学年一の不良が図書館で勉強してた。

山法師

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101 マリアちゃんの相談事

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「……すげぇな……去年もこんなんだったのか?」

 電車を待っている間に、袋の中の『Bonne Saint-Valentin. Pensant à vous.』のメッセージカードを見つけられて、

「(ありがとう。大好きだよお前のこと)」

 って、涼に言われて。
 そのまま、クッキーとブラウニーを一つずつ食べて、

『幸せ。めっちゃ美味い。光海の作ったの、これから定期的に食いたい』

 そう言ってくれた涼は、学校に着いて図書室で一緒に勉強して、ホームルーム前に入った教室を見て、そんなふうに言った。

「こんな感じでしたね。去年も」

 そこでは、男女関係なく、チョコやお菓子の配り合いが行われていた。

「あ! 橋本! 成川さん! これいる?」

 クラスメイトの一人に差し出されたのは、袋に入ってる、個包装されたアーモンドチョコレート。

「それじゃあ、一つ、いただきます」

 私が一つ、それを取れば。

「……じゃあ、俺も貰う」

 涼も一つ、アーモンドチョコレートを取った。
 そこから、ギモーヴ、トリュフチョコ、小さい板チョコ、おかき、ソフトキャンディ、ミニドーナツ、などなど。
 沢山のお菓子を、持っていたエコバッグに入れた。

「こういうのだったら、俺も、持ってきて大丈夫だったかな」

 お菓子をリュックに仕舞いながら、涼が言う。

「全員が全員、持ってきてる訳じゃないですけど。そう思うなら、次の時は持ってきて良いんじゃないんですか? もしくは、ホワイトデーの時とか」
「ホワイトデーもこんなんなの?」
「こんなんですね」

 言ったら、

「世界が違う……」

 涼が、そんなことを呟いた。

 ◇

「高峰っち、それ、どこまでが義理チョコ友チョコで、どこからが本命?」

 昼休み、食堂でご飯を食べながら、桜ちゃんが言った。

「さあ……けど、先生に袋貰えて良かったよ」

 困ったように言ったあと、高峰さんは気分を変えるように言った。
 そんな、高峰さんの隣の席には、大きな紙袋が3つ。中身は全て、バレンタイン関連の、お菓子や手紙などである。

「お前、去年もそんなん? 中学の時より増えてねぇか」

 涼の言葉に、

「去年……も、このくらいだったかな。ほら、河南はこういうの緩いからさ、みんな気軽にくれちゃうんだよね」

 高峰さんは、そう言ってから。

「それに、ロッカーとか手元に置いておかないと、増えたり減ったりするから、管理が大変なんだよね」
「ロッカーってお前、まだあんのか」
「あと2袋あるよ。なんとか入れてきた」
「……やべぇな……」

 涼はそう言って、食事を再開し、食べ終え。
 ……ブラウニーを食べ始めた。

「それ、もしかして、成川さんからの?」
「そう。高峰といえどもやらねぇ」
「いや、そんなことしないし、良かったねって」

 う、嬉しいけど、恥ずかしい……。桜ちゃんが微笑ましい顔でこっちを見てくるのが、配慮があるからこそ、恥ずかしい。
 あと、マリアちゃん、ずっと無言で食べてるけど……なんだろ。なんか、考え込んでるような、苦い顔のような。

「マリアちゃん、どうかした?」
「……いや、最近、自分がどうにも分からないだけだ。大丈夫」

 それ、大丈夫なの?

「なんかあったの? マリアちゃん」

 桜ちゃんも、同じように考えたみたいで、そう、聞くけど。

「……それも含めて、良く、分からない。…………ちょっとあとで、相談させてくれ」
「オッケーだよ。相談乗るよ」
「私も乗るよ。今日はバイトも無いし」

 マリアちゃんは、苦いものでも含んだような顔のまま、「ありがとう」と言った。
 そして、放課後。コーヒーチェーンにて。

「愛だとか恋だとか、それがもう、分からない」

 眉毛を寄せたマリアちゃんはそう言って、キャラメルラテに口をつけた。

「……マリアちゃん、ちょっと聞くね。(それってウェルナーさんのことと関係してる?)」

 聞いたら、マリアちゃんは更に苦い顔になった。

「何かな? 恋愛相談かな? みつみんの聞き方からして、複雑そうだね?」
「どこまで聞いて良い? マリアちゃん」

 聞いたら、マリアちゃんは、浅く息を吐いて、

「光海は、それなりに把握してるよな。桜、ウェルナーさんって、覚えてるか?」
「あー、うん。前にマリアちゃんに突撃してきた人だよね」

 マリアちゃんは、また一口飲んで。

「あのあと、少し連絡を取り合っていたけど、気持ちには応えられないって、言って、一旦関係は終わったんだ。けど、また、連絡が来てな、今は、ウェルナーさんと、友人として付き合ってる。……けど、最近、友人なのに、自分が、よく、分からない思考や行動をする」
「……具体的に聞いて、大丈夫? それとも、私が知ってる限りのウェルナーさんのこと、話したほうがいい?」

 言ったら、マリアちゃんは私を見て、

「何か、言われたのか? 私について」

 驚いたような、不安そうな顔で、聞いてきた。

「じゃあ、ウェルナーさんについて、話すね」

 私はそう前置いて、そもそもの、ウェルナーさんにマリアちゃんにまだ恋人が居ないかどうかを聞かれたことから、一番最近の、ヴァルターさんに聞かれたことまで、話した。

「……余計、分からなくなった」

 マリアちゃんは苦しげにそう言って、額に手を当てて、俯く。

「今さ、片方の話だけ聞いたけど。マリアちゃん、ウェルナーさんを別に悪くは思ってないみたいに聞こえるよ? それは合ってる?」

 桜ちゃんのそれに、

「悪い人だとは、思ってない。ただ、自分の中のこれが、そういう感情なのか、それが分からない。……自分から、友人って、言ったんだ。ウェルナーさんはそれを承諾して、友人として接してくれてる。なのに、……自分から言ったのに、それに縛られてる感じがする」

 マリアちゃんはそのまま、高峰さんとの関係を聞かれた時にウェルナーさんを思い出してしまったことや、そのことに対しての憤り、ラインでのやり取りの変化と、それに対する苛立ち、最後に、

「なんだかやりきれなくて、あの、作ったブラウニーとクッキー、ウェルナーさんに渡して、時間あるかって聞いて、近くの喫茶店で1時間くらいお茶した。……もう、よく、分からない。私への態度への、同情なのか、そういう想いなのか、分からない……」

 マリアちゃんは、そのままテーブルに肘をついて、

「姉さんは、素直なんだ。素直に思ったことを口にして、ずっとアレッシオを待ってた。けど、私は姉さんとは違うから……何が素直で何が捻くれてるのか、それすらもう、分からない……」

 呻くように、そう言った。

「マリアちゃん、ちょっと変なこと聞くね」

 桜ちゃんは、そう言ってから、

「ウェルナーさんがマリアちゃんへの気持ちを切り替えてさ、本当の友人として付き合い始めて、ウェルナーさんに好きな人ができたら、安心する?」


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