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7 セリフが悪役のそれ
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これからどうするかを考えようと色々思い出してたら、頭の中が過去回想みたいなことになってた。
切り替えよ。
スケジュール組まなきゃなんないし。
タッパー全てを冷凍室へ仕舞い、冷蔵庫のドアを閉め、ローテーブルからスマホを持ってきて。
「ちょっと相談したいことがあるので、お耳をどうか」
凍らせたバージョンの『特製おやつ』を食べている猫へ、冷蔵庫に背を預けて、スマホで色々確認しながら声を掛ける。
つーか、俺の手、今さらながら思うけど、しっっっろ。
日焼けてたの、完全に抜けてるなぁこれ。
「大学が夏季休暇に入ったら、あ、夏季休暇ってのは、えーと……」
あんま日に当たらん生活してるしなぁ。
大学も保護活動関係も、今んとこ、屋内でやることのが多いし。
移動する時くらいだもんな、日に当たるの。
地元じゃ年がら年中海に潜ってたから、結果的に日焼けしてたけど。
最後に潜ったの、去年の十一月だし。
……わお。半年以上も海に入ってないのか、俺。
「……夏休み……みたいな……夏の間の長い休みというか……」
てかねぇ、肌が白いとさぁ、和風な人間に見えないんですよ俺は。
……あ? だからか?
最近、外国からの観光客っぽい人たちとかに、めちゃくちゃ英語とかで道とか場所とか聞かれたりするなって思ってたけど。
俺、日本住まいの外国人だとか思われてたりした?
なんも考えずに英語で受け答えしてたわ。
聞いてきた人らの役に立ってたっぽいから良いけども。
「いやまあ、夏季休暇とは何かって、その話は重要じゃないんで飛ばします」
まぁ日焼けしてても、和の人間には見えねぇけどな。
俺、地毛が金髪だし。
それを黒く染めてもないんでね。
目の色もね、なんかね、緑なのか黄色なのか黄緑なのかなんなのか、いい加減はっきりしろと思う。
何色って言うのこの眼?
「つまりは夏、夏ですね。夏になったらという話なんですよ」
そもそも顔が和風でも琉球系でもねぇんですよ。
米英風? 洋風? ヨーロッパ? ヒスパニック?
なんて言うのこの顔。
この前も、地域猫関係の活動で初めて顔合わせたおばあ、ご婦人に『外国の方? クールなイケメンさんねぇ。留学生さんかしら?』とか言われちゃったからね。
会話の糸口のつもりの、悪意なんてない言葉だって、分かってるけどさ。
なんにしても、いわゆるアジアンからは遠い見た目してんだなぁって、思っちゃったからね、俺。
「夏になったら、一回、俺、地元に帰ろうかと思ってたんだけどさ」
結局つらつら考えながら喋ってたわ。
はい、もっかい切り替えよ。
「そちらさんは、その間、どうしてたいですか、という相談ですね。どうしたい?」
──どういう意味だ。
食べながら、チラリと向けられた目で聞かれて。
「……いんやぁ……」
過去回想したせいで、結構色々と鮮明に思い出せてしまったから、なんとも言えない居心地の悪さがあるな。
変な半笑いのカオになってる気がするわ。
「お前……かは、まだ不明か。俺が声かけた猫、俺の地元、つーか、近所で倒れてたし」
あんな状態になった経緯も、気になるけど。
その『あんな状態』の、ボサボサを超えて禿げるくらい毛や皮膚がヤバくなって、ガリガリの痩せぎすになる環境に居た猫が、俺の近所で倒れてたんだよ。
観光客がわんさか来る真夏で、真っ昼間で。
ガキの俺が声かける前にも、絶対、何人何十人、下手すると百人超える人間が、あの道、通ってたんだよ。
観光客も、仕事関係の人間も、地元民も、近所の人たちも。
なのに。
『──気にするな。アレが案外、口に合っただけだ』
なんも深く考えてなかったガキの、ままごとみたいな『善意』の行動で。
「あの猫、近所の海に引きずり込まれたし」
身を挺してまで『恩返し』してくれたってことは、さぁ……。
俺以外、誰も、倒れてた『ねこさん』に何もしてなかったっていう、逆説的な証明だろ。
そんで『ねこさん』、ガキの俺を助けて、代わりに連れてかれちゃったっていう。
俺が声かけるまで『ねこさん』に何もしなかった感じの周りにも、思うところ、あるけどさ。
もうね、俺、自分で自分が情けなくて不甲斐なくて、腹立たしいわ。
「嫌なこと思い出させたくない……えー……嫌な思いさせたくないんで、俺が地元に帰ってる間、ツテのあるペットホテルに泊まってもらうとかウチの施設で過ごしてもらうのは、如何でしょうか、という相談です」
俺の話を聞いてか、『特製おやつ』を食べ終えたコイツは、何かを考えるように──思い返しているように、瞳孔も目も細くし、尻尾をゆらりと振った。
「あっちも元気にしてるのは知ってるけど、俺、ちらっとでも顔出さないと、出さないとっていうか、出したい理由がありまして。とっても我が儘で利己的な俺からの相談、お願い、を、考えていただけると有り難いです」
長くて一泊、できるなら日帰りで帰るんで。
俺がそこまで言った時。
「ナァオゥ」
どこか、悪どく聴こえる声で鳴いて。
──良いではないか。こちらから、あの地へ赴くと。
そんなことを、目で語った。
雰囲気やら言葉の感じが、どうにも、「小童一人で帰る」とは違う意味に思えて首を傾げた、俺を見て。
──お礼参りというやつだろう。あの時の礼、たっぷりとくれてやる。
「セリフが悪役のそれ」
目で語ってきた内容に、思わずツッコミを入れてしまった。
ていうか。
「お前、一緒に帰るつもりがあるだけじゃなくて、なんかする気なの?」
聞いたけど、猫は俺を気にすることなく、ふすん、と鼻を鳴らす。
──小童へ手を出した上、忌々しい徴を小童へとつけたのだ。
「手を出し……いやおい待て印って何? なんの話? 初耳なんだが?」
尻尾を揺らした猫は、俺の質問に答える、どころか。
──徴も未だ、完全には消せておらん。消えぬ。だが、消し損ねたあ奴ら、こちらへ来る気配を見せるどころか、動こうともしておらん。あの地で何かをする素振りも感じぬ。おおかた、あの地で存在を癒すことに専念しているのだろう。
「ちょ、一気に喋らんで? 声出してないけど。つか、なんか新情報が続々と出てきたな? あ奴らて、あれって、一匹? 一体? じゃねーの? てか、また何かするつもりなの『あ奴ら』? あそこに居んの『あ奴ら』?」
──あの時は疲弊していたと、それは認めざるを得ん。だが今、だいぶん戻っている。小童のお守りも兼ねて、総ての因果、消し飛ばしてくれる。
「説明しろって。俺の声聞こえてる? あと話がなんか壮大になってる気がすんだけど」
言いたいことは全て言ったとばかりに、猫は調理台から降りた。
そして堂々とした歩みで、破れたTシャツがあった場所、今は、破れたTシャツとバスタオルで俺が作った、丸型のベッドがある場所へ向かう。
子猫用として売っているものをスマホで見せたりして好みを探ろうとしたけど、イマイチ分からず。
下手なものを買うより一回作ってみて反応を見るかと、試しに作り始めたベッドだけど。
作り方を調べたり、サイズを決めていったり、材料を揃えたりと準備を進めるたび。
いつの間にかすぐそばにTシャツが置かれ、元の場所に戻して。
作業を再開した俺の近くに、またいつの間にか置かれ、戻して、いつの間にか置かれ。
ぼろぼろなんだけど、と思ったが、『これも使って作れ』という『命令』を、俺が無視できるはずもなく。
破れたTシャツをベッドの素材として使えるように縫い直すという作業も追加して作ったベッド、を、
『これこそ自分に相応しいベッドだ』
みたいに使うので、はい。
嬉しい以外の感情が湧きませんね。
俺はお前の下僕だよ。
この上なく光栄に思います。
それはそれとして、今、目で語られたことについて。
「……色々、言いたいし聞きたいけど。今言うの、一個だけにしとく」
諦めと呆れの声で前置いて。
さっき思い出してたあれこれを、また思い出しながら。
「俺を助けてくれた『ねこさん』はお前だった訳だ、やっぱ」
言ったら、手作りベッドで丸くなろうとしていた猫は、丸くなろうとしたその姿勢で固まった。
切り替えよ。
スケジュール組まなきゃなんないし。
タッパー全てを冷凍室へ仕舞い、冷蔵庫のドアを閉め、ローテーブルからスマホを持ってきて。
「ちょっと相談したいことがあるので、お耳をどうか」
凍らせたバージョンの『特製おやつ』を食べている猫へ、冷蔵庫に背を預けて、スマホで色々確認しながら声を掛ける。
つーか、俺の手、今さらながら思うけど、しっっっろ。
日焼けてたの、完全に抜けてるなぁこれ。
「大学が夏季休暇に入ったら、あ、夏季休暇ってのは、えーと……」
あんま日に当たらん生活してるしなぁ。
大学も保護活動関係も、今んとこ、屋内でやることのが多いし。
移動する時くらいだもんな、日に当たるの。
地元じゃ年がら年中海に潜ってたから、結果的に日焼けしてたけど。
最後に潜ったの、去年の十一月だし。
……わお。半年以上も海に入ってないのか、俺。
「……夏休み……みたいな……夏の間の長い休みというか……」
てかねぇ、肌が白いとさぁ、和風な人間に見えないんですよ俺は。
……あ? だからか?
最近、外国からの観光客っぽい人たちとかに、めちゃくちゃ英語とかで道とか場所とか聞かれたりするなって思ってたけど。
俺、日本住まいの外国人だとか思われてたりした?
なんも考えずに英語で受け答えしてたわ。
聞いてきた人らの役に立ってたっぽいから良いけども。
「いやまあ、夏季休暇とは何かって、その話は重要じゃないんで飛ばします」
まぁ日焼けしてても、和の人間には見えねぇけどな。
俺、地毛が金髪だし。
それを黒く染めてもないんでね。
目の色もね、なんかね、緑なのか黄色なのか黄緑なのかなんなのか、いい加減はっきりしろと思う。
何色って言うのこの眼?
「つまりは夏、夏ですね。夏になったらという話なんですよ」
そもそも顔が和風でも琉球系でもねぇんですよ。
米英風? 洋風? ヨーロッパ? ヒスパニック?
なんて言うのこの顔。
この前も、地域猫関係の活動で初めて顔合わせたおばあ、ご婦人に『外国の方? クールなイケメンさんねぇ。留学生さんかしら?』とか言われちゃったからね。
会話の糸口のつもりの、悪意なんてない言葉だって、分かってるけどさ。
なんにしても、いわゆるアジアンからは遠い見た目してんだなぁって、思っちゃったからね、俺。
「夏になったら、一回、俺、地元に帰ろうかと思ってたんだけどさ」
結局つらつら考えながら喋ってたわ。
はい、もっかい切り替えよ。
「そちらさんは、その間、どうしてたいですか、という相談ですね。どうしたい?」
──どういう意味だ。
食べながら、チラリと向けられた目で聞かれて。
「……いんやぁ……」
過去回想したせいで、結構色々と鮮明に思い出せてしまったから、なんとも言えない居心地の悪さがあるな。
変な半笑いのカオになってる気がするわ。
「お前……かは、まだ不明か。俺が声かけた猫、俺の地元、つーか、近所で倒れてたし」
あんな状態になった経緯も、気になるけど。
その『あんな状態』の、ボサボサを超えて禿げるくらい毛や皮膚がヤバくなって、ガリガリの痩せぎすになる環境に居た猫が、俺の近所で倒れてたんだよ。
観光客がわんさか来る真夏で、真っ昼間で。
ガキの俺が声かける前にも、絶対、何人何十人、下手すると百人超える人間が、あの道、通ってたんだよ。
観光客も、仕事関係の人間も、地元民も、近所の人たちも。
なのに。
『──気にするな。アレが案外、口に合っただけだ』
なんも深く考えてなかったガキの、ままごとみたいな『善意』の行動で。
「あの猫、近所の海に引きずり込まれたし」
身を挺してまで『恩返し』してくれたってことは、さぁ……。
俺以外、誰も、倒れてた『ねこさん』に何もしてなかったっていう、逆説的な証明だろ。
そんで『ねこさん』、ガキの俺を助けて、代わりに連れてかれちゃったっていう。
俺が声かけるまで『ねこさん』に何もしなかった感じの周りにも、思うところ、あるけどさ。
もうね、俺、自分で自分が情けなくて不甲斐なくて、腹立たしいわ。
「嫌なこと思い出させたくない……えー……嫌な思いさせたくないんで、俺が地元に帰ってる間、ツテのあるペットホテルに泊まってもらうとかウチの施設で過ごしてもらうのは、如何でしょうか、という相談です」
俺の話を聞いてか、『特製おやつ』を食べ終えたコイツは、何かを考えるように──思い返しているように、瞳孔も目も細くし、尻尾をゆらりと振った。
「あっちも元気にしてるのは知ってるけど、俺、ちらっとでも顔出さないと、出さないとっていうか、出したい理由がありまして。とっても我が儘で利己的な俺からの相談、お願い、を、考えていただけると有り難いです」
長くて一泊、できるなら日帰りで帰るんで。
俺がそこまで言った時。
「ナァオゥ」
どこか、悪どく聴こえる声で鳴いて。
──良いではないか。こちらから、あの地へ赴くと。
そんなことを、目で語った。
雰囲気やら言葉の感じが、どうにも、「小童一人で帰る」とは違う意味に思えて首を傾げた、俺を見て。
──お礼参りというやつだろう。あの時の礼、たっぷりとくれてやる。
「セリフが悪役のそれ」
目で語ってきた内容に、思わずツッコミを入れてしまった。
ていうか。
「お前、一緒に帰るつもりがあるだけじゃなくて、なんかする気なの?」
聞いたけど、猫は俺を気にすることなく、ふすん、と鼻を鳴らす。
──小童へ手を出した上、忌々しい徴を小童へとつけたのだ。
「手を出し……いやおい待て印って何? なんの話? 初耳なんだが?」
尻尾を揺らした猫は、俺の質問に答える、どころか。
──徴も未だ、完全には消せておらん。消えぬ。だが、消し損ねたあ奴ら、こちらへ来る気配を見せるどころか、動こうともしておらん。あの地で何かをする素振りも感じぬ。おおかた、あの地で存在を癒すことに専念しているのだろう。
「ちょ、一気に喋らんで? 声出してないけど。つか、なんか新情報が続々と出てきたな? あ奴らて、あれって、一匹? 一体? じゃねーの? てか、また何かするつもりなの『あ奴ら』? あそこに居んの『あ奴ら』?」
──あの時は疲弊していたと、それは認めざるを得ん。だが今、だいぶん戻っている。小童のお守りも兼ねて、総ての因果、消し飛ばしてくれる。
「説明しろって。俺の声聞こえてる? あと話がなんか壮大になってる気がすんだけど」
言いたいことは全て言ったとばかりに、猫は調理台から降りた。
そして堂々とした歩みで、破れたTシャツがあった場所、今は、破れたTシャツとバスタオルで俺が作った、丸型のベッドがある場所へ向かう。
子猫用として売っているものをスマホで見せたりして好みを探ろうとしたけど、イマイチ分からず。
下手なものを買うより一回作ってみて反応を見るかと、試しに作り始めたベッドだけど。
作り方を調べたり、サイズを決めていったり、材料を揃えたりと準備を進めるたび。
いつの間にかすぐそばにTシャツが置かれ、元の場所に戻して。
作業を再開した俺の近くに、またいつの間にか置かれ、戻して、いつの間にか置かれ。
ぼろぼろなんだけど、と思ったが、『これも使って作れ』という『命令』を、俺が無視できるはずもなく。
破れたTシャツをベッドの素材として使えるように縫い直すという作業も追加して作ったベッド、を、
『これこそ自分に相応しいベッドだ』
みたいに使うので、はい。
嬉しい以外の感情が湧きませんね。
俺はお前の下僕だよ。
この上なく光栄に思います。
それはそれとして、今、目で語られたことについて。
「……色々、言いたいし聞きたいけど。今言うの、一個だけにしとく」
諦めと呆れの声で前置いて。
さっき思い出してたあれこれを、また思い出しながら。
「俺を助けてくれた『ねこさん』はお前だった訳だ、やっぱ」
言ったら、手作りベッドで丸くなろうとしていた猫は、丸くなろうとしたその姿勢で固まった。
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