「ああ。トウコも起きた。悪かったな。どんくらい寝てた?」
「5時間ってとこね。お昼の少し前よ。トウコ体の調子はどう?」
「大分いい。まだ少し血は足りない気もするが十分動けるよ。」
「そう。ならそろそろ帰還しようと思うけど大丈夫かしら。ゆっくり移動しても、夜には最初の洞窟にたどり着けるでしょ。そこで夜を過ごして、朝から遺跡を出て死の森を抜ければリカちゃんと予定通り合流できるわ。」
「ああ。大丈夫だ。そうしよう。」
「でしたら、食事の用意しますね!と言っても、朝と同じパンとスープですけど!」
明るくヨシが言い、食事の準備を始める。
一行は簡単に食事を済ませると、移動を開始するために休憩地点を出発した。
移動を開始して30分後。一行は、再び元の休憩地点へと戻ってきた。
ヨシが青い顔でへたりこみ、マリーががっくりと膝と手を地面について項垂れ、リョウは遠い目をして壁を背に座り込み、トウコがため息を一つ吐くとリョウの隣に座った。
リョウがタクティカルベストの胸ポケットから煙草を取り出して火をつけると、トウコがそれを奪い口にくわえる。リョウはそれを恨めしい目で見ると、再度煙草に火をつけた。
それを見たマリーが、「あんたたち煙草の臭いで魔物が来たどうすんのよ。」と文句を言うも、「魔物なんかくるかボケ」とリョウが一蹴する。
「あぁ、それもそうね。来るとしたらあっちからでしょうけど、これまでもそんな気配なかったし、ここには主以外いないんでしょうね・・・」と、主がいると言われた方向を見ながら言い、結局マリーも煙草を吸い始める。
そんな3人を青い顔で見つめているヨシを見とがめたトウコが、「ヨシも吸うかい?」と言いながら、リョウの煙草の箱をヨシに放り投げる。
「お前、それ俺の煙草・・・」と再びリョウがトウコを恨めしい目で見やるも、「まあいいや。」と呟くと、虚空を眺めながら煙を吐き出した。
ヨシが「あ、あの。僕は吸わな・・・いえ、いただきます。」と言いながら火をつけ、吸い込んだ瞬間盛大に咽る。
「げほっ、ぼ、ぼく煙草初めて吸いました・・・」
「人生何事も経験だー。よかったなー初めての経験ができて。」とリョウが投げやりに言った。
一行は出発してすぐ、謎の外套の男と出会った分岐点へとたどり着いた。だがしかし、そこにあるはずの、リョウたちがトウコを探して駆けてきた地上へと戻る道はなかった。また、謎の男がトウコを抱えて歩いてきた道も存在しなかった。あるはずだった場所には壁しか存在せず、唯一あったのは一行が今しがた歩いてきた休憩地点へ戻る道、主へと続く道しか存在しなかったのである。
咽ないように恐る恐る煙草を吸いながら、ヨシが尋ねる。
「あの・・これからどうするんですか・・?」
トウコら3人は揃って虚空を眺めながら煙草を吸っている。煙を細く吐き出したトウコが、「この奥にいる主とやらを倒すしかないね」とポツリと言った。
「主が本当にいるのかは分かんねーけど、とにかくこの先に進むしかねーなぁ。」
「道がないんだから、奥に行くしかないわね。もしかしたら地上へと戻る道があるかもしれないもの。本当に主がいたら・・・主を倒して本来の遺跡の姿とやらにしないと私たちは出られないわね・・・。」
3人の答えに、ヨシが「・・・倒せるんですか?」と再度尋ねるも、3人同時に「「「さあ?」」」と返ってきた。
絶句するヨシに、トウコが苦笑しながら「主がどんな存在か分からないからね。私たちはもちろんこれまでに主なんて倒したことがないし、倒そうなんて思ったこともなかった。だからこの世界のどこかに主という存在がいることは知っていたけどそれだけだ。これまでどんな主がいたのかすら知らないのさ。遺跡調査に関することはもちろん下調べして準備もしたけど、主に関する準備はしていない。倒せる、倒せないの判断材料がそもそもないんだよ。」と、そこで言葉を切ったトウコだったが、何かに思い当たったように言葉を重ねる。
「ああ、判断材料が1つだけあるな。私が本調子じゃない。倒せないに1歩前進だ。」
その言葉に「そんな・・・」と声を震わせたヨシに、トウコは「こればっかりは試してみないと答えは出ないさ。だから、とっとと主とやらに会いに行こう。マリーもリョウもなに暗い顔をしてんのさ。ダメだったら死ぬだけだ。ヨシも腹を括りな。」とあっけらかんと言い放った。
「アンタ簡単に言うわね・・・・」とマリーが言うも、トウコは「ここにいたっていつか死ぬだけだろう?」と取り付く島もない。
「よし、決めた。」
突然リョウが声を上げトウコらが何事かと見つめる中、隣に座るトウコに覆いかぶさりながら言葉を続けた。
「マリー、ヨシ。お前らちょっと後ろ向いて30分ほど耳塞いどけ。時間ねーし、手短に終わらせる。トウコ、一発ヤろう。で、主んとこ行こう。」
その言葉にマリーが右手で顔を覆って天を仰ぎ、ヨシが「えっ!ヤる・・・え!?」と顔を赤くして狼狽える。
トウコが「お前は本当にバカだな・・・」と呆れた目でリョウを見るも、リョウは胸を張って悪びれることなく言う。
「今から死ぬかもしんねーだろ?その前にヤっとくのは悪いことじゃない。」
「そういえば、なんだったかしら。ヨシ君、リョウのバカがトウコが落ちたときにくだらないこと言ってたわよね。」
「あ!あれですね!トウコさんのこと絶対許さないって!だから、帰ったら足腰立たなくなるまでヒーヒー言わせて泣かせてやるー!って言ってましたね!」
マリーが脱力しながらヨシに聞くと、ヨシはなぜか力強く断言した。
それを聞いたトウコがニヤリと笑い、リョウを押し退け立ち上がりながら力強く言い切る。
「リョウ、面白いこと言うじゃないか。よし、無事に帰ったら受けて立ってやる。だから、生き延びて全員で帰るぞ。」
「それに加えて、今から一発がいいんだけど、しゃーねーな。今の言葉忘れんじゃねーぞ、トウコ」
「生き延びる理由がくだらなさすぎるわ・・・でも、トウコが泣いたかどうかは知りたいわね。リョウ、教えなさいよ。」
リョウとマリーも口々に言いながら立ち上がった。
「ぼ、僕も知りたいです!」
未だ少し顔を赤くしているヨシも慌てて立ち上がる。
「誰が教えるかボケ!」
「逆にリョウがトウコに泣かせられるかもしれないわね。」
「で、でもそれならすでに昨日・・・」
「うるせーぞヨシ!黙れ!」
「それにしてももうちょっとマシな目標はないの?生き延びる理由がくだらなさすぎて・・」
「主を倒せば宝物庫になるんだろう?一攫千金でいいじゃないか。」
「お。じゃあトウコ。もう働かなくていいぐらい金が手に入ったら結婚しようぜ。」
「え!トウコさんとリョウさん、結婚するんですか!いいですね!」
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