24 / 26
第三章 闇の組織、妖精と精霊
10 半神なの?
しおりを挟む
ミーティオルにトントンされて寝てしまって、起きたらお昼近かった。
寝坊した! って慌てたけど、ミーティオルは、
『大丈夫だ、ニナ。さっきキリナが顔を出したけど、まだ時間がかかりそうだって言ってたから』
って言ってくれて。
『そうだぞ。ニナはたっぷり休むといいのだ』
サロッピスもそう言ってくれた。
なので、お言葉に甘えることにして、キリナが持ってきてくれたというジャーキー干し肉をもぐもぐしている。
「ミーティオルたちは何か食べたの?」
もぐもぐを終えてごっくんして、上を向く。
私は今、ソファに座ってるミーティオルのお腹に背中をくっつけて、膝の上で抱っこされているのだ。
「ああ。俺は同じものを食べた。カーラナンの増援が沢山持ってきてくれてるらしい」
「そうなんだ」
起きた時に浄化したけど、念のため、もう一回ミーティオルを浄化しとこ。
パァッ! てさせたら、ミーティオルは笑って、頭を撫でてくれる。
「ありがとうな、ニナ」
「ううん。だって、心配なんだもん」
言って、水袋から水をごくごくする。
「我も食べたぞ、ニナ。ここの食事以外のものを口にしたのは久しぶりだ」
ふわふわ飛んでいたサロッピスも、言いながら顔の前にスィ、と降りてきたので、妖精だけどサロッピスにもパァッ! とさせておく。
「おお、ニナの力は全く凄い。流石は神の子だ」
サロッピスが嬉しそうに、くるりと空中で一回転する。
「浄化の力もなんか違うんだ?」
ごくごくし終わって、水袋に栓をしながら聞く。
「全てが違うだろうな。ニナは格が違う。神の子だからな」
教皇の血筋すっげえ。
「ニナ、その辺の話なんだが。ニナの力の由来、つーか、ニナの親の片方が分かった」
「え?! そうなの?!」
誰なん?!
テーブルに乗ってるドライフルーツの袋へ伸ばしかけてた手を止めて、ミーティオルを見上げる。
ミーティオルは困ったような笑顔で、
「ニナ、落ち着いて聞いてくれ。ニナは本当に、神の子なんだそうだ」
……はい?
「そうなのだ。ニナの親は神なのだ。だからニナは神の子なのだ」
サロッピスぅ?
「……神様の子供って、えと、親の片方って……片方が神様、なの?」
「そうらしい」「そうなのだぞ」
マジ? 片方が神なの?
「私、半分人間じゃないの……?」
半神なの……?
「大丈夫だよ、ニナ。ニナが誰から生まれてても、ニナはニナだ」
ミーティオルは、そう言って頭を撫でてくれて。
「ニナ。怖がることではない。誇らしく思うことなのだ。神はいつもニナを見ている。見守っている。ニナを愛しているからな」
サロッピスも、胸を張って言ってくれる。
「キリナが戻ってきた時にも、それは伝えてある。キリナは色々納得したふうだったよ」
そうなん? そんな簡単に納得できるもんなの?
「キリナはな、『だからこんなにも規格外だった訳ですか。髪と瞳の色も腑に落ちました』つってた」
「髪と瞳の色?」
それが神様となんの関係が?
「ああ。カーラナンの神の姿は、オレンジの髪と水色の瞳を持つって伝えられてるらしい。神の血を継ぐ初代の教皇は、その色を受け継いで、オレンジの髪と水色の瞳を持つんだそうだ」
「そうなんだ? ……あ?!」
夢の中で会った、あの人。
『この髪色と瞳の色に、覚えは?』
オレンジ色の長い髪と、水色の瞳を持っていた。
しかも。
『子を持つ親の感覚を、久方ぶりに味わっているぞ』
そう、言ってた。
オレンジと、水色。親という言葉。
あれ、夢じゃなかったりする?
あの人が神様で、私の生みの親? だったりする?
「ニナ? どうした?」
「驚いた顔をしているな。ずっと両親ともに人間だと思っていたからか?」
「い、いや、そうじゃなくて……」
私は、覚えてる限りの夢の話を、ミーティオルとサロッピスにした。
「なんと! ニナは既に神に会っていたのだな!」
「ニナ……夢だと思う気持ちは、……まあ、分からなくないけど……」
「いや、本当に夢かもしれないけど。ていうか、あの人、神様が親だとしても、男の人なのか女の人なのか分かんない」
顔は綺麗な人だったけど。見た目も声も性別不明だったし。年齢も……何歳だろ、あれ。見た目は若く思えるけど、雰囲気がなんか、若くないような……?
人間離れしてると言えば、人間離れしてるな。
「神は神だからな。性別など関係ない」
そうなの?
「カーラナンの教えも、神は神、だとしか言ってないんだっけか。性別が関係ないなら、男親か女親かも分からないな」
「ええ……」
謎が謎を呼ぶ……。
「さっきからカーラナンの神と言っているが、神は人間の神だぞ。カーラナンの神ではない」
「そういや、そんなこと言ってたな、お前」
ふわふわ浮かぶサロッピスに、ミーティオルが顔を向ける。
「人間の神……?」
どういうこと……? カーラナンと違うん……?
「そうだぞ。人間を司る神なのだ。ニナ、話しただろう? 赤子のニナを助けるべく、神たちが声をかけてきたと。その中の一柱が人間の神であり、ニナの親なのだ」
「そうなんだ……?」
更に謎が増えた……。
そこに、ノックの音が響く。
『ミーティオルさん、サロッピスさん、キリナです。入って大丈夫ですか?』
キリナだ。でもなんか、声、ちょっと硬くない?
「ああ。ニナも起きてる。追加の情報もあるぞ」
『はい?』
ドアが開いて、キリナが入ってきた。後ろから、もう一人。……なんだ? キリナに似てるな。親戚の方?
「追加の情報って、なんですかね? こちらからも話があったんですが」
「ニナ、神と会ったことがあるらしい」
ミーティオルのその言葉に、入ってきたキリナともう一人は、驚いた顔をした。
「……先に、そちらを詳しく聞きましょうか」
キリナが、神妙な顔になる。
私は、そんなキリナと、キリナのお兄さんのキリヤだと軽く自己紹介してくれた人が対面のソファに座ってから、また、夢の話をした。
てか、キリナ、お兄さん居たんだ? 似てる訳だよ。
「銀色の草原、ということは、本当に神の世界ですね」
キリナのお兄さん、キリヤさんが軽く頷きながら言ってくる。
そうなんだ? じゃあホントに、あの人が生みの親なんだ?
キリナは神妙な顔のまま、
「ニナさんの目的地変更が確定しましたね」
「え? 変わるの?」
「変わります。ニナさんとミーティオルさん、そして同行するというサロッピスさんは、兄たちと共に、セラム・カーリナの正大神殿に向かってもらいます」
「教皇がいるっていう?」
「そうです」
キリナは頷くと、
「手紙も送りますが、一刻も早く、教皇様方にお会いしていただかないと。あなたは現在、この場所で一番権力のある人物ですからね」
そう言って、
「それと。こちらからの話ですが。兄たちが来てくれたので、僕は通常任務に戻ることになりました」
え?
「ニナさんたちの警護は、兄たちが担当することになりました。その引き継ぎの話をしに来たんですよ」
「え? え? なんでキリナは抜けるの? 一緒じゃ駄目なの?」
私の言葉に、キリナは口を開きかけたけど、キリヤさんが先に喋った。
「ニナさん。次々と混乱させてしまったようで、すみません。我々が居ますので、キリナは通常任務に戻るのが最良だと、そういう判断になりました。ニナさんたちの安全は保障します。人数が桁違いですからね」
「だとして、なんでですか? キリナも一緒なら、更に安心じゃないの?」
「ニナさん。五百年戦争の予言の話を覚えていますか?」
キリナが神妙な顔のまま、また、少し硬い声で言った。
「覚えてるけど……?」
「ならば、僕は戦力を集め、『ワーウルフ』退治の任務に戻らなければならないと、それはご理解いただけますか?」
「……」
理屈は分かる。けど、嫌だ。色々と嫌だ。
「だとしても、キリナも一緒じゃないとイヤ。五百年戦争だって、異教徒が起こすって決まった訳じゃないじゃない」
アエラキルも。アニモストレたちも。お人形さんにされてたあの子たちも。ここに囚われていた他の人たちも。
彼らが殺されるなんて、嫌だ。
そんなの、まっぴら御免だ。
「ニナさん。キリナの話はともかく、五百年戦争についての見解は、教皇様方と直接お話をしていただけたら、何か変わるかも知れません」
キリヤさんが、諭すように言ってくる。
「教皇に会うメリットは分かりました。ですけど、キリナが一緒じゃないと嫌です」
「……どうしてそんなに頑なになるんですかね……」
キリナがため息を吐いて、そんなことを言う。
なんだ? イライラしてきたぞ?
キリナの態度にイライラしてきたぞ?
「キリナもずっと、ここまで一緒に行動してたじゃん! キリナだって別行動したくなさそうだけど?!」
言ったら、キリナは目を見開いて。キリヤさんは苦笑する。
「ニナさん、「俺もニナに、半分賛成だな」
キリヤさんの言葉を遮って、ミーティオルが唸るように低い声を出した。
「キリヤ。アンタ、何か隠してるな? 裏切り者の匂いがする。そんなアンタと行動を共にしたくねぇな」
なんだと?
「ふむ。我も不可解に思う。キリヤ、お前、善良さは感じられるが、善良さしか感じられない。実に不可解だ。そのような人間は存在しない」
おお? サロッピスまでなんか、すごいこと言い出したぞ?
「何か、誤解をさせてしまいましたかね。私はいたって真面目なつもりなんですが」
キリヤさんは苦笑したまま言って、
「……皆さん。兄はとても優秀ですよ。優秀ですから、そのように見えるのかと」
硬い声と表情に戻ったキリナも、キリヤさんの肩を持つ。
ええい! ならばこうだ!
「キリヤさん! 隠し事があるなら話して! 裏切り者ならあなたと一緒には行きたくない!」
神! 父か母か知らんが神! 力を貸してくれ!
「ニナさん、隠し事など──」
苦笑していたキリヤさんが動きを止めて、変な顔をした。
「っ……俺は、教皇様から……」
キリヤさんの顔が焦ったものになって、手で、何か話し始めた口を塞ぐ。
そして、キリヤさんは驚いた顔になって、なんか、抵抗するような感じで口から手を外すと、
「俺は、教皇様から、命を、受けて、……ニナという少女を、その御前に、連れて……くるよう、手を、回していた」
またなんか、抵抗するような、苦しそうな感じになりながら、話し始めた。
寝坊した! って慌てたけど、ミーティオルは、
『大丈夫だ、ニナ。さっきキリナが顔を出したけど、まだ時間がかかりそうだって言ってたから』
って言ってくれて。
『そうだぞ。ニナはたっぷり休むといいのだ』
サロッピスもそう言ってくれた。
なので、お言葉に甘えることにして、キリナが持ってきてくれたというジャーキー干し肉をもぐもぐしている。
「ミーティオルたちは何か食べたの?」
もぐもぐを終えてごっくんして、上を向く。
私は今、ソファに座ってるミーティオルのお腹に背中をくっつけて、膝の上で抱っこされているのだ。
「ああ。俺は同じものを食べた。カーラナンの増援が沢山持ってきてくれてるらしい」
「そうなんだ」
起きた時に浄化したけど、念のため、もう一回ミーティオルを浄化しとこ。
パァッ! てさせたら、ミーティオルは笑って、頭を撫でてくれる。
「ありがとうな、ニナ」
「ううん。だって、心配なんだもん」
言って、水袋から水をごくごくする。
「我も食べたぞ、ニナ。ここの食事以外のものを口にしたのは久しぶりだ」
ふわふわ飛んでいたサロッピスも、言いながら顔の前にスィ、と降りてきたので、妖精だけどサロッピスにもパァッ! とさせておく。
「おお、ニナの力は全く凄い。流石は神の子だ」
サロッピスが嬉しそうに、くるりと空中で一回転する。
「浄化の力もなんか違うんだ?」
ごくごくし終わって、水袋に栓をしながら聞く。
「全てが違うだろうな。ニナは格が違う。神の子だからな」
教皇の血筋すっげえ。
「ニナ、その辺の話なんだが。ニナの力の由来、つーか、ニナの親の片方が分かった」
「え?! そうなの?!」
誰なん?!
テーブルに乗ってるドライフルーツの袋へ伸ばしかけてた手を止めて、ミーティオルを見上げる。
ミーティオルは困ったような笑顔で、
「ニナ、落ち着いて聞いてくれ。ニナは本当に、神の子なんだそうだ」
……はい?
「そうなのだ。ニナの親は神なのだ。だからニナは神の子なのだ」
サロッピスぅ?
「……神様の子供って、えと、親の片方って……片方が神様、なの?」
「そうらしい」「そうなのだぞ」
マジ? 片方が神なの?
「私、半分人間じゃないの……?」
半神なの……?
「大丈夫だよ、ニナ。ニナが誰から生まれてても、ニナはニナだ」
ミーティオルは、そう言って頭を撫でてくれて。
「ニナ。怖がることではない。誇らしく思うことなのだ。神はいつもニナを見ている。見守っている。ニナを愛しているからな」
サロッピスも、胸を張って言ってくれる。
「キリナが戻ってきた時にも、それは伝えてある。キリナは色々納得したふうだったよ」
そうなん? そんな簡単に納得できるもんなの?
「キリナはな、『だからこんなにも規格外だった訳ですか。髪と瞳の色も腑に落ちました』つってた」
「髪と瞳の色?」
それが神様となんの関係が?
「ああ。カーラナンの神の姿は、オレンジの髪と水色の瞳を持つって伝えられてるらしい。神の血を継ぐ初代の教皇は、その色を受け継いで、オレンジの髪と水色の瞳を持つんだそうだ」
「そうなんだ? ……あ?!」
夢の中で会った、あの人。
『この髪色と瞳の色に、覚えは?』
オレンジ色の長い髪と、水色の瞳を持っていた。
しかも。
『子を持つ親の感覚を、久方ぶりに味わっているぞ』
そう、言ってた。
オレンジと、水色。親という言葉。
あれ、夢じゃなかったりする?
あの人が神様で、私の生みの親? だったりする?
「ニナ? どうした?」
「驚いた顔をしているな。ずっと両親ともに人間だと思っていたからか?」
「い、いや、そうじゃなくて……」
私は、覚えてる限りの夢の話を、ミーティオルとサロッピスにした。
「なんと! ニナは既に神に会っていたのだな!」
「ニナ……夢だと思う気持ちは、……まあ、分からなくないけど……」
「いや、本当に夢かもしれないけど。ていうか、あの人、神様が親だとしても、男の人なのか女の人なのか分かんない」
顔は綺麗な人だったけど。見た目も声も性別不明だったし。年齢も……何歳だろ、あれ。見た目は若く思えるけど、雰囲気がなんか、若くないような……?
人間離れしてると言えば、人間離れしてるな。
「神は神だからな。性別など関係ない」
そうなの?
「カーラナンの教えも、神は神、だとしか言ってないんだっけか。性別が関係ないなら、男親か女親かも分からないな」
「ええ……」
謎が謎を呼ぶ……。
「さっきからカーラナンの神と言っているが、神は人間の神だぞ。カーラナンの神ではない」
「そういや、そんなこと言ってたな、お前」
ふわふわ浮かぶサロッピスに、ミーティオルが顔を向ける。
「人間の神……?」
どういうこと……? カーラナンと違うん……?
「そうだぞ。人間を司る神なのだ。ニナ、話しただろう? 赤子のニナを助けるべく、神たちが声をかけてきたと。その中の一柱が人間の神であり、ニナの親なのだ」
「そうなんだ……?」
更に謎が増えた……。
そこに、ノックの音が響く。
『ミーティオルさん、サロッピスさん、キリナです。入って大丈夫ですか?』
キリナだ。でもなんか、声、ちょっと硬くない?
「ああ。ニナも起きてる。追加の情報もあるぞ」
『はい?』
ドアが開いて、キリナが入ってきた。後ろから、もう一人。……なんだ? キリナに似てるな。親戚の方?
「追加の情報って、なんですかね? こちらからも話があったんですが」
「ニナ、神と会ったことがあるらしい」
ミーティオルのその言葉に、入ってきたキリナともう一人は、驚いた顔をした。
「……先に、そちらを詳しく聞きましょうか」
キリナが、神妙な顔になる。
私は、そんなキリナと、キリナのお兄さんのキリヤだと軽く自己紹介してくれた人が対面のソファに座ってから、また、夢の話をした。
てか、キリナ、お兄さん居たんだ? 似てる訳だよ。
「銀色の草原、ということは、本当に神の世界ですね」
キリナのお兄さん、キリヤさんが軽く頷きながら言ってくる。
そうなんだ? じゃあホントに、あの人が生みの親なんだ?
キリナは神妙な顔のまま、
「ニナさんの目的地変更が確定しましたね」
「え? 変わるの?」
「変わります。ニナさんとミーティオルさん、そして同行するというサロッピスさんは、兄たちと共に、セラム・カーリナの正大神殿に向かってもらいます」
「教皇がいるっていう?」
「そうです」
キリナは頷くと、
「手紙も送りますが、一刻も早く、教皇様方にお会いしていただかないと。あなたは現在、この場所で一番権力のある人物ですからね」
そう言って、
「それと。こちらからの話ですが。兄たちが来てくれたので、僕は通常任務に戻ることになりました」
え?
「ニナさんたちの警護は、兄たちが担当することになりました。その引き継ぎの話をしに来たんですよ」
「え? え? なんでキリナは抜けるの? 一緒じゃ駄目なの?」
私の言葉に、キリナは口を開きかけたけど、キリヤさんが先に喋った。
「ニナさん。次々と混乱させてしまったようで、すみません。我々が居ますので、キリナは通常任務に戻るのが最良だと、そういう判断になりました。ニナさんたちの安全は保障します。人数が桁違いですからね」
「だとして、なんでですか? キリナも一緒なら、更に安心じゃないの?」
「ニナさん。五百年戦争の予言の話を覚えていますか?」
キリナが神妙な顔のまま、また、少し硬い声で言った。
「覚えてるけど……?」
「ならば、僕は戦力を集め、『ワーウルフ』退治の任務に戻らなければならないと、それはご理解いただけますか?」
「……」
理屈は分かる。けど、嫌だ。色々と嫌だ。
「だとしても、キリナも一緒じゃないとイヤ。五百年戦争だって、異教徒が起こすって決まった訳じゃないじゃない」
アエラキルも。アニモストレたちも。お人形さんにされてたあの子たちも。ここに囚われていた他の人たちも。
彼らが殺されるなんて、嫌だ。
そんなの、まっぴら御免だ。
「ニナさん。キリナの話はともかく、五百年戦争についての見解は、教皇様方と直接お話をしていただけたら、何か変わるかも知れません」
キリヤさんが、諭すように言ってくる。
「教皇に会うメリットは分かりました。ですけど、キリナが一緒じゃないと嫌です」
「……どうしてそんなに頑なになるんですかね……」
キリナがため息を吐いて、そんなことを言う。
なんだ? イライラしてきたぞ?
キリナの態度にイライラしてきたぞ?
「キリナもずっと、ここまで一緒に行動してたじゃん! キリナだって別行動したくなさそうだけど?!」
言ったら、キリナは目を見開いて。キリヤさんは苦笑する。
「ニナさん、「俺もニナに、半分賛成だな」
キリヤさんの言葉を遮って、ミーティオルが唸るように低い声を出した。
「キリヤ。アンタ、何か隠してるな? 裏切り者の匂いがする。そんなアンタと行動を共にしたくねぇな」
なんだと?
「ふむ。我も不可解に思う。キリヤ、お前、善良さは感じられるが、善良さしか感じられない。実に不可解だ。そのような人間は存在しない」
おお? サロッピスまでなんか、すごいこと言い出したぞ?
「何か、誤解をさせてしまいましたかね。私はいたって真面目なつもりなんですが」
キリヤさんは苦笑したまま言って、
「……皆さん。兄はとても優秀ですよ。優秀ですから、そのように見えるのかと」
硬い声と表情に戻ったキリナも、キリヤさんの肩を持つ。
ええい! ならばこうだ!
「キリヤさん! 隠し事があるなら話して! 裏切り者ならあなたと一緒には行きたくない!」
神! 父か母か知らんが神! 力を貸してくれ!
「ニナさん、隠し事など──」
苦笑していたキリヤさんが動きを止めて、変な顔をした。
「っ……俺は、教皇様から……」
キリヤさんの顔が焦ったものになって、手で、何か話し始めた口を塞ぐ。
そして、キリヤさんは驚いた顔になって、なんか、抵抗するような感じで口から手を外すと、
「俺は、教皇様から、命を、受けて、……ニナという少女を、その御前に、連れて……くるよう、手を、回していた」
またなんか、抵抗するような、苦しそうな感じになりながら、話し始めた。
0
あなたにおすすめの小説
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
もう我慢しなくて良いですか? 【連載中】
青緑 ネトロア
恋愛
女神に今代の聖女として選定されたメリシャは二体の神獣を授かる。
親代わりの枢機卿と王都を散策中、初対面の王子によって婚約者に選ばれてしまう。法衣貴族の義娘として学園に通う中、王子と会う事も関わる事もなく、表向き平穏に暮らしていた。
辺境で起きた魔物被害を食い止めたメリシャは人々に聖女として認識されていく。辺境から帰還した後。多くの王侯貴族が参列する夜会で王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。長い間、我儘な王子に我慢してきた聖女は何を告げるのか。
———————————
本作品の更新は十日前後で投稿を予定しております。
更新予定の時刻は投稿日の17時に固定とさせていただきます。
誤字・脱字をコメントで教えてくださると、幸いです。
読みにくい箇所は、何話の修正か記載を同時にお願い致しますm(_ _)m
…(2025/03/15)…
※第一部が完結後、一段落しましたら第二部を検討しています。
※第二部は構想段階ですが、後日談のような第一部より短めになる予定です。
※40話にて、近況報告あり。
※52話より、次回話の更新日をお知らせいたします。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです
籠の中のうさぎ
恋愛
日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。
「はー、何もかも投げだしたぁい……」
直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。
十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。
王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。
聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。
そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。
「では、私の愛人はいかがでしょう」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる