34 / 41
思郷
しおりを挟む『オレと圭太はやはり双子。
でも、他人の子供だった。
オレと修ちゃんは・・
血の繋がっていない他人なんだ。』
耕太は告げられた真実を整理した。
オレは修ちゃんを見た。
修ちゃんもオレを見ていた。
「それじゃわたし、アニキとは
血が繋がっていないんだ・・」
りえが呟いた。
「そういう事かぁ。」
お茶をすすった圭太は
あっけらかんとした言い方をした。
その言動に修一は
『薄々勘付いていたのかもしれない』
そう思った。
「圭太は、わたしの至らなさから
肺炎を起こしてしまってね。
誰かにすがる事は嫌だったけど、
事情が事情で、助けが欲しかった。」
仕方なくサエさんを頼って連絡を取った。
しかしサエさんも家の半壊で力になれず、
事情を修に持ち込んでくれたらしい。
「修さんは『家に直ぐ避難して来い。
落ち着くまで、ずっとここに居ろ』
そう言ってくれて。
その時なのよ、修さんは結局
結婚してなかったんだって知ったのは。
修一さんはもう中学生になっていた。」
修一を見たかおりは懐かしさより
すまなそうな顔をしていた。
「修さんは受け入れてくれたけど、
圭太の病状回復が先だった。
医者から入院を迫られたけど、
当時近くにその設備はなくてね。
静岡に良い病院があると紹介された。
でもお金に余裕なんか無かったから
修さんに借金を申し出たの。
そのお願いに快諾してくれたわ。
耕太さん、もちろんあなたも
一緒に連れて行くつもりだったのよ。
でも、
『方手間に育てるなら置いて行きなさい。
ここでちゃんと面倒見るから。』
って、修さんが説得してくれて、
その言葉を信じて従った。
昔と変わらない修さんに
どれほど感謝してもしきれなかったわ。
静岡に飛んでしばらくすると
圭太は徐々に元気になった。
その間、もちろん修一さんも耕太さんも
忘れた事なんて無かった。」
そこまでで修一、耕太と圭太。
彼等の出生が語られた。
「ね、わたしは・・
わたしは間違いなくママの子よね?」
自分の存在はどこでどう出現したのか。
いたたまれなくなったりえは尋ねた。
「やぁね。そうに決まってるじゃない。」
かおりは笑って答えたが、
りえには今までの経緯を聞かされて
不安を抱えていた。
「だって、わたしは静岡で産まれたのよね。
父親は、父親って誰なのよ。
修一さんとは異父兄妹って事なの?」
りえは、今まで父親の事について
詳しく聞こうとはしなかった。
それを母に聞くのはちょっと怖かったのだ。
「あ、そっか。そういう不安になるか。」
かおりは薄笑みを浮かべて
「りえにも長い間苦労掛けて、
父親の事も話さずに来ちゃったわよね。
今更ながらで申し訳ないけど、ごめんなさい。
謝るわ。ただね、話には続きがあるのよ。」
「圭太に回復の兆しが見えて来た頃、
わたしのお腹に変化が起きた。
赤ちゃんが授かった事に気付いたの。
そう、それがあなた、りえよ。
間違いなく修さんとの子。
修一さんとりえは正真正銘、
修さんとの間に出来たわたしの子供。」
「引き裂かれて離れ離れになった二人が
再会して一つになるのは、
ただただ自然だった。ってわけか。」
圭太がかおりを指さしてウィンクした。
「けど、修さんには知らせなかった・・・
『圭太の病気が治ったら必ず戻って来い。』
そうは言ってくれたけど、
赤ちゃんが出来たのを知ったら
喜んではくれたでしょう。
だけど、修さんには
これ以上迷惑はかけられなかった。
わたしは帰らないで
圭太とりえを育てるのを心に決めた。」
「修一さんとりえが兄妹。
俺と耕太が双子の兄弟。
ここ二人とそちら二人は他人だった
って事か。」
圭太はあっさりと言った。
「他人だなんて・・」
自分の出生と父親が判明したりえは
圭太のように割り切る事とは出来なかった。
「ねぇ、俺の病気のせいで、
昔の男との叶わなかった生活に
飛び込めなかった。
そういう事じゃないの?」
圭太は静かに聞いた。
「いえ、それは違うわ。
修さんの所にしばらく厄介になっていた時、
『わたしが震災で現れてしまって
今まで築き上げた生活を壊したくない。』
って思ったの。
それに、その時の夫を裏切ったわけだし、
いくら災難に遭ってしまって
生存が分からなくなっていても
生きているのを信じるのが
妻としての務めじゃない?
ホント、りえにもすまないと思ってる。
自分の都合だけで
父親の存在を黙り通してしまった。
修一さんは思春期で多感な年頃で
わたしに対しては嫌悪感を抱いたようだった。
そりゃそうよね。事情を知らないわけだし、
見ず知らずの女が飛び込んで
しばらく一緒に暮らす事になったんだもの。
もちろん、母親面するなんて思わなかったし、
出来やしなかった。
でも、耕太の事をとても良く面倒見てくれて、
ここは他人として接しようと距離を置いた。」
0
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
【完結】毎日きみに恋してる
藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました!
応援ありがとうございました!
*******************
その日、澤下壱月は王子様に恋をした――
高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。
見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。
けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。
けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど――
このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。
ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜
古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。
かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。
その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。
ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。
BLoveさんに先行書き溜め。
なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる