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思郷
しおりを挟む「何だ?髪形なんか変えちゃってよ。
服の趣味も変わった、ってか。
金回り良さそうじゃん。」
舐めまわすように圭太を見た後
「あれっ?」
かおりの存在に気付いた。
「誰?」
「耕太の母のかおりです。そちら様は?」
かおりはイスから立ち上がり挨拶をした。
「へぇ、母親は居ないなんて言っておいて
こうして一緒に居るって事は、
嘘をついてたって事みたいだな。」
挨拶をまともに返せない男だった。
『耕太の知り合いなんだろうが
圭太を責めて、名も名乗らない
この失礼な男は誰だろう。』
かおりは様子を見る事にした。
圭太は、
『この男は自分が耕太と間違えているのだ。』
そう悟った。
そういえば、以前耕太と待ち合わせたバーで
俺を見た途端に店を出て行ったヤツでは・・。
思い出した。耕太を傷つけたヤツだ。
最近悪い噂しか聞かないコイツだ。
いつかちゃんと会ってみたいと思っていた。
が、この部屋へ入って来た態度と
俺とかおりへの対応ロクなヤツじゃない
そう確信した。
「随分失敬な現れ方だけど、何だよ。」
圭太は強い態度でそう言った。
「何だよ、だぁ?
今まで大事にしてやったのに、
気持ちが収まらねぇんだよ。
なぁ、今でもお前の事が好きなんだぜ。
それなのに俺を避けてよう。
俺は深く傷ついてんだぜ。
だから、ほれ、慰謝料っていうか、
別れてぇなら手切れ金っていうか、
そういうのもらってもいいんじゃねぇか?」
『なんだコイツ、金をせびりに来たのか?』
自分に都合がいいように
難癖付けて金を巻き上げようとする
単に調子いいヤツだったのか。
圭太は腹が立った。
「ほう、人を傷つけておいて金だって?」
聞いてた情報をぶつけてみた。
「いや、あれは、ほら、間違いっていうか、
ただ脅かそうと思ったら、パンプが押して来て
弾みで当たっちゃっただけだろう。
それに大した事なかったじゃねぇか。」
「なんだとぉ!」
圭太はタクミのその言い方に我慢が出来ず
タクミに跳びかかり、胸ぐらを掴んだ。
「そんなテメェにびた一文出すかぁ!」
顔を近づけそう叫んでいた。
玄関先まで届いた圭太の声に
反射的にドアを思い切り開いて
「どうしたっ?!」
耕太とりえが入って来た。
その二人を目の前にしたタクミは目を疑った。
「え、な、なんだ?誰だ?」
「タクミ・・・」
この状況を把握出来ずに居る耕太は
「圭太、どうしたんだ?」
そう尋ねた。
「へっ?あ、お前、お前が耕太か。
じゃ、じゃあこいつは・・?」
胸ぐらを掴んだままの男を再び見た。
「俺は耕太の双子の兄弟で、圭太だ。
それと俺達の母親と妹だよ!」
威圧するように応えると、手に力を込めた。
「何?どうしたの?」
状況が飲み込めないりえの当然の疑問だった。
「耕太から手切れ金が欲しいんだってよ。」
「手切れ金?何よそれ。」
もっと話が見えなくなった。
「ちょ、は、離せよ。」
タクミは圭太の手から逃れようと必死だった。
仕方なく解放した圭太から距離を置き、
「俺は耕太と付き合ってたんだよ。
それが、自分の都合で別れようって。
だから、金で綺麗に別れてやろうかなって。」
胸のシャツの乱れを直しながらタクミは言った。
「付き合って・・ですって?」
りえはその言葉をどう捉えたのか。
耕太はタクミから関係をバラされ焦った。
圭太にはすでに知られては居るが、
りえとかおりには自分がゲイであるのを
知られたくなかった。まだ抵抗があった。
しかし、今まさにタクミの口から
その関係が漏れてしまった。
『タクミの登場で全てが知られてしまう。』
耕太はそう確信した。
『まさかこんな形でオレの事が暴かれるとは
思っても居なかった。』
一瞬の静寂の中
「付き合ってた、か。」
口を開いたのは意外にもかおりだった。
「耕太さん、この方を本当に好きだったの?
見た目?なのかしら・・
ま、人と人との関わりは、
その出逢った人間の数ほどあるみたいだから、
そうなったのにはそれなりの理由があるわよね。
でも、選ぶ相手を間違ったみたいだわね。」
「なんだとぉ。」
タクミはかおりを睨んだ。
「慰謝料だとか手切れ金だとかって、
お金が欲しいって事よね?
でもあなた、それを受け取ったとしても
一時的な事で結局何にもならないわよ。
むしろ、これからのあなたの人生に
哀しい汚点として残る事にしかならない。」
「おうおう、自分の子供がゲイで
そのうえ他人様の気持ち傷つけたんだぜ。
そんな人間を産んだテメェにも
責任あるんじゃねのかよ。」
「やめなさいよ、何言ってんの?」
りえが叫んだ。
「うるせー。兄弟そろってゲイで、
その母親と妹のクセによぉ。」
「やめろ、タクミ!」
耕太が言い放った。
「タクミ、オレ達の関係は終わりだって。
もう何度となく話したよな。
理由だって伝えてるはずだぜ。
お前だって納得したはずじゃないか。
その時だって金を請求した。」
「耕太が別れるなんて言い出したから・・
納得したけど、金を請求すれば
戻ってくれるんじゃねぇかな、って。
俺はお前の事が好きだったんだぜ。」
「好きだ?オレを都合良く使ってただけだよ。
会社を辞めてここに転がり込んで、
何度も金を貸したのに、
財布から持ち出す事もした。」
「いや、だからそれは返すって。」
「どうやって?仕事もバイトもしてないのに。
転職して頑張ってるなんて話に騙された。
オレはもうタクミの事は信用してない。
ここに来て、慰謝料だ手切れ金だって言うなら
貸した金を全て返してからにしてくれ。」
「な、なんだよ。
俺にはお前しか居ないんだよぉ。
耕太だって俺を忘れられない。
そうだろ?ここでやり直そうぜ。」
「やり直すだって?やめてくれよ。
お前が他の誰かと付き合ってる事なんか
もうとっくに噂になってるよ。」
「ちっ、パンプのヤツだな。」
「タクミ帰ってくれ。オレを責めるなら許せる。
でも、オレの家族に対しての失礼な言動は
絶対許さない!」
耕太の怒りが他を圧倒していた。
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