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第2話 勇者の制度
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僕が体を起こして、見上げる儀礼中央協会は、先端の鋭い中央塔がそびえ、周囲には四方の塔が立ち並んでいた。
中央の塔は勇者を現し、四方の塔は魔導師や付術師、戦士、格闘家といった勇者一行を模しているという。
白銀の金属で作られた建物は、権威と力を象徴しているかのように見えた。
僕はしばらく儀礼中央協会の建物を眺めた後、諦めて立ち上がる。
勇者の塔を基準とし、街は円形に広がっていく。まるで勇者を守るかのように立ち並ぶ建物は、平民で溢れ返っていた。
僕の住む村は、この街並みからさらに外れた場所にある。舗装された道を歩き終え、森の獣道をたどって一日ほどかかる。それは広大な森が広がる裾野にあった。
つい昨日、夢を抱いて旅立ったばかりなのに、僕はもうすべてを失ってしまった。
賑やかな往来のはずなのに、僕の耳には音が聞こえない。歩きながら勇者の適性がないと言う女性の言葉が何度も脳裏で巡った。
勇者制度ができて、もう五十年ほどが経つと聞いた。それ以前から魔王は存在し、魔獣たちも人里を離れた場所に点在していたという。
平民を守るために立ち上がり、魔王へ戦いを挑んだ勇者一行の始祖は、長く続く戦乱の中で、勇者制度を立ち上げた。
危険を伴う仕事であるため、魔王に立ち向かう存在のみが勇者と認められ、それ以外は平民として勇者を支える役割を担わされたのだった。
勇者に選ばれたのなら祝福が与えられ、人知を超えた力が与えられるという。
僕はそんな力はいらなかったが、せめて生活の安定と、誰かに頼られる人間になりたかった。それは僕が猟師であることにも起因するだろうと思う。
猟師は魔獣を狩るという点では勇者一行と共通していた。しかし、猟師は生活のために忌むべき魔獣を食料として狩っている。
だからこそ猟師は忌み嫌われる。それに魔獣を狩るには危険が伴い、生活も安定しない。よって貧しい村で生涯を過ごすのだ。
勇者となれば、少なくとも生活は保障される。加えて、勇者となれば徴収という形で平民から食料や武具の一部を借り受けることができる。そのうえ平民からはまるで王のように振る舞っても許される。そのため、勇者を志望する若者は尽きることがない。他人を勇者として崇め、自分はその糧として生きる一生など、誰も望まないためだ。
それゆえ勇者として認められるため、あえて自分の両親を殺し、不遇な出生だと欺く者すらいるという。勇者の特権が、人々を狂わせるのだ。僕が身の丈を弁えず、希望を持ってしまったのも、その影響である。
「どけ平民! 魔族が出たぞ!」
僕は後ろから突き飛ばされて尻餅をつく。見上げると、空と同じ色をした甲冑と、黄金色の兜を身につけた男がいた。背中には宝玉の散りばめられた剣を抱えている。まぎれもなく勇者の装飾だ。そして甲冑に身を包む巨躯の男があとへと続く。少し遅れて燃えるような赤い長髪をしたローブに身を包む三角帽子の美麗な女性が駆けていった。
勇者一行が駆け抜けていく。平民たちは彼らに声援を送りながら、見送っていた。
僕は咳き込みながら立ち上がる。もう帰ろうと、心の底から思った。
中央の塔は勇者を現し、四方の塔は魔導師や付術師、戦士、格闘家といった勇者一行を模しているという。
白銀の金属で作られた建物は、権威と力を象徴しているかのように見えた。
僕はしばらく儀礼中央協会の建物を眺めた後、諦めて立ち上がる。
勇者の塔を基準とし、街は円形に広がっていく。まるで勇者を守るかのように立ち並ぶ建物は、平民で溢れ返っていた。
僕の住む村は、この街並みからさらに外れた場所にある。舗装された道を歩き終え、森の獣道をたどって一日ほどかかる。それは広大な森が広がる裾野にあった。
つい昨日、夢を抱いて旅立ったばかりなのに、僕はもうすべてを失ってしまった。
賑やかな往来のはずなのに、僕の耳には音が聞こえない。歩きながら勇者の適性がないと言う女性の言葉が何度も脳裏で巡った。
勇者制度ができて、もう五十年ほどが経つと聞いた。それ以前から魔王は存在し、魔獣たちも人里を離れた場所に点在していたという。
平民を守るために立ち上がり、魔王へ戦いを挑んだ勇者一行の始祖は、長く続く戦乱の中で、勇者制度を立ち上げた。
危険を伴う仕事であるため、魔王に立ち向かう存在のみが勇者と認められ、それ以外は平民として勇者を支える役割を担わされたのだった。
勇者に選ばれたのなら祝福が与えられ、人知を超えた力が与えられるという。
僕はそんな力はいらなかったが、せめて生活の安定と、誰かに頼られる人間になりたかった。それは僕が猟師であることにも起因するだろうと思う。
猟師は魔獣を狩るという点では勇者一行と共通していた。しかし、猟師は生活のために忌むべき魔獣を食料として狩っている。
だからこそ猟師は忌み嫌われる。それに魔獣を狩るには危険が伴い、生活も安定しない。よって貧しい村で生涯を過ごすのだ。
勇者となれば、少なくとも生活は保障される。加えて、勇者となれば徴収という形で平民から食料や武具の一部を借り受けることができる。そのうえ平民からはまるで王のように振る舞っても許される。そのため、勇者を志望する若者は尽きることがない。他人を勇者として崇め、自分はその糧として生きる一生など、誰も望まないためだ。
それゆえ勇者として認められるため、あえて自分の両親を殺し、不遇な出生だと欺く者すらいるという。勇者の特権が、人々を狂わせるのだ。僕が身の丈を弁えず、希望を持ってしまったのも、その影響である。
「どけ平民! 魔族が出たぞ!」
僕は後ろから突き飛ばされて尻餅をつく。見上げると、空と同じ色をした甲冑と、黄金色の兜を身につけた男がいた。背中には宝玉の散りばめられた剣を抱えている。まぎれもなく勇者の装飾だ。そして甲冑に身を包む巨躯の男があとへと続く。少し遅れて燃えるような赤い長髪をしたローブに身を包む三角帽子の美麗な女性が駆けていった。
勇者一行が駆け抜けていく。平民たちは彼らに声援を送りながら、見送っていた。
僕は咳き込みながら立ち上がる。もう帰ろうと、心の底から思った。
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