悲偽

弾風京作

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思郷

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『オレと圭太はやはり双子。
でも、他人の子供だった。
オレと修ちゃんは・・
血の繋がっていない他人なんだ。』
耕太は告げられた真実を整理した。
オレは修ちゃんを見た。
修ちゃんもオレを見ていた。

「それじゃわたし、アニキとは
血が繋がっていないんだ・・」
りえが呟いた。
「そういう事かぁ。」
お茶をすすった圭太は
あっけらかんとした言い方をした。
その言動に修一は
『薄々勘付いていたのかもしれない』
そう思った。

「圭太は、わたしの至らなさから
肺炎を起こしてしまってね。
誰かにすがる事は嫌だったけど、
事情が事情で、助けが欲しかった。」
仕方なくサエさんを頼って連絡を取った。
しかしサエさんも家の半壊で力になれず、
事情を修に持ち込んでくれたらしい。
「修さんは『家に直ぐ避難して来い。
落ち着くまで、ずっとここに居ろ』
そう言ってくれて。
その時なのよ、修さんは結局
結婚してなかったんだって知ったのは。
修一さんはもう中学生になっていた。」
修一を見たかおりは懐かしさより
すまなそうな顔をしていた。

「修さんは受け入れてくれたけど、
圭太の病状回復が先だった。
医者から入院を迫られたけど、
当時近くにその設備はなくてね。
静岡に良い病院があると紹介された。
でもお金に余裕なんか無かったから
修さんに借金を申し出たの。
そのお願いに快諾してくれたわ。
耕太さん、もちろんあなたも
一緒に連れて行くつもりだったのよ。
でも、
『方手間に育てるなら置いて行きなさい。
ここでちゃんと面倒見るから。』
って、修さんが説得してくれて、
その言葉を信じて従った。
昔と変わらない修さんに
どれほど感謝してもしきれなかったわ。
静岡に飛んでしばらくすると
圭太は徐々に元気になった。
その間、もちろん修一さんも耕太さんも
忘れた事なんて無かった。」
そこまでで修一、耕太と圭太。
彼等の出生が語られた。

「ね、わたしは・・
わたしは間違いなくママの子よね?」
自分の存在はどこでどう出現したのか。
いたたまれなくなったりえは尋ねた。
「やぁね。そうに決まってるじゃない。」
かおりは笑って答えたが、
りえには今までの経緯を聞かされて
不安を抱えていた。
「だって、わたしは静岡で産まれたのよね。
父親は、父親って誰なのよ。
修一さんとは異父兄妹って事なの?」
りえは、今まで父親の事について
詳しく聞こうとはしなかった。
それを母に聞くのはちょっと怖かったのだ。
「あ、そっか。そういう不安になるか。」
かおりは薄笑みを浮かべて
「りえにも長い間苦労掛けて、
父親の事も話さずに来ちゃったわよね。
今更ながらで申し訳ないけど、ごめんなさい。
謝るわ。ただね、話には続きがあるのよ。」

「圭太に回復の兆しが見えて来た頃、
わたしのお腹に変化が起きた。
赤ちゃんが授かった事に気付いたの。
そう、それがあなた、りえよ。
間違いなく修さんとの子。
修一さんとりえは正真正銘、
修さんとの間に出来たわたしの子供。」
「引き裂かれて離れ離れになった二人が
再会して一つになるのは、
ただただ自然だった。ってわけか。」
圭太がかおりを指さしてウィンクした。

「けど、修さんには知らせなかった・・・
『圭太の病気が治ったら必ず戻って来い。』
そうは言ってくれたけど、
赤ちゃんが出来たのを知ったら
喜んではくれたでしょう。
だけど、修さんには
これ以上迷惑はかけられなかった。
わたしは帰らないで
圭太とりえを育てるのを心に決めた。」
「修一さんとりえが兄妹。
俺と耕太が双子の兄弟。
ここ二人とそちら二人は他人だった
って事か。」
圭太はあっさりと言った。
「他人だなんて・・」
自分の出生と父親が判明したりえは
圭太のように割り切る事とは出来なかった。
「ねぇ、俺の病気のせいで、
昔の男との叶わなかった生活に
飛び込めなかった。
そういう事じゃないの?」
圭太は静かに聞いた。
「いえ、それは違うわ。
修さんの所にしばらく厄介になっていた時、
『わたしが震災で現れてしまって
今まで築き上げた生活を壊したくない。』
って思ったの。
それに、その時の夫を裏切ったわけだし、
いくら災難に遭ってしまって
生存が分からなくなっていても
生きているのを信じるのが
妻としての務めじゃない?
ホント、りえにもすまないと思ってる。
自分の都合だけで
父親の存在を黙り通してしまった。
修一さんは思春期で多感な年頃で
わたしに対しては嫌悪感を抱いたようだった。
そりゃそうよね。事情を知らないわけだし、
見ず知らずの女が飛び込んで
しばらく一緒に暮らす事になったんだもの。
もちろん、母親面するなんて思わなかったし、
出来やしなかった。
でも、耕太の事をとても良く面倒見てくれて、
ここは他人として接しようと距離を置いた。」
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