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思郷
しおりを挟む次から訪れた客達も、
耕太に似た顔が並んでるのを
興味ありそうにそっと覗いた。
「ところで貴方達、どこで会ったの?」
手を休めたママが聞いた。
「ホラ、兄がお見合いするんだって
ここで言った日を覚えてる?
その翌日に初めて。」
そう応えた耕太は、パンプに向き直って
「タクミとオレの部屋に来た翌日だよ。」
「え、タクミが暴れた次の日?」
パンプは悪気なくそう表現した。
「暴れた?」
圭太は傍で聞いてて驚いた。
その反応にパンプは
『待ってました』とばかりに、
経緯を話した。
「ひでぇヤツだな」
圭太は耕太や修一と会う前に
りえから少し聞かされたが
そこまで詳しくはなかった。
「ホント、嫌なヤツなのよ。
さっきだってあたしに嫌がらせして、
金を貸せだなんて言ったのよ。
あなたが入って来たら
耕ちゃんと間違えて
逃げるように出てったわ。」
「あぁ、俺とすれ違ったヤツかぁ。」
顔を伏せて扉も閉めずに出て行った。
そんな姿を思い出していた。
「ギャフンと言わせたいわ」
憤りをパンプは抱えたようだ。
「少しは冷静になりなさい」
ママにたしなめられたパンプだったが、
アルコールの勢いも加わってか、
かなり昂った様子だった。
そして、当日パンプが帰った後の経緯を
今度は耕太がかいつまんで話し
翌朝ファミレスで会ったのを伝えた。
耕太はタクミの事はもうどうでもよかった。
それよりも、圭太とお互いの共通点などを
話してみたかった。
「ね、オレ達の激似はどう思ってんの。」
その質問には即効
「ま、兄弟なんだろうな。
双子か、もしかしたら三つ子だったりして。」
そう返って来た。
「そんな簡単に・・」
「だって、俺達『他人の空似』を超えてるよ。
耕太だってそう思うだろ?
背格好も声も。手だってほら。
ま、急がなくたって、
いずれ本当の事がわかるって。」
「いずれ、ねぇ。」
それはいつの事になるんだろう。
「りえはさっそくおふくろに電話したみたいだし。」
「えっ、兄弟が居るのか聞いたの?」
「うん。でもはぐらかされたって。」
「ケイタは電話してないの?」
「んー、りえが行動したんなら
近いうちに何かしら展開があるだろうから。」
『そういう事か。』
耕太はもうすでに動きがある事を知った。
「第一、戸籍とか見た段階で
複雑な家庭環境だってわかるし。」
『えっ』
圭太はどこまで知っているのか。
『戸籍謄本とか抄本とかって、
オレはどうしてたんだっけ。』
耕太は思い出していた。
必要な時はオヤジが準備してくれていて、
その詳細を確認もしなかった。
ただ提出に迫られての紙切れとしか
思っていなかった。
それにしても、こう兄弟宣言されても
耕太には今一つピンとは来なかった。
何か触れてはいけない過去があるようで、
誰かが傷つくのではと怖かった。
「それで複雑にはならなかった?」
「複雑?んー。物心ついた時・・
いや、それより前か。
俺は身体が弱かったらしくて、
父親は居なかったから
母や周りに迷惑かけてて、
こうやって育ててもらっただけでも
感謝しなきゃっなって。
きっといろんな事情とかは
大人たちが背負ってるだろうし、
時が来れば明らかになるから
紙の内容は気にしないようにした。
俺はとにかく健康でいようと。
お陰で一杯いろんな免疫力が付いて
逆に元気になっちゃたみたいだし。」
耕太は自分とは違い、
こう前向きな圭太が眩しく見えた。
ただ、『父親が居なかった』
圭太はそう言った。
圭太と兄弟であるなら
オレの父が圭太の父でもあるわけだ。
すると、りえとは?修一とは?
頭の中を整理しようとしたが
「耕太って、兄さんの事好きだよね」
突然そう振られて驚いた。
「え」
「二人で居た時の雰囲気や、
耕太の目で追う仕草を見りゃ、
何となくわかるよ。
改札口に入る俺達を見る目は
すごく不安そうだったしな。」
ずばり見抜かれていた。
『圭太もまた修ちゃんの事を
恋愛の対象として見てるのだろうか。』
修ちゃんにどんな印象を持ったか
聞いてみたかった。
が、そんな動揺を読まれたのか
「でも心配しなくていいよ。
遊んでもイイタイプだけど
付き合おうなんては思わないから。」
それを耳にした耕太は複雑だった。
傍らで聞いていたママ・ルリ子も
また同様だった。
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