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第1話 落選した勇者
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「セリア・ノートリアルさん、あなたの勇者申請は受理できません。志望動機が規定に達していないため、次の審査へは進めません。混み合っておりますので、早急にお帰りください」
僕は突き返された書類を受け取り、愕然とする。目の前には紺碧の瞳を持つ女性が、呆れ顔で僕を見ていた。
胸元の開かれたフリルで飾られたシャツを整え、受付の女性は、僕の後ろに並ぶ男に視線を移す。釣られてみると、筋骨隆々といった出で立ちの男は、赤い鋼の鎧を身につけ、肩には人ひとりほどの大きさを持つ大斧を担いでいた。僕は自分の着込んだ汚れた白シャツとブラウンのスラックスからは、目を背ける。
「どけよ。平民。よく恥ずかしげもなく来れたもんだな」
男が僕の格好を見て、嘲るように笑った。
儀礼中央協会の勇者申請受付所は、きらびやかな鋼の装備をまとった人々で埋め尽くされていた。ごった返す喧騒の中、僕の耳には何も聞こえなくなる。しかし僕は諦めるわけにはいかず、受付の女性に食い下がった。書類を窓口に突き返すと、受付の女性は驚いて体を浮かせる。
「どうしてですか? 僕は猟師として生活しながら、体を鍛えてきました。魔法は使えないけれど、体力では誰にも負けません」
僕の周りで嘲笑が響く。 どんなに笑われても、僕は勇者として協会から認められなければならない。どうにか認めてほしいと懇願しても、受付の女性は頑として首を縦に振らなかった。
それどころか呆れ顔で、書類を僕の目の前でひらひらと振った。
「あのね。勇者になるには確固たる目的が必要なの。そして目的を裏付ける凄惨な過去が大切なのは知っているわね。もう一度、あなたの志望動機を口にしてみなさいよ」
「人に優しくありたいんです。困っている人を助けたい。そして生活を安定させたい」
僕がはっきりとした口調で言うと、周囲の笑い声は大きさを増した。受付の女性は眉間にしわを寄せ、その後で怒りが彼女の目元へみるみる浮かぶ。
「それだったら、平民の私だって同じだわ。たかがそんな理由で勇者にはなれない。血筋も王族の末裔や、神々の現し身でもない。ただの一般家庭の出どころか、汚らわしい猟師の生まれ。自分の身の丈はわかっている?」
「確かにそうですが、せめて次の審査に行けませんか? 二次審査まで進めたら、そこで落ちても勇者一行に加われるんでしょう? 戦士や魔法使いといった適性を見られ、配属が決まる。先ほども言いましたが体力に自信があるんです!」
「どちらにしても、平凡な志望動機しかないあなたには無理。早く帰らないと、あなたには永劫縁のない、本物の勇者さまを呼ぶわよ?」
受付の女性は僕が突き返した書類を、ビリビリと破り捨てた。唖然とする僕を後ろに並んだ男が軽々とつまみ上げる。
「平民はさっさと帰れ。魔王を倒す前に魔獣に殺されるのがオチだ。勇者はな。選ばれたから勇者なんだ」
男は僕を吊り上げたまま、踵を返して歩みを進める。集まった黒の装束姿の男や、紅色の宝石で装飾された三角帽子の女性が、僕を見て笑っていた。僕がどんなに暴れても、男の力は緩まない。
儀礼中央協会の荘厳な扉が開かれた。扉へ続く百を越える長い階段の先には街並みが見え、往来には果物や食料、武器を売る商店が並ぶ。離れていても活気ある声が聞こえてきた。
「じゃぁな。勇者に落選した平民さん。穏やかに一生を勇者のために過ごせよ」
男がつまみ上げた首根っこを振り上げ、僕は投げ飛ばされた。
階段に体を打ち付け跳ね上がる。二度、三度と跳ね上がっては転げ落ち、ようやく階下で止まった。
僕は突き返された書類を受け取り、愕然とする。目の前には紺碧の瞳を持つ女性が、呆れ顔で僕を見ていた。
胸元の開かれたフリルで飾られたシャツを整え、受付の女性は、僕の後ろに並ぶ男に視線を移す。釣られてみると、筋骨隆々といった出で立ちの男は、赤い鋼の鎧を身につけ、肩には人ひとりほどの大きさを持つ大斧を担いでいた。僕は自分の着込んだ汚れた白シャツとブラウンのスラックスからは、目を背ける。
「どけよ。平民。よく恥ずかしげもなく来れたもんだな」
男が僕の格好を見て、嘲るように笑った。
儀礼中央協会の勇者申請受付所は、きらびやかな鋼の装備をまとった人々で埋め尽くされていた。ごった返す喧騒の中、僕の耳には何も聞こえなくなる。しかし僕は諦めるわけにはいかず、受付の女性に食い下がった。書類を窓口に突き返すと、受付の女性は驚いて体を浮かせる。
「どうしてですか? 僕は猟師として生活しながら、体を鍛えてきました。魔法は使えないけれど、体力では誰にも負けません」
僕の周りで嘲笑が響く。 どんなに笑われても、僕は勇者として協会から認められなければならない。どうにか認めてほしいと懇願しても、受付の女性は頑として首を縦に振らなかった。
それどころか呆れ顔で、書類を僕の目の前でひらひらと振った。
「あのね。勇者になるには確固たる目的が必要なの。そして目的を裏付ける凄惨な過去が大切なのは知っているわね。もう一度、あなたの志望動機を口にしてみなさいよ」
「人に優しくありたいんです。困っている人を助けたい。そして生活を安定させたい」
僕がはっきりとした口調で言うと、周囲の笑い声は大きさを増した。受付の女性は眉間にしわを寄せ、その後で怒りが彼女の目元へみるみる浮かぶ。
「それだったら、平民の私だって同じだわ。たかがそんな理由で勇者にはなれない。血筋も王族の末裔や、神々の現し身でもない。ただの一般家庭の出どころか、汚らわしい猟師の生まれ。自分の身の丈はわかっている?」
「確かにそうですが、せめて次の審査に行けませんか? 二次審査まで進めたら、そこで落ちても勇者一行に加われるんでしょう? 戦士や魔法使いといった適性を見られ、配属が決まる。先ほども言いましたが体力に自信があるんです!」
「どちらにしても、平凡な志望動機しかないあなたには無理。早く帰らないと、あなたには永劫縁のない、本物の勇者さまを呼ぶわよ?」
受付の女性は僕が突き返した書類を、ビリビリと破り捨てた。唖然とする僕を後ろに並んだ男が軽々とつまみ上げる。
「平民はさっさと帰れ。魔王を倒す前に魔獣に殺されるのがオチだ。勇者はな。選ばれたから勇者なんだ」
男は僕を吊り上げたまま、踵を返して歩みを進める。集まった黒の装束姿の男や、紅色の宝石で装飾された三角帽子の女性が、僕を見て笑っていた。僕がどんなに暴れても、男の力は緩まない。
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「じゃぁな。勇者に落選した平民さん。穏やかに一生を勇者のために過ごせよ」
男がつまみ上げた首根っこを振り上げ、僕は投げ飛ばされた。
階段に体を打ち付け跳ね上がる。二度、三度と跳ね上がっては転げ落ち、ようやく階下で止まった。
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