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雨川 海(旧 つくね)

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映画2

天使の処刑人

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 マキは、至近距離から額を一発。そして、すぐに部屋へ踏み込む。中の連中が反撃の準備を整える前に、息の根を止めるつもりだった。流石に、相手は堅気では無いので、奥で殺気立った気配がする。ここは、不意討ちの優位を失わないためにも、迅速に行動する必要があった。

 廊下を走り、突き当たりのドアを開く。予想通り、奥の部屋の男たちは、まだ銃を手にしていなかった。

「何じゃ、お前ら!」

 太い声で恫喝されるが、殺し屋JKコンビは慣れている。それに、耳にiPodのイヤフォンを入れていた。
「聞いてませんでした」状態のマキは、五人の内、四人までを撃った。残り一人は、ソファの後ろに逃げ込む。
 マキは、ソファに全弾を撃ち込む。当然、弾切れになり、空のマガジンを、床に落とす。

 ゴトン

 マガジンが床に落ちる音を合図に、男がソファの裏から立ち上がる。居間で寛いでいたのであろう。男はスエット姿だった。だが、寛いだ衣装のまま、彼はあの世へ逝ってしまった。ユキが、このタイミングを待って、狙撃したからだ。

 バイトを終えた帰り道、マキとユキは談笑しながら事件現場から離れる。マキは、ピザ屋の制服を脱ぎ、セーラー服に替えていた。原付は乗り捨て、予め用意しておいた自転車を使う。二人とも、自転車でゆっくり進む。慌てて走れば、怪しまれてしまう。

「なんかさ、一人十万って、安くね?」

 マキが毎度の苦情を述べる。

「そうですね」

 聞き役のユキは、曖昧な感じで返事をする。マキの話より、iPodの音楽の方に興味があったからだ。

「それとさ、あたしとユキが折半って、ズルくね?」

 マキは、同じ事を毎回聞く。そして、ユキは何度も同じ返事をしていた。

「ええと、マキさんが倒した人数分を取って良いです」

 すると、マキも毎回同じ反応を、示す。

「そうじゃなくて、ユキがあたしに感謝してればいいんだって」

 どうやら、マキはユキに必要とされたいようだ。

「マキさんには、お世話になっています。ありがとうございます」

 ユキは、毎度恒例の言葉で締め括る。
 マキは単純な性格なのか? 満足気に笑みを浮かべた。
 その後は、他愛の無い話で盛り上がる。
 そんな二人の姿は、傷付いた獣が、互いの傷口を舐め合っているようにも見えた。



   了
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