常世の彼方

ひろせこ

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紫の章

19.再戦

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 「なるほど?よくわかった。」

リョウを呆然と見ていたトウコだったが、リョウに振りほどかれた手を見下ろすと感情が籠っていない声で言葉を発し、次いで腕をだらりと降ろしてリョウとリリアに視線を向けた。
「殺す。」
顔を青ざめさせてリョウを見ていたマリーが、その言葉に恐る恐るトウコを見ると、トウコは全く笑っていない目で口だけを笑みの形にしていた。
「…トウコ?念のために聞くけど、それはどっちを殺すって言ってるのかしら?」
「どっちもだ。」
即答したトウコに、マリーがまた恐る恐る言葉を返す。
「リョウは操られているんだし、まだ許してあげる余地はあるんじゃないかしら?」
「ないな。人の男に手を出した阿呆と、わけの分からない女に唆された阿呆。どっちも殺す。」
「え、ええ…そうよね。そう言うと思っていたけど…ってトウコ!」
そこでマリーが何かに気付いたかのように目を見開き、次いでリョウを見て叫んだ。
「ちょっと!リョウ!トウコが嫉妬してるわよ!焼きもち妬いてるわよ!あんたそんな女の側にいる場合じゃないわよ!トウコが焼きもちよ!!!」
その言葉にリョウではなくトウコが「なるほど。」とまた頷く。
「気に食わない。二度と同じ思いをしたくないな。やっぱり殺す。」
トウコが両拳を叩き合わせながら、その場で跳躍を始める。
「マリー、リョウとあの女には手を出すなよ。周りの雑魚どもを蹴散らせ。」
「…分かったけど、あの女を殺せばリョウは元に戻るのよ。なるべくリョウじゃなくて先に女を狙いなさい。」
「無理だろうな。理性の残っていないリョウが本気で来るんだぞ?」
「そこを何とかしなさいよ!」
「まあ善処する。マリー死ぬなよ!」
「トウコもね!…リョウもよ!」
トウコが地を蹴り前に高く跳躍しながら、口の中で小さく呟いた。
「分かっているさ。」

腰を抱くリョウにしな垂れかかったリリアが、楽しそう笑みを浮かべて手をひらりと振る。
「ふふ。怖い怖い。そんなんだから男に捨てられるのよ。さあ可愛いお人形たち。行きなさい。あの大きいお兄さんがあなたたちの相手よ。」
途端、これまでうつろな目をしていた男たちがゆらりと立ち上がったかと思うと、目を血走らせ、歯を剥き出しにして呻きながらトウコとマリーの方へと殺到した。
殺到する男たちの1人の頭に着地したトウコは、そのまま男の頭を踏み台にして再度前に飛ぶ。
踏み台にされた男の首からボキリと嫌な音が鳴り、首があらぬ方向に向いた男が崩れ落ちる。
次々と男の頭を踏み台にして首をへし折り続けながら前へと進むトウコが叫ぶ。
「マリー!こいつら妙に固いぞ!」
バトルハンマーを振り回しながら、殺到する男たちを叩き潰しているマリーが叫び返す。
「首を折りながら言うセリフじゃないからね!こいつら強化されてるわよ!恐らくあの女が強化してるわね!」
「ふふ。ご名答よ。…いいこと教えてあげる。私自身の力は大したことないの。私の力は付与能力に特化しているから。その代わり、お人形たちはとっても強くなるのよ。」
リリアの言葉にトウコが不敵な笑みを浮かべた。
「マリー!最高だな!リョウが強化されるみたいだぞ!」
「全身の骨を砕いて行動不能にしちゃいなさいよ!骨が砕けたくらいなら私が治せるわよ!」
「名案だ!リョウが大人しく砕かせてくれたらな!」

最後の男の頭を蹴ったトウコがリリアに向かって飛び込む。
リョウがリリアを庇うように前に出ると、魔力石をトウコに向かって投げた。
それを見越していたようにトウコの張った障壁に魔力石の爆発が相殺され、トウコは躊躇うことなくリョウの頭に蹴りを放った。
トウコの蹴りもまたリョウの障壁に阻まれ、リョウが右手の短剣を振ふるう。
トウコが後ろに飛んで避けた。
それを追うようにリョウが地を蹴ってトウコに肉薄すると、両手の短剣を連続して振るう。
リョウの憎しみに満ちた目を見つめ、躊躇うことなく振るわれる短剣を避けながらトウコが言った。
「前回の続きだな。確か私が両腕を切り落とされて、目を潰されたんだったか?」
トウコの言葉にリョウは何も答えない。
「そして私がお前の胸に穴を空けた。」
リョウの攻撃を避けたトウコが不敵に笑ってリョウの側面に回り込む。
「今回はどうなるかな?どちらが死んでもマリーが悲しむぞ。」
側面に回り込んだトウコが飛び上がってリョウの腕に蹴りを放つが、それもまたリョウの障壁に阻まれた。
しかし、トウコは障壁を蹴ってリリアの方へ飛び、右腕をリリアの頭へ振るった。
テロ一味の残党と思われる色無しの男2人が、微笑を浮かべたまま微動だにしないリリアの前へ出てトウコの攻撃からリリアを庇い、別の犯罪奴隷の男がリリアを抱えて後ろへ飛んだ。
トウコの攻撃を食らった色無しの男の体が吹き飛び、トウコはリリアを追おうとしたが咄嗟に横へ大きく飛んだ。
トウコがいた位置で爆発が起こる。
爆炎を突き破ったリョウが、着地したばかりのトウコの首に短剣を振るった。
「ちぃっ…!」
後ろに倒れこむようにして短剣を避けたトウコが、胸元から鮮血を散らしながら盛大に舌打ちして左足でリョウの右足を払う。
リョウが体勢を崩したうちに、トウコは両手を地面についてバク転し、更に後ろに飛んで距離を取った。

互いに距離を取ったトウコとリョウが対峙する。
「くそっ。遠慮なく首を狙ってきやがって。」
トウコが口の中で小さく毒づきながらリョウを見ると、リョウは相変わらず昏い目をしていたが、その目が己の胸元を見ていることにトウコは気付いた。
リョウを気にしながらトウコが胸元に少し視線を落とすと、リョウに切り裂かれたことで防刃性のTシャツの胸元が真っ赤に染まっているが、切り裂かれた布地の間から薄い金色の鎖が見えているのが分かった。
それを見たトウコがリョウに視線を戻す。
「なんだ?自分の女につけた鎖が気になるのか?それとも返して欲しいのか?喜んで返してやるぞ。」
口の端を歪ませて笑みの形を作ったトウコが言葉を続けた。
「その代わりお前もその短剣返せよ。いや…私が叩き折ってやる。」
トウコが地を蹴りリョウに向かって飛び出す。
リョウも同時にトウコに向かって駆けた。

2人が再び激突する。
リョウから連続して繰り出される斬撃を見切り、時に皮膚を切り裂かれながら攻撃の機会をトウコが伺う。
トウコの心臓に向かってリョウの右手の短剣が突き出される。
それをトウコは体を横にずらして避け、突き出されたリョウの右腕を捕まえた。
捕まえた右腕を外に捻りながら、トウコがリョウに向かって体重を掛ける。
たまらずリョウが顔を顰め体勢が崩れたところで、腕を掴んだままトウコがリョウの胸を蹴って押し倒した。
腕を掴んだままリョウの右肩に己の左ひざを乗せて動きを封じたトウコが、掴んだ腕を折ろうとする。
リョウの腕からみしっと嫌な音がした、その時。
トウコの側面から何かが飛び出してきた。
リョウに気を取られていたトウコは虚を突かれ、対応が一瞬遅れてしまう。
慌ててリョウの腕から手を離してその場から離れようとしたトウコだったが間に合わず、体に何かがぶつかる。
そのままトウコは何かに圧し掛かられたまま吹き飛ばされ、背中から地面へと激突した。
「ぐっ…!」
激突の衝撃で息を詰まらせながらトウコが目を開く。
「…お前!?」
そこには、口の端から泡を飛ばし、血走った目でトウコを見下ろす男―トウコを犯そうとした少尉と呼ばれた男がいた。
男の後ろからリョウが短剣を構えて走り寄ってくるのが視界に入ったトウコの顔に焦りが浮かぶ。
「まずい…!」
口の中で小さく叫んだトウコが男を押し退けようとした時、男がトウコの首に手を掛けて首を絞める。
「く…そっ!」
首を絞められながらトウコが男の腹を思いきり蹴り上げ、男の手が緩んだところで跳ね起きる。
男の背後まで来ていたリョウが短剣を下段から切り上げた。
トウコの右腕が切り裂かれ、鮮血と一緒に男の右手首が宙を舞う。
リョウは手首を押さえて喚く男には構わず、更にトウコに向かって斬撃を繰り出した。
トウコはそれを避けると、右足でリョウの左側面に蹴りを放つ。
避けきれなかったリョウが少し呻いて膝をついた隙に、トウコが後ろに大きく飛んで距離を取った。

「あらあら。せっかく援軍を出してあげたのに、困った子ね。」
リリアがリョウを見ながら、少しも困っていない様子で声を上げた。
「その男、トウコちゃんの知り合いでしょう?その男の息子ともトウコちゃんは知り合いだって聞いたわよ?テロの首謀者に仕立て上げた女に、その男の息子の首を抱えさせるなんて、良い趣味してるわね。」
リリアの言葉にトウコが眉を上げる。
「ああ…娼婦の女と一緒にいたアイツか。首を抱えさせたのは私じゃないが、良い趣味してるというのは同意だな。」
リョウを見ながらトウコが言うと、リリアが楽しそうに言った。
「その男、トウコちゃんのことが大好きみたいよ。憎くって憎くってトウコちゃんで頭がいっぱいなの。」
リリアがぽんと手を叩いて言葉を続ける。
「そうだわ。トウコちゃんの新しい恋人にその男なんてどう?きっと死ぬまで犯してくれるわよ。素敵ね?」
「残念ながら私の趣味じゃないな。」
「そうなの?物は試しって言うわよ?」
小首を傾げたリリアが、蹲り手首を押さえて呻いている男を見やる。
「…ほら、がんばって。大丈夫よ。」
言いながら男に向かってひらりと手を振ふった。
途端、流れ出ていた手首の血が止まり、男が何事もなかったかのように立ち上がると、トウコに向かって駆け出した。
同時にリョウもまた駆け出す。
「その男もそれなりに強いわよ。がんばってね、トウコちゃん。」
「いい趣味してるな。」
歌うように言ったリリアに対し、不敵に笑ったトウコもまた走り出した。

しかし、トウコはリョウと男とは反対側、マリーに群がる犯罪奴隷の男たちの方へと走り出した。
犯罪奴隷の男たちの群れの中へ入ったトウコは、手当たり次第に男たちの襟首を掴むと、
無造作に後ろへと放り投げながら走り続けた。
リョウは自分へと向かって放り投げられた男たちを切り刻みながら、相変わらず昏い目でトウコを追って来ていた。
「ちょっとトウコ!こっち来るんじゃないわよ!私がリョウに殺られるでしょう!」
トウコが近づいて来たことに気付いたマリーが、バトルハンマーで男たちを潰しながら怒鳴る。
「悪いな!ちょっと試したくて!」
「何をよ!?」
「後で話す!」

マリーの側を走り抜け、男たちの群れの出口が見えた辺りで、周り込んだのであろう少尉の男が歯をむき出しにして唸りながら、トウコの前に立ちはだかった。
トウコが側にいた犯罪奴隷の1人を掴むと、血走った目で立ちはだかる男に向かって投げた。
男は自分に向かって投げられた犯罪奴隷を避けると、唸りながらトウコに向かって腕を突き出した。
それを見たトウコが少し目を瞠る。
男が掌を上にして腕を下から上へ振るった。
トウコが少し焦った様子で横へ飛んだ瞬間、トウコがいた地面から巨大な氷柱が3本生まれた。
氷柱の1本がトウコの右足を掠め、氷柱に赤い点が散る。
「こいつ、魔導士だったのか…!」
トウコが小さく叫んだ時、リリアが楽しそうに言った。
「言ったでしょう?それなりに強いって。私の術が効いているから更に強くなってるわよ。」

男が今度はトウコに向かって手のひらを突き出した。
大人の腕程の大きさの氷柱が男の手のひらの前に複数現れ、トウコに向かって殺到する。
「厄介だな!」
言いながらトウコが反転し、トウコを追って来ていたリョウの方へと駆け出す。
リョウが魔力石を投げ、それをトウコ横に飛んで避けた。
投げられた魔力石と男が放った氷柱が衝突し、爆発が起こるのを背後で感じながら、トウコが更にリョウに肉薄する。
リョウの目前まで迫ったトウコに向かって短剣が振るわれた。
トウコは右足を前にして体を倒すと、地面を滑るようにして短剣を避けた。
そのまま滑りながら移動したトウコは、リョウの背後に回ると立ち上がってまた走り出した。

「ちょっと!何で戻って来てんのよ!」
マリーの怒鳴り声に、トウコが少し苦笑しながら叫び返す。
「少しは私の心配もしていいんだぞ!?見ての通り血だらけだ!」
「それはこっちの台詞よ!私だって血どころか色んなものが体にこびりついてるわよ!何でこんなむさ苦しい男どもを相手にしなきゃいけないのよ!とっととあの女を殺りなさいよね!」
「マリーは返り血だけじゃないか!あと少し待ってくれ!」
苦笑しながらマリーに小さく手を振ったトウコが走りながら後ろを窺うと、変わらずリョウと少尉の男が追いかけてきていた。
それを見たトウコは小さくため息を吐くと、前を向いて更に駆けた。

再び適当に犯罪奴隷の襟首を掴んで後ろへ放り投げながら駆けたトウコが、犯罪奴隷たちの群れを抜けた。
そのままトウコはリリアに向かって一直線に走る。
その時、トウコの左肩に衝撃が走った。
左肩に突き刺さったリョウが投げた投げナイフを抜きながら、トウコが据わった目で呟く。
「…後で絶対に殺す。」

やはり微笑んだまま微動だにしないリリアを見据えながらトウコは駆け続けたが、先ほどの氷柱で足を痛めたせいで徐々にリョウに距離を詰められていた。
「追いつかれるのも時間の問題よ?」
楽しそうに言ったリリアに、トウコは何も答えず更に走る。
「あなたの首を抱えさせて、あなたの恋人を正気に戻すのも楽しそうね?」
いいことを思いついたとばかりに言ったリリアに、トウコが言い返す。
「そうなったらアイツ、地の果てまでお前を追いかけるぞ。」
「好みの男に追いかけられるって素敵だわ。」

リリアの本当に嬉しそうな弾んだ声と、すぐ後ろまで迫ったリョウの足音を聞きながら、トウコがリリアの懐に飛び込んだ。
トウコの真後ろに迫ったリョウが、短剣を持った両腕を広げる。
少尉の男が再びトウコの側面に現れ、トウコに向かって手のひらを掲げた。
リョウがトウコの首を刈り取ろうと、その腕を交差させる。

黒髪が宙を舞った。
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