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思郷
しおりを挟む「都合つけて来てくれないかな。」
見合いに怖気ついた修ちゃんは
そうオレに泣きついて来た。
「何言ってるの。子供じゃないんだし、
弟が付いて行ってどうすんのよ。」
オレは一人で頑張って来るよう背中を押した。
・・つもりだった。
しかし、
『どんな相手なのか確認しておきたい。』
『女性を前にどんな顔をするのだろう。』
その興味が行動を起こした。
『行かない』約束とは裏腹に
こっそりと会場を訪れた。
有名ホテルのフロントを通った奥には
広い庭が見渡せるオシャレなラウンジがあった。
その入り口には豪華な花々が飾られていた。
生け込みを死角にして様子を探る事にした。
女性はまだ姿を現していないようだ。
修ちゃんは昨夜と同じジャケットを羽織って、
お見合いにはふさわしくない、
気取りのない姿であった。
『え?スーツとか持ってこなかったんだ。』
呆れるより、そこは修ちゃんらしいと
何だか微笑ましかった。
昨夜の頼りない感じやソワソワした感がなく、
どっしり落ち着いているのは
やはりこの見合いが本気じゃないからだろうか。
どちらかといえばオレの方が気が気じゃなく居た。
すると、しばらく様子を伺っていたオレに
「ちょっとぉ、何やってんのよ。
来ないでって言ったでしょ。」
突然見知らぬ女性から言葉を浴びせられた。
周りを見渡したが確実にオレに向けていた。
清楚なその姿に見覚えはなく
ただの人違いのはずだった。
「こっちはアニキの顔を立てて
仕方なく来てるっていうのに。
それに何?変装のつもり?
髪形を変えたりして。
そんな服だっていつも着ないでしょ?
すぐ帰って。ちゃんと報告するから。」
胸を押され帰るよう指示された。
『誰だコイツ?』
オレは怪訝そうな顔をしたが、
それさえすら無視して
「何よ。ほら帰って。」
姿勢を変えさせられ、今度は背中を押された。
誰かと間違っている。
『アニキ。確かそう言ったな?』
スタイルが良く、整った顔は美人と言えた。
化粧がそれを際立てていた。
しかし、怒りに近い表情はオレの評価を下げた。
『おいおいよく見ろよ。
アニキに間違えるなんて。』
いや、アニキなら確認するまでもないはずだがな。
オレは仕方なく玄関へと向かったが、
『修ちゃんの相手は確認したい。』
その願望を果たすべく
再びラウンジへ戻った。
修ちゃんの席の向かいには
女性が到着したばかりのようで、
立ったまま挨拶をする姿に
修ちゃんも慌てた様子で立ち上がった。
しかし目を凝らしてみると、驚きで口が開いた。
その相手は、さっきオレに帰れと指示した、
あの女性だったのである。
『え・・』
道理で綺麗な格好をしていたわけだ。
『いやいや、感心してる場合じゃない。』
おかしな展開ではあったが、二人を観察する事にした。
オレをアニキと見間違える程の女と
修ちゃんはちゃんと会話出来てるかな。
『もしかしたら目が悪いのか、近眼なのか。
コンタクトがずれてるのか』
そんな思いを抱きながら様子を見ていたが、
女性がスックと立ち上がり
さっきの表情をさらに怖くして
こちらに近づいて来た。
オレの存在に気付いたのか。
近眼ではないようだ。
「アニキ、やめてよ。
帰ってって言ったでしょ?
そんなに心配ならちゃんと紹介するから、
ほら、来て」
オレは腕をむんずと掴まえられて、
抵抗虚しく修ちゃんの元へと
連れて来られてしまった。
「突然ですみません。
恥ずかしくてどう言ったらいいか・・
あの、こちら兄です。
私を心配して来てしまったみたいで。」
オレの登場に、修ちゃんは
「は?はぁ・・」
と戸惑いを隠せないでいるようだった。
何も言わないオレに、
「ヤダ、ちゃんと挨拶してよ。
私の立場を考えて。」
そう耳元で焦りをぶつけて来たが、
埒が明くはずがない。
「いや、だから、ほらよく見て。
あなたのアニキでもなんでもないよ。」
その言葉に呆れ果てた顔をした彼女は
「まだそんな言い訳・・」
押し問答を見てた修ちゃんは
女性をなだめるように優しく
「彼は私の弟で耕太です。
あなたのお兄さんとかではありません。」
笑顔で応じた。
彼女はその言葉をどう捉えたのか、
修ちゃんとオレの顔を交互に見つめ、
ポカンとした。
「いや、私の兄・・」
と、そうオレの顔をまじまじ見た彼女は
息を飲んで眼を見開いた。
「ウソ。あれ?ウソ!・・」
イッキに顔色が変わり
驚きがピークに達っしたようだ。
「こんなに似てる人・・ 居る?」
自問自答する彼女だった。
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