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仲神舜一の場合
☆25
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僕は、綾香と一緒に天現寺の奥で、和尚の話を聞いていた。その内容は、かなりショッキングで、罪の告白と言える物だった。
ん、罪の告白?
考えるまでもなく、和尚は細田夫妻殺害の主犯格で、犯罪者だった。伯父が、和尚の話を聞いたとしたら、無事に済ます訳もなく、必ず罰する筈だった。
つまり、和尚が無事だと言う事は、伯父の身に何かが起きたのだろう。
「ありがたい話を聞けて良かったです。急用を思い出しました。失礼します」
僕は、ショックで放心状態の綾香を叩き、帰ろうとする。彼女には悪いが、緊急事態だった。
和尚は、恵比寿顔のままで引き留める。
「慌てるでない、時間は幾らでもある。ゆっくりして行け」
可笑しな物で、以前は安心できた和尚の笑顔が、今では途方もなく怖い。
その時、部屋の四方を囲む襖と障子が開き、目出し帽をかぶったジャージ集団が現れた。
僕らは罠に掛かったようで、集団は手に手に武器を持っている。
思うに、和尚の話は餌であり、獲物の注意を引いている間に、猟師が取り囲む手筈なのだろう。伯父もこの手でやられたのだと思われる。
「和尚、伯父さんは生きているんですか?」
僕の悲痛な訴えを、和尚は軽く流す。
「ここは寺じゃ、成仏しておるぞ」
周りから失笑が漏れ、不謹慎な空気が支配する。
「何て罰当たりで下品な坊主と檀家どもだ!」
僕は憤るが、それで事態が解決する筈もなく、破滅の時は着々と近付いていた。
綾香は、状況が飲み込めないのか? 大きな目を見開いたままだった。彼女には申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、言い訳をすれば、まさか仏に仕える僧侶が犯人だなんて、思いもしなかった。
僕は、取り囲む連中を冷静に見回した。
背の高さはバラバラで、肉の付き方もそれぞれで、腰が曲がったヤツもいる。年齢層は高いと見た。
おそらく、十五年前の共犯者だろう。僕は、その内の一人を特定する自信があった。
勿論、特定できたから何? なのだが、せめて一矢報いる気持ちもあるし、確かめたい事もあった。
「バットマン、今から半年以内に村井武人を殺害しろ」
僕は、こう叫んでいた。
すると、左側に居た背の高い人物に着信が有ったらしく、スマホを確認した。
その人物は、目出し帽を取り、素顔を曝す。正体は、寺の事務職を務める村井武人だった。
「よく、私が居ると解りましたね」
僕は、村井の質問に冷静に答えた。
「勇治にバットマンを差し向けた犯人は村井さんでしょ?
だって、貴方はパズダンを知らないと言いながら、愛車にゲームキャラクターのフィギュアを置いていたからね。嘘をつくって事は、怪しいでしょ?
貴方は、勇治がパズダンを熱心に行うのを見て、復讐に使う積もりだと勘違いしたのでは? つまり、後ろめたい気持ちがあるとしたら、過去に罪を犯した可能性が高く、更に姫岡の恋人の復讐対照としたら、十五年前の犯人しかいない! やられる前にやったんですか?」
村井は、蔑む様な表情を見せた。
まぁ、それも当然だろう。彼も僕と同様で、バットマンの効力を信じていない。
さて、村井に使ったバットマンだが、少し説明の必要がある。これは、僕のスマホの中に入っていたのでは無く、伯父から預かった物に入っていた。ガラケー派の伯父が何故スマホを持っていたかと言うと、後輩刑事の形見だそうだ。彼はパズダンプレーヤーで、バットマンを引き当てていた。
ん、罪の告白?
考えるまでもなく、和尚は細田夫妻殺害の主犯格で、犯罪者だった。伯父が、和尚の話を聞いたとしたら、無事に済ます訳もなく、必ず罰する筈だった。
つまり、和尚が無事だと言う事は、伯父の身に何かが起きたのだろう。
「ありがたい話を聞けて良かったです。急用を思い出しました。失礼します」
僕は、ショックで放心状態の綾香を叩き、帰ろうとする。彼女には悪いが、緊急事態だった。
和尚は、恵比寿顔のままで引き留める。
「慌てるでない、時間は幾らでもある。ゆっくりして行け」
可笑しな物で、以前は安心できた和尚の笑顔が、今では途方もなく怖い。
その時、部屋の四方を囲む襖と障子が開き、目出し帽をかぶったジャージ集団が現れた。
僕らは罠に掛かったようで、集団は手に手に武器を持っている。
思うに、和尚の話は餌であり、獲物の注意を引いている間に、猟師が取り囲む手筈なのだろう。伯父もこの手でやられたのだと思われる。
「和尚、伯父さんは生きているんですか?」
僕の悲痛な訴えを、和尚は軽く流す。
「ここは寺じゃ、成仏しておるぞ」
周りから失笑が漏れ、不謹慎な空気が支配する。
「何て罰当たりで下品な坊主と檀家どもだ!」
僕は憤るが、それで事態が解決する筈もなく、破滅の時は着々と近付いていた。
綾香は、状況が飲み込めないのか? 大きな目を見開いたままだった。彼女には申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、言い訳をすれば、まさか仏に仕える僧侶が犯人だなんて、思いもしなかった。
僕は、取り囲む連中を冷静に見回した。
背の高さはバラバラで、肉の付き方もそれぞれで、腰が曲がったヤツもいる。年齢層は高いと見た。
おそらく、十五年前の共犯者だろう。僕は、その内の一人を特定する自信があった。
勿論、特定できたから何? なのだが、せめて一矢報いる気持ちもあるし、確かめたい事もあった。
「バットマン、今から半年以内に村井武人を殺害しろ」
僕は、こう叫んでいた。
すると、左側に居た背の高い人物に着信が有ったらしく、スマホを確認した。
その人物は、目出し帽を取り、素顔を曝す。正体は、寺の事務職を務める村井武人だった。
「よく、私が居ると解りましたね」
僕は、村井の質問に冷静に答えた。
「勇治にバットマンを差し向けた犯人は村井さんでしょ?
だって、貴方はパズダンを知らないと言いながら、愛車にゲームキャラクターのフィギュアを置いていたからね。嘘をつくって事は、怪しいでしょ?
貴方は、勇治がパズダンを熱心に行うのを見て、復讐に使う積もりだと勘違いしたのでは? つまり、後ろめたい気持ちがあるとしたら、過去に罪を犯した可能性が高く、更に姫岡の恋人の復讐対照としたら、十五年前の犯人しかいない! やられる前にやったんですか?」
村井は、蔑む様な表情を見せた。
まぁ、それも当然だろう。彼も僕と同様で、バットマンの効力を信じていない。
さて、村井に使ったバットマンだが、少し説明の必要がある。これは、僕のスマホの中に入っていたのでは無く、伯父から預かった物に入っていた。ガラケー派の伯父が何故スマホを持っていたかと言うと、後輩刑事の形見だそうだ。彼はパズダンプレーヤーで、バットマンを引き当てていた。
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