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仲神舜一の場合
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「雪の降る寒い日のできごとだったのう。
十五年前、村で寄り合いがあってのう。寄り合いと言っても、ほとんどは雑談と宴会で終わってしまう。
さて、宴会が盛り上がった頃、杉川駅の駅長と、細田満男が口論になった。お互いのボルテージが上がり、他の村人も参戦する。
まぁ、圧倒的に駅長に味方する村人が多くてな、満男は、形勢が不利だと感じると、酔った勢いもあり怒鳴り散らした。
『お前ら、皆殺しにしてやる!』
その場の誰もが、その形相を見て凍りついた。
満男は、みんなが黙り込んだのを見て調子に乗ったのだろう。今度はわしにむかって凄んだ。
『坊主、涅槃で待ってるぞ!』
わしは、その言葉を聴くと恐ろしさで震え上がった。子供の頃に親を殺された時の恐怖が蘇ってしまった。
さて、満男は、村人たちが何も言い返さないことに満足して帰って行った。その後、自分の身に何が起きるのか知るよしもない。
満男が居なくなると、わしたちは真剣に話し合いを始めた。議題は、細田満男についてじゃ。
『あいつは、やっぱり澤地豊雄の孫だな』
わしが口を開くと、村人全員が頷いた。それぞれの表情が、事の深刻さを物語っていたのう。
『やつの祖母は、細田節子だろ、豊雄と親しかった……。確証はねえが、豊雄の子供を身籠ったに違いねえ。満男は孫だから、呪われた血が薄まったかと思ったが、あいつは豊雄そっくりだ』
『満男の一家は刺激しないように優しく接していたけど、もう、限界だ。俺は、怖くて夜も眠れねえ。あいつの隣の家だから……。和尚さん、満男をなんとかしなければ、俺たちが殺されてしまうかも知れないぞ』
駅長の一言が、みんなの気持ちを決めた。誰もが、その言葉の意味を理解していた。
風の強い、肌寒い夜だった。
無言の一団が、寂しい田舎道を歩いていた。口に出さなくても、誰もが思っていた。
『俺たちは悪くない! 悪いのは、呪われた血筋の満男だ!』とな。
自分の立場を正当化することで、善良な村人は鬼に変わったのじゃ。人が人で無くなる時、恐怖に支配される。他の選択肢もある筈なのに、機械仕掛けの人形のように、わしたちは黙々と行動した。煩悩じゃのう。
そして、各自が思い思いの武器を手にする。鎌、包丁、バット、鍬。それらを、本来の目的では無い使い方をしようとしていたんじゃ。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン
満男の妻は、玄関で尋ねた。
『どちら様でしょうか?』
『駅長です。夜分に申し訳ありません。満男さんに寄り合いでの事をお詫びしたくてお伺いしました』
満男の妻が玄関を開けた瞬間、駅長がバットを振り降ろす。
わしは、端で見ていて背筋が寒くなった。恐らく、普段の朗らかさは演技なんじゃろう。
ギャア~
もの凄い叫び声を上げて、満男の妻は転げ回った。額に瘤ができ、赤黒く膨れて行く。美しかった顔は、グロテスクな別人に変わり果てた。
駅長は、彼女には構わず奧に進む。目標はあくまで満男だった。
駅長の後に続く村人が、満男の妻を包丁で刺した。押さえつけ、ザクザク刃物を抜き差しする。
その中の一人はズボンを下ろし、抵抗できない女に別の物を挿した。血まみれでまぐわう。
満男の妻は、呪いの言葉を吐きながら息絶えた。
妻の叫び声にただならぬ物を感じたのだろう。満男は、素っ裸で浴室から飛び出した。その時、駅長と鉢合わせした。
『てっめぇ!』
それ以上を満男に言わせず、駅長のバットが振り降ろされる。こめかみを掠め、肩を直撃する。満男は、逃げるように応接間へ飛び込む。駅長は、満男の後頭部を殴って倒した。ボールを打ったような快音がして、満男の頭に血が滲んでおった。
さて、わしたちは応接間で裸の満男を取り囲んでおった。そして、今まで気を遣っていた鬱憤を晴らすかのように、一斉に凶器で殴りつけた。骨が砕け、体が腫れ上がり、動かなくなっても、その行為は続いた。
『もう、やめとけ』
わしの一言が、村人を冷静にさせた。火が付いたように幼児が泣いておったのう」
十五年前、村で寄り合いがあってのう。寄り合いと言っても、ほとんどは雑談と宴会で終わってしまう。
さて、宴会が盛り上がった頃、杉川駅の駅長と、細田満男が口論になった。お互いのボルテージが上がり、他の村人も参戦する。
まぁ、圧倒的に駅長に味方する村人が多くてな、満男は、形勢が不利だと感じると、酔った勢いもあり怒鳴り散らした。
『お前ら、皆殺しにしてやる!』
その場の誰もが、その形相を見て凍りついた。
満男は、みんなが黙り込んだのを見て調子に乗ったのだろう。今度はわしにむかって凄んだ。
『坊主、涅槃で待ってるぞ!』
わしは、その言葉を聴くと恐ろしさで震え上がった。子供の頃に親を殺された時の恐怖が蘇ってしまった。
さて、満男は、村人たちが何も言い返さないことに満足して帰って行った。その後、自分の身に何が起きるのか知るよしもない。
満男が居なくなると、わしたちは真剣に話し合いを始めた。議題は、細田満男についてじゃ。
『あいつは、やっぱり澤地豊雄の孫だな』
わしが口を開くと、村人全員が頷いた。それぞれの表情が、事の深刻さを物語っていたのう。
『やつの祖母は、細田節子だろ、豊雄と親しかった……。確証はねえが、豊雄の子供を身籠ったに違いねえ。満男は孫だから、呪われた血が薄まったかと思ったが、あいつは豊雄そっくりだ』
『満男の一家は刺激しないように優しく接していたけど、もう、限界だ。俺は、怖くて夜も眠れねえ。あいつの隣の家だから……。和尚さん、満男をなんとかしなければ、俺たちが殺されてしまうかも知れないぞ』
駅長の一言が、みんなの気持ちを決めた。誰もが、その言葉の意味を理解していた。
風の強い、肌寒い夜だった。
無言の一団が、寂しい田舎道を歩いていた。口に出さなくても、誰もが思っていた。
『俺たちは悪くない! 悪いのは、呪われた血筋の満男だ!』とな。
自分の立場を正当化することで、善良な村人は鬼に変わったのじゃ。人が人で無くなる時、恐怖に支配される。他の選択肢もある筈なのに、機械仕掛けの人形のように、わしたちは黙々と行動した。煩悩じゃのう。
そして、各自が思い思いの武器を手にする。鎌、包丁、バット、鍬。それらを、本来の目的では無い使い方をしようとしていたんじゃ。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン
満男の妻は、玄関で尋ねた。
『どちら様でしょうか?』
『駅長です。夜分に申し訳ありません。満男さんに寄り合いでの事をお詫びしたくてお伺いしました』
満男の妻が玄関を開けた瞬間、駅長がバットを振り降ろす。
わしは、端で見ていて背筋が寒くなった。恐らく、普段の朗らかさは演技なんじゃろう。
ギャア~
もの凄い叫び声を上げて、満男の妻は転げ回った。額に瘤ができ、赤黒く膨れて行く。美しかった顔は、グロテスクな別人に変わり果てた。
駅長は、彼女には構わず奧に進む。目標はあくまで満男だった。
駅長の後に続く村人が、満男の妻を包丁で刺した。押さえつけ、ザクザク刃物を抜き差しする。
その中の一人はズボンを下ろし、抵抗できない女に別の物を挿した。血まみれでまぐわう。
満男の妻は、呪いの言葉を吐きながら息絶えた。
妻の叫び声にただならぬ物を感じたのだろう。満男は、素っ裸で浴室から飛び出した。その時、駅長と鉢合わせした。
『てっめぇ!』
それ以上を満男に言わせず、駅長のバットが振り降ろされる。こめかみを掠め、肩を直撃する。満男は、逃げるように応接間へ飛び込む。駅長は、満男の後頭部を殴って倒した。ボールを打ったような快音がして、満男の頭に血が滲んでおった。
さて、わしたちは応接間で裸の満男を取り囲んでおった。そして、今まで気を遣っていた鬱憤を晴らすかのように、一斉に凶器で殴りつけた。骨が砕け、体が腫れ上がり、動かなくなっても、その行為は続いた。
『もう、やめとけ』
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